失われた公演

『記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ』

井上麻矢(こまつ座)

『記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ』

コロナ禍に於いて、イギリスの歴史学者・エドワード・トムソンと井上ひさしの合作でもあるこの言葉を私たちこまつ座は一つのスローガンとして掲げて参りました。

特に冒頭に「記憶せよ」と書き添えた井上ひさしの思いをどのように解釈していけばいいのか、今起きているこの演劇界への大きな試練を、きちんと記憶しようという思いがとても強かったと思います。都合よく解釈し、この現実から逃げようとすれば、事実はいつの間にか語られなくなってしまいます。

その道を選ばず、コロナ禍で起こりうる波を大きく受ける覚悟をしたのは、次世代へきちんと引き継ぐために他なりません。そして演劇人として今回体験した記憶をどうやって消化して、より普遍的にアウトプットしていくのか……。これからの私たちの仕事はきっとそういった感情を演劇という形で伝えていくことだと考えています。

新たに演劇に課せられた任は重くなったと考えています。コロナ禍の後に残るものは、それまで作品を全力で作り続けていた『信頼』だと思っています。

2020年10月26日

こまつ座
http://www.komatsuza.co.jp/

戻る