| 早稲田大学大学院商学研究科IT戦略コース(社会人大学院) 2004年度修士論文概要 |
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-メディアの補完性と商品知覚リスクに着目した研究- 頼定誠 [概要]
「物を売るなら、商品のディスプレイ方法やプレゼンテーションが重要」というのは昔からの通説。しかし、インターネット接続型携帯電話の急速な普及によりモバイルコマース市場が急拡大している。 本研究の目的は、モバイルコマースの消費者心理の特徴を、モルタル購買やPCコマースと比較して明らかにすることである。購入商品の特徴や消費者の心理特性が、商品知覚リスクにどのような影響を与えるのかについて分析を行う。 具体的には(1)商品の特徴や消費者の特性が、モバイルコマースにおける商品知覚リスクとどう関係するのか(2)上記の関係に、補完メディアがどう影響しているのかについて分析を行う。 本研究は、モバイルコマースの消費者心理の特徴を、モルタル購買やPCコマースと比較して明らかにするため、消費者心理と購買行動に関係する仮説を構築した。 その仮説を以下に示す。 仮説1 :商品関与度が高いとモバイルコマースに対する自信度も高い 仮説2 :商品関与度が高いとモバイルコマースにおける商品知覚リスクも高い 仮説3 :情報収集指向度が高い消費者は低い消費者に比べて自信度が高い 仮説4 :情報収集指向度が高い消費者はモバイルコマースにおける商品知覚 リスクが低い 仮説5 :注文端末としてのみモバイルを利用している消費者は自信度が低い 仮説6 :注文端末としてのみモバイルを利用している消費者は知覚リスクが低い 仮説7 :PCコマース経験者はモバイルコマースに対する自信度が高い 仮説8 :PCコマース経験者は未経験者に比べて知覚リスクが低い 仮説9 :モバイルコマースの経験度が高いと自信度が高い 仮説10:モバイルコマースの経験度が高いほど、モバイルコマースにおける商品 知覚リスクが低い 仮説11:モバイルコマースに自信をもっている消費者はモバイルコマースにおける 商品知覚リスクが低い
そして、仮説を検証するために、モバイルコマース経験者に対し、アンケート調査を行った。そのアンケートでは以下の5つの商品(3つの商品グループ)に着目し調査を行った。
■グループ1:「衣料品」、「化粧品」 ■グループ2:「アクセサリー」、「香水」 ■グループ3:「食品」
その結果、消費者特性と商品別特徴が消費者の購買態度(自信度と商品知覚リスク)にどう影響を与えるのかが、グループ別に明らかになった。本研究の結論は以下のようにまとめられる。 第1に、3グループ全てにおいて、商品関与度が高いとモバイルコマースに対する自信度が高くなることが確認された。これは商品関与度が高いと、消費者の学習に影響を与えやすいため、自信度が高くなると考えられる。 しかし、商品関与度が商品知覚リスクに与える影響については、グループ2(アクセサリー・香水)のみで観察され、それも仮説とは逆に、商品関与度が高いと商品知覚リスクが低くなることが確認された。この結果は、商品関与度が高い消費者の方が、商品を熟知しているため、グループ2(アクセサリー・香水)においては商品に関するわずかな情報(例えばアクセサリーの材質名)だけでも、不満を持たないためであると考えられる。 第2に、3グループ全てにおいて、消費者の情報収集指向度が高いとモバイルコマースに対する自信度が高くなることが確認された。この結果は、当初の仮説を支持するものであり、情報収集指向度が高い消費者は、それだけ各モバイルサイトやショップを見分ける情報も、モバイルで入手しているためであると考えられる。 また、消費者の情報収集指向度が高いと商品知覚リスクが低くなることが、グループ1(衣料品・化粧品)についてのみ確認された。この結果は、モバイルサイト上の商品評価情報や商品詳細情報は、既存の通販カタログと連動している場合が多いため、通販カタログが発展しているグループ1(衣料品・化粧品)においては、自然に消費者の商品知覚リスクが低くなると考えられる。反対に、グループ2(アクセサリー・香水)、グループ3(食品)においては、消費者の情報収集指向度が高いと、商品知覚リスクが高くなることが確認された。