Waseda Institute of Medical Anthropology

新聞NEWSでの研究紹介 NEWSPaper article

これまでの『災害復興医療人類学研究所』調査研究成果の紹介

福島からの避難者 6割がPTSDか 早大チーム調査

読売新聞 2014年05月11日 10:24配信

 東京電力福島第一原発事故で福島県から東京都、埼玉県に避難する住民の約6割に心的外傷後ストレス障害(PTSD※)の疑いがあることが、早稲田大学の辻内琢也准教授(医療人類学)の研究チームなどの調査でわかった。

 調査は、医師らからなる同研究チームが東京災害支援ネット、震災支援ネットワーク埼玉と共同で実施。3~4月に2都県の避難世帯の3599世帯を対象に「イライラしているか」「眠れるか」など22項目について質問し、600世帯(16・7%)から回答を回収した。

 その結果、有効回答を得られた522人の57・7%に当たる301人について「きわめて高い精神的ストレス状況にある」と判断された。

 2012年は67・3%、13年は59・6%で、若干減ってきているが、辻内准教授は「避難者は長引く避難生活で精神的に追い込まれている。避難者の声を丁寧に聞き、社会全体で支援していくべきだ」と話している。
 
※PTSD=Post―Traumatic Stress Disorder


東日本大震災:埼玉と東京への福島の避難者、6割がPTSDか 背景に生活苦や孤立感 市民団体が調査 /埼玉

毎日新聞 2014年05月10日 地方版

◆生活支援を呼びかける 
 東日本大震災後に福島県から埼玉県と東京都に避難した人の約6割が、3年が経過した現在もPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えている可能性があることが市民団体などの調査で分かった。2年前の調査では約7割だったが、生活苦などさまざまな背景から回復が思うように進んでいないとみられる。一方、親しく付き合う人が減って孤独感を強めている様子もうかがえ、市民団体は生活支援を呼び掛けている。【西田真季子】

 2012年から調査を継続している「震災支援ネットワーク埼玉(SSN)」などが、今年3〜4月にアンケートを実施。3599世帯に郵送し、600世帯から回答を得た。

 「(震災の)場面がいきなり頭に浮かんでくる」など、22の症状について国際基準に基づき分析したところ、有効回答のあった522人中301人(57・7%)は「PTSDの可能性がある」と判定され、12年調査の67・3%から約10ポイントの減少にとどまった。自由記述でも「夫婦共にうつ。一家心中を考えている」など深刻な回答が相次いだ。

 分析した早稲田大学人間科学学術院の辻内啄也准教授は、PTSDから脱せない理由について「生活費不足や原発事故の賠償問題、近隣関係の希薄化など複数の要因が重なっている」と指摘する。

 現在の経済状況について「とても困っている」「少し困っている」と回答した人は計62%。無職は56・3%に達した。「震災前に無職だった」と回答した人は23・4%に過ぎず、失業に伴う深刻な生活苦がうかがえる。

 一方、「日用品の貸し借りをする親しい人が1人もいない」と回答した人が59%に上るなど、人間関係の希薄化が顕著になっている。辻内准教授は「震災前の福島は他地域に比べむしろずっと豊かな人間関係があった。そのギャップがより孤立感を深めている」と話した。

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 ◆震災前後での近所付き合いの変化◆

                     震災前   今年

日用品を貸し借りできる親しい人がいない  16.3% 59.0%

立ち話程度の付き合いの人がいない      8.3% 34.3%

あいさつ程度の最小限の付き合いの人もいない 3.5% 16.2%

 ◆震災前後での職業の変化◆

    震災前   今年

無職  23.4% 56.3%

自営業 15.8%  2.8%

正社員 25.0%  9.3%


経済的困窮6割以上 東京・埼玉への避難者

福島民報 2014年05月10日 12:41配信

■PTSD可能性半数超
 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で本県から東京都や埼玉県に避難している世帯のうち、6割以上の世帯で経済的に困っていることが、支援団体などのアンケートの速報値で分かった。アンケートを分析した早稲田大人間科学学術院の辻内琢也准教授は半数を超える住民に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性があるとし、「生活への不安などが精神的ストレスの原因になっている」と指摘した。

