トップ > 第9回 - Heba El Hadidi
氏名: Heba El-Hadidi 国籍: エジプト
所属大学院・研究所 国際情報通信研究センター
本国での所属機関 マンソウラ大学ダミエッタ・キャンパス理学部、数学・コンピュータ・サイエンス科
早稲田での滞在期間 2006年4月~2008年6月まで

研究テーマ
情報検索とナビゲーション補助のための知的エージェント・システム

はじめに
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           ナイル川
私はナイル川が地中海に注ぐ場所、エジプト北部にある小都市ダミエッタの出身です。ダミエッタ市民のほとんどが家具産業で勤勉に働いているため、現地ではエジプトの「日本」として有名なところです。私は1991年にマンソウラ大学理学部に入学、コンピュータ・サイエンスを専攻し、1995年に理学士号(優等賞受賞)、2001年にニューラル・ネットワークと遺伝的アルゴリズムで理学修士号を取得しました。しかし開発途上国であるエジプトでは研究施設も科学的な資源も限られているために、母校で論文を仕上げることは困難でした。ところが幸運にも、私は論文を仕上げるために早稲田大学で訪問研究員として2年間研究する機会を手にすることができたのです。小さな地方都市出身である私は、日本での滞在場所として本庄市を選びました。そこには英語を話す人はあまり見うけませんが、みな親切で、故郷と本庄市の類似点を感じています。

折しもエジプトと日本が2008年を「科学技術協力の年」と定めたので、私にとって好機となりました。その活動の第一歩として、エジプトと日本の科学者およびそれぞれの教育・技術施設を結ぶネットワークが構築されます。そして2カ国の間で科学会議やワークショップが開かれ、共同研究プロジェクトでスタッフの交流も行われます。さらに共同でアレクサンドリアに日本の科学技術系大学が設立される予定です。この日本・エジプト科学技術大学は、学部生と大学院生に情報通信技術、新素材コース、再生可能エネルギー技術など科学技術のカリキュラムを設置し、アフリカ、アラブ地域における科学技術の革新を促進することになるでしょう。そうした科学協力の一環として、エジプト・日本国際シンポジウム「科学技術2008年」が、6月8日から10日まで東京の早稲田大学で開かれる予定です。

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    ダミエッダの海岸線を歩く
初めて故郷を離れて
こうして私は博士論文を完成させるため、エジプトの研究・高等教育省から2年間の奨学金を得ました。その2年間の終了後は母校に帰り、日本で学んで来たことを教えるために母校で講師を3年間勤めることになります。
奨学金を取得した後のステップとしては、自分が研究活動を行いたい国を選ぶことでした。私は日本を第一希望国として選びました。世界の遠い場所を訪ねてみるのが昔からの夢だったのです。極東地域、特に日出ずる国、日本はエジプトからはるか遠くにある場所ですが、第二次世界大戦でほぼ完全に破壊された日本が、その後数十年の間にどのように世界最先進国のひとつとなったか、を知りたいと不思議に思ったことも理由の一つでしょう。
奨学金を手に、初めてエジプトの我が家を離れ、いよいよ日本に行くことになりました。私と家族が日本に到着したのは2006年4月のことです。ちょうど日本の一年で特別な季節、桜の時期でした。日本とエジプトの気候はまったく違うのですが、生まれて初めて雪を目にしたのもその頃でした。私も家族もとても親切にしていただき、研究生活だけでなく、人間関係や文化的な経験も豊かなものになりました。日本の日常生活や食べ物、学校生活についても多くのことを学びました。ふたりの息子もそれぞれ本庄市の小学校と幼稚園に通っています。そこで子供たちが先生や同級生たちとあっという間にコミュニケーションが取れている様子をみて大変驚いたものです。

「検索エンジンで行う科学論文のサーチは、知的エージェント技術の利用で改善されるか?」   
ウェブ上の情報はすぐに入手できるものの、圧倒的な量で急増しているために、エージェントを使っての情報検索(IR)システムが大きな注目を浴びています。ウェブ・ユーザーが適切な情報を検索するためには、ユーザーの要求を支援する効率的なIRシステムを構築する必要があります。私の研究では、検索のプロセスを円滑にするためのマルチエージェントIRシステム・アーキテクチャを提案しています。科学論文用検索エ―ジェント・システムは、ユーザーからの問い合わせをもう一度確認し、必要な情報を効率的に届けるために計画されたものです。この研究の主な目標は、知的エージェントを使ってユーザーからの質問を自動的に明確にし直すことで、研究者が情報を検索、入手する方法にどのような影響がもたらされるか、という問いに答えることです。

早稲田大学での研究生活
早稲田大学では松本充司教授の懇切なご指導の下で研究を行っています。研究室は留学生で活発的な雰囲気です。他の文化圏から来た留学生と交流できるのは恵まれた機会ですが、その一方、コミュニケーションは英語だけで行われるという点もあります。訪問研究員として早稲田に来る前から、日本で研究したことのあるエジプト人の同僚たちから早稲田大学は日本で一流の私立高等教育機関のひとつであると聞いていました。
早稲田での研究活動は私自身の研究を深めることに大変役立っています。多くの友人にも恵まれ、私のつたない日本語も彼らに助けてもらっています。また、早稲田大学で開催された科学技術会議等へ出席できたことも非常に有意義な経験となっています。


松本研究室のメンバーと(左:本庄市で研究をはじめて間もない頃、右:桐生サマーセミナにて)

学会論文
・Heba EL-Hadidi, A. M. Riad, and Mitsuji Matsumoto, “A Multi-agent System to Enhance Information Retrieval Results”, IEICE 2007, 10-14 September 2007, BS-10-16
最終更新日 2008.2.12
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