この結果は、消費者がモバイルサイト上で商品評価や商品詳細に関する情報を収集すればするほど、モバイルコマースサイトに対する不満度が高くなる、すなわち商品知覚リスクが高くなると考えられる。 第3に、グループ2(アクセサリー・香水)において、注文端末としてのみモバイルを利用している消費者、つまりカタログ、PCなどの補完メディアで商品を探索し、モバイルで注文する消費者の方が、モバイルコマースに対する自信度が高く、グループ1(衣料品・化粧品) 、グループ3(食品)においては、モバイルの利用用途(注文機能、情報取得機能)に関わらず自信度には影響しないことが確認された。この結果は、カタログをはじめとする補完メディアが比較的発達しているグループ1(衣料品・化粧品) 、グループ3(食品)においては、 注文端末としてのみ使っている消費者も、そうでない消費者もカタログや雑誌で、それらの商品を普段からよく目にしている。すなわち消費者の商品に対する認知が、総じて高いことによる結果であると考えられる。そして、グループ2(アクセサリー・香水)においては、補完メディアへの依存度の大きさが、消費者の自信度に大きく影響しているためであると考えられる。 また、3グループ全てにおいて、注文端末としてのみモバイルを利用している消費者の方が、商品探索ツールとしてもモバイルを利用している消費者よりも、商品知覚リスクが低いことが確認された。この結果は、商品探索に利用されやすいカタログ、雑誌等の補完メディアが、消費者の商品知覚リスクを下げる役割を果たしているためであると考えられる。 第4に、PCコマースでの経験が、モバイルコマースにおける自信度には、ほとんど影響しないことが、3グループ全てにおいて確認された。第5章でも説明したが、この結果は、消費者にとって、PCコマースでの経験がモバイルコマースには直接活かせないことへのあらわれであると考えられる。すなわち消費者がPCコマースとモバイルコマースのショップの良し悪しを見分ける基準が、それぞれ異なる可能性が考えられる。 また、グループ2(アクセサリー・香水),グループ3(食品)においては、PCコマース経験のある消費者の方が、PCコマースの経験がない消費者よりも、モバイルコマースにおける商品知覚リスクが高いことが確認された。この結果は、PCコマースに慣れている消費者にとって、モバイルコマースサイトは商品の詳細情報や写真が少ないことへの不満のあらわれであると考えられる。 また、グループ1(衣料品・化粧品)においては、PCコマースでの経験が、モバイルコマースにおける商品知覚リスクへあまり影響を与えないことが確認された。この結果は、カタログ等の補完メディアが発達しているグループ1(衣料品・化粧品)においては、もともとPCコマース利用者も補完メディアに頼ってPCコマース利用している可能性が高いと考えられる。 第5に、モバイルコマースでの経験度が高くなれば、消費者の自信度も高くなることが、3グループ全てにおいて確認された。この結果は、モバイルコマース利用者全般において、まだモバイルコマースの経験回数が少ないため、経験がそのまま消費者の自信に直結しているためであると考えられる。 また、モバイルコマースの経験度が高くなるほど、商品知覚リスクは3グループ全てにおいて高くなることが確認された。これも先ほどの理由と同様に、モバイルコマース利用者全体の経験回数がまだ少ないため、利用すればするほど、商品詳細情報に対する不満が増えるためであると考えられる。 以上の結論を整理したものを、グループ別に図表1,2,3に示す。
図表1 商品別特徴と消費者特性が購買態度に与える影響(グループ1)
図表2 商品別特徴と消費者特性が購買態度に与える影響(グループ2)
図表3 商品別特徴と消費者特性が購買態度に与える影響(グループ3)
これらの分析結果から本研究が強調したいのは、消費者特性とモバイルコマースにおける商品知覚リスクへの影響は、商品グループによりそれぞれ異なる、ということである。特に、その商品における通販カタログや雑誌等の補完メディアの発達度、すなわち既存の通信販売マーケットの発達度に大きく影響する、ということである。モバイルは消費者へ商品の詳細情報を伝えるためには画面表現、通信スピードにおいてまだまだ限界がある。そのため、消費者にとって補完メディアが重要な存在になっている、ということを本研究は強調したい。
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