■早稲田大の辻内准教授 生活不安が原因
 調査は東京災害支援ネットと震災支援ネットワーク埼玉が昨年に続き、県や市町村、早大の協力を受け3月から実施している。現在の経済状況について「とても困っている」と回答した世帯は15・2%で、昨年に比べ4・2ポイント減ったが、「少し困っている」は46・8%で2・1ポイント増えた。公共料金を支払えない世帯も8・3%あった。
 アンケートを基に心とストレスの状態について分析した早大によると、57・7%の住民がPTSDの可能性のある高いストレス状況にあるという。さらに、「生活費の心配」「賠償問題の心配」「仕事の喪失」「近隣関係の希薄化」などが、精神的ストレスに大きな影響を与えているとした。
 9日に都内で記者会見を開き、分析結果を発表した辻内准教授は「支援が進まず、避難者が依然として深刻な精神的苦痛を抱えていることは明らかだ。避難者一人一人の声を拾い上げる仕組みづくりが必要だ」と訴えた。
 調査は本県から東京都や埼玉県に避難中の3599世帯を対象に実施し、8日までに761世帯から回答があった。速報値は、東京都と埼玉県の計600世帯のデータをまとめた。
福島民報社


「賠償の心配」PTSDリスク3.74倍 首都圏避難・住民調査

福島民友ニュース 2014年05月10日

 
 東京電力福島第1原発事故で本県から首都圏に避難した住民を対象に支援団体が実施したアンケートで、「賠償問題の心配」を抱える避難者は、その心配がない避難者に比べ心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる可能性が3.74倍高いことが9日、分かった。また、全回答者の57.7%にPTSDの可能性があり、調査を開始した2012(平成24)年の67.3%、13年の59.6%と「大きな開きがなかった」(支援団体)ことから、事故後3年が経過した今も避難者が大きなストレスを抱えている実態があらためて浮き彫りとなった。
 賠償問題の心配以外では、「生活費が心配」と「近隣関係が希薄化した」という避難者は、それがない避難者に比べPTSDになる可能性が2.27倍高かった。
 調査は3年目で、今回は12年のデータを詳細分析した結果も公表。同団体と同大は精神的苦痛に影響を与える社会的要因は六つあると分析、現在解析中の13年データでは、加えて仮設住宅や借り上げ住宅の入居期間が不透明など「住宅環境の問題」も要因の一つになると指摘する。心身の持病が精神的苦痛に強く表れやすいことは先行研究ですでに分かっており、それ以外の四つの要因が重なった場合は相乗されて33倍のリスクになるという。
 アンケートは埼玉県の弁護士などでつくるSSNが避難区域指定を受けた12市町村から東京都と埼玉県への避難者を対象に実施、早大が解析し公表した。今回の調査は3~4月、3599世帯を対象に14項目を調査、回収した600世帯の回答を速報値としてまとめた。


福島からの避難者、PTSD半数超か 首都圏の住民

日本経済新聞 2014年05月10日 13:12配信

 東日本大震災がきっかけで福島県から首都圏に避難した住民を対象に支援団体がアンケートを実施、回答者の57.7%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性があるとする結果を、10日までに明らかにした。
 「震災支援ネットワーク埼玉」などが3~4月、震災や東京電力福島第1原発事故で東京都と埼玉県に避難している3599世帯を対象に14項目を調査。回収した600世帯の代表者の回答を速報値にまとめた。今回で3回目。
 「震災に関し最近の1週間でどの程度悩んだか」を22問にわたって質問し、ストレスの度合いを5段階で回答してもらった結果、過半数でPTSDの可能性があった。
 経済面では「生活費が心配」「震災をきっかけに失業」など不安を訴える回答が半数を超えた。近所付き合いの頻度も震災後に大幅に減少しており、支援団体は「豊かな人間関係の中で生活していた環境からのギャップが大きい」と分析。「震災から3年を超えても依然としてストレス状況が高く、細かい対応が必要」としている。


