失われた公演

KYOTO STEAM―世界文化交流祭―2020 古典文学×伝統芸能×新技術
『新猿楽記~cirque de kyoto~』

公演団体

KYOTO STEAM―世界文化交流祭―実行委員会事務局

構成・演出

高橋 浩

アートディレクション

緒方辰之助

公演日程

2020年3月29日(日)

会場

ロームシアター京都 メインホール

コメント

2020年2月20日~26日に渡り、構成・演出の高橋 浩は、出演者へのパフォーマンスの説明と確認、表現内容の精査、滞在日程および制作内容の確認、照明家へのアートワークの説明およびプラン概要の確認を目的としたフランス取材を敢行しました。昨年のワークショップから参加し、本作品にも継続して参加する予定のエリック・ド・サリア、ナンシー・ルサック及び、照明家のパスカル・ラージリと面会し、昨年のワークショップから培ってきた本作品の最終的な構成を伝え、意見交換を行いました。この渡仏により、役作りや演技に関する様々なディスカッションが重ねられ、クリエーションの方向性が確認されたことで、日仏コラボレーションによる表現の広がりに大きな期待が持てる有意義な成果が得られました。

帰国後、新型コロナウイルス感染症の拡大が予断を許さない状況となり、公演の可否や、フランスからの出演者、スタッフの来日の是非についての検討が重ねられましたが、3月13日、KYOTO STEAM―世界文化交流祭―実行委員会による公演中止の判断を受け、映像作品として制作するという方針転換を行い、公演台本および演出プランの大幅な変更を行いました。キャスティングに関しては、小笠原弘晃が演じる予定だった延命冠者・もどきを青山 郁彦に、藤原明衡に俳優の元木 行哉を、エリック・ド・サリアが演じる予定だった傀儡師の頭領に、パフォーマンス集団・to R mansionの野崎夏世を、ナンシー・ルサックが演じる予定だった傀儡巫女にダンサーのうえだななこを、それぞれ代役として起用しました。また、照明家パスカル・ラージリの日本におけるクリエーションパートナーとして親交の深い阿部康子が照明デザイナーとして参加しました。稽古の第1弾は3月19日~23日にかけて、昨年ワークインプログレスでもご協力いただいた京都府神社庁で実施。小笠原匡、吉本由美、うえだななこ、青山郁彦、黒谷都、元木行哉、野崎夏世と、音楽の三原智行、稲葉明憲の参加によって2章8節で構成されるチャプターごとのクリエーションが行われました。稽古の第2弾は24日~25日に、稽古場を京都市北文化会館に移して実施し、クロワッサンサーカス、ジャグラーの目黒 陽介、Hachiro、新猿楽BANDが合流し、パフォーマンス全体の流れを確認しました。本番撮影会場となったロームシアター京都メインホールには26日に小屋入りし、美術セット、各種機材等の搬入・設置・調整を行い、翌27日には特別出演の山本 恭司が合流してゲネプロを行いました。また、本番出演を断念した上賀茂やすらい踊り保存会から、「やすらい祭り」で使用され、中に入ればその年は無病息災で過ごせるとされる貴重な花笠をご提供いただき、舞台美術として活用させていただきました。本番撮影は28日、29日の両日にかけて行われ、2章8節からなる「新猿楽記~cirque de kyoto~」のパフォーマンスが完成しました。

舞台作品として企画されたものをわずか数日で映像作品にするための改変を実行した高橋 浩はじめ出演者、制作スタッフにかかる負荷は多大なものがありましたが、創作活動を止めてはならないという、文化の作り手たるクリエイターたちの強い意志と、本作品に関わった文化の担い手たる全ての関係者の意思が一つになって、まさに『新猿楽記』に示された、京都における文化創成のプロセスをなぞるかのように、足掛け3か年に亘るプログラムの集大成がここに結実しました。

緒方辰之介(「新猿楽記~cirque de kyoto~」制作プランナー)/2020年3月
※KYOTO STEAM―世界文化交流祭―2020報告書より抜粋

関連リンク

https://kyoto-steam.com/

資料提供

KYOTO STEAM―世界文化交流祭―実行委員会事務局

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