2011年12月14日開催ワークショップ 

台湾政党システム研究の現状と課題

シリーズ講演「台湾政治外交研究の課題」第三回講演

報告者: 岸川 毅(上智大学

  

 政党体系とは政党を単位とした、その繰り返しと相互作用を指す。サルトーリは選挙を経て形成される議席配分のパターンを、大きく分けて競合的政党体系と非競合的政党体系に分けられる7つの分類に類型化した。台湾の場合、権威主義体制期においては非競合的体系、民主化以後から競合的体系に変化したと言える。しかしサルトーリの類型化は、非競合的政治体系に分類される一党体系とヘゲモニー政党体系を分ける「まがいものの政党」「二級の政党」の定義が曖昧であるなど、問題点も存在する。

 以上のようなサルトーリの分析を踏まえ、権威主義体制期の台湾における政党体系に注目してみると、それは国民党と、党外人士あるいは準政党としての党外勢力からなる準ヘゲモニー政党体系であると見なすことができる。

 またこの政党システムが作動する範囲に注目すると、現状を全中国を範囲とした国政選挙が停止している状態と見るのであれば「凍結したヘゲモニー政党体系」とみなすことができるであろうし部分的国会改選から台湾を範囲とするシステムが始動したと考えるのであれば「準ヘゲモニー政党体系」とみなすことができるであろう。また、そのどちらでもなく、台湾を範囲として政党システムの作動範囲について再解釈する場合、台湾省議会が成立する54年から86年までは「()ヘゲモニー政党体系」とみなすことができるであろう。

 以上の三つの解釈いずれをとるにしても、台湾ではヘゲモニー政党システムが成立していたとみるわけだが、それはいかにして成立したのか。それは、国民党の側や台湾の民衆の側それぞれに議会制民主主義の経験があったという歴史的経緯から、台湾に一党体系を敷くことが難しかったのではないかと考えられる。

 民主化以後の台湾はひとまず競争的政党体系への移行期と位置付けることができるが、政党数・政党配置が何度も変化しており、持続性を欠いているため、サルトーリのいう政党システムにあてはめて類型化することができるかどうかは疑問が残る。現状では、これらの変動の理由を、政党内派閥争いや、アイデンティティ・ポリティクス、あるは選挙制度の効果などに求める議論がなされている。


 現在の台湾の政党システムの研究動向としては、権威主義体制期については歴史資料が充実しており、再解釈の余地がある。また民主主義体制期の研究は高水準のものが多いが、未整理の観がある。

 参加者との質疑では、大統領制を採用した国へのサルトーリの議論の適応の限界が指摘された。民主化期の政党システム形成と変動の要因として、以下のような議論がなされた。台湾の民主化は、階級分断の政治化は国民党の政策や経済発展によって抑制された一方、エスニックな亀裂が政治化する結果となった。また現在の格差拡大は、政党によって解決されず、問題が社会運動に回収されている側面が指摘された。次に理論的な観点からの疑問として、二大ブロック化の状況下で中間層を獲得しようとする第三勢力が登場しないのはなぜか、という問題が提起された。また現在の選挙アジェンダの観点から、民進党は中下流、国民党は公務員や中流以上の支持を集める、階層ポリティクス化の傾向があることが指摘された。