福島から都心への避難者、震災3年もPTSD疑い、なお6割 早大など調査

産経新聞 2014年05月09日 23:01配信

  東日本大震災と福島第1原発事故で、福島県から都心に避難する住民の約6割が、現在も心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いがあるとする分析結果を9日、早稲田大の辻内琢也准教授(医療人類学)らが発表した。震災から3年が経過するがなお高い水準といい、辻内氏は「心のケアだけでなく、生活の問題などストレス要因を早期に取り払う必要がある」としている。
 調査は今年3~4月、震災支援ネットワーク埼玉と共同で実施。福島から東京都、埼玉県内に避難する3599世帯にアンケートを行い、心的ストレスに関する設問には522人が回答した。
 「寝つきが悪い」「物事に集中できない」など計22項目の症状について、最近1週間の発生頻度を聞き、これを点数化。最多88点で、25点以上になると「PTSDの疑い」と推定されるが、今回の調査では平均31・07点で、25点以上は301人(57・7%)に及んだ。
 調査は今年で3年目。平成24年調査では67・3%、25年は59・6%の人がPTSDの恐れと推定されており、辻内氏は「徐々に減ってはいるが、被災者は依然として高い精神的ストレス状況にある」と分析。生活費の心配がある人は、ない人に比べてPTSDとなるリスクが2・27倍に及ぶ-などの傾向も3年間の調査で判明したといい、辻内氏は「社会的要因が長期化を招いている恐れがある」と述べた。


原発避難者の6割、PTSDの可能性 早大など調査

朝日新聞 2014年05月09日 22:58配信

  東日本大震災で福島県から東京都と埼玉県に避難した人の約6割に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性があることが、早稲田大学の辻内琢也准教授(医療人類学)らの研究グループと、弁護士や臨床心理士でつくる震災支援ネットワーク埼玉(さいたま市)の調査で分かった。
 調査対象は震災後に埼玉県と東京都に避難した約3600世帯。今年3月以降、福島県などの協力で質問用紙を送り、世帯ごとに18歳以上の1人に答えてもらった。4月2日までに600人が回答し、避難指示区域からの避難者が約8割を占めた。
 質問にはPTSDの診断指標として世界的に普及する「改訂出来事インパクト尺度」の22項目が含まれ、有効回答の522人を分析した結果、57・7%が「PTSDの可能性がある」に分類された。震災翌年の2012年は67・3%、13年は59・6%だった。辻内准教授は「避難者の心の傷は3年間ほぼ変わっていない」と指摘している。


過半数がPTSDの可能性 避難中の福島県民

共同通信 2014年05月09日 19:36配信

東日本大震災がきっかけで福島県から首都圏に避難した住民を対象に支援団体がアンケートを実施、回答者の57・7%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性があるとする結果を9日、公表した。

 「震災支援ネットワーク埼玉」などが3~4月、震災や福島原発事故で東京都と埼玉県に避難中の3599世帯を対象に調査、回収した600世帯の代表者の回答を速報値にまとめた。今回で3回目。

 「震災に関し最近の1週間でどの程度悩んだか」を22問にわたり質問。ストレスの度合いを5段階で回答してもらった結果、過半数でPTSDの可能性があった。経済面でも不安を訴える回答が半数を超えた。





原発事故避難 57%にPTSDのおそれ

NHKニュース 2014年05月09日 20:44配信



 原発事故の影響で福島県から東京都と埼玉県に避難している人たちを対象に行ったアンケート調査の結果、PTSD=心的外傷後ストレス障害のおそれがある人が去年の調査とほぼ同じ57%に上ることが、支援団体と大学による合同調査で分かりました。
震災の被災者支援団体、「震災支援ネットワーク埼玉」と早稲田大学はことし3月から4月にかけて、東京電力福島第一原子力発電所の周辺の12市町村から東京都と埼玉県に避難している被災者3600世帯を対象にアンケート調査を行い、600世帯から回答を得ました。
それによりますと、原発事故を繰り返し思い出したり睡眠障害が出たりするなどPTSDのおそれがある人が全体の57.7%に上り、去年の調査の59.6%と比べほぼ横ばいで、依然として高いストレス状態にある人が多いことが分かりました。
専門家は原因として、人間関係が避難生活のなかで失われ喪失感や孤独感を感じたり、仕事をなくし経済的に苦しいだけでなく生きがいや意欲を失ったりする例が多いと指摘しています。
心療内科の医師で早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也准教授は、「被災者のなかでも自立できた人と孤立してしまう人で二極化し、なかには病院に行くことすらできない人もいるので、そうした人の声を聞き取り支援につなげる復興支援員のような人を増やす必要があるのではないか」と話しています。



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