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月例会報告
このページでは2012年度からのネオ・ロジスティクス共同研究会の月例会報告をいたします。毎月数名の方々から所感を頂きますが、紙面の都合上からこのページにはその中の御一人のレポートを掲載いたします。年度末に作成して、会員の皆様に配布している年次報告書にはすべてのレポートと月例会当日に配布したレジュメの抜粋を掲載する予定です。講演後のロジ討議の報告はこちらのページでご覧ください。2011年度以前の月例会報告についてはこちらのページをご覧ください。
※役職名は講演当時のものです。
『 カプスゲル・ジャパンのSCM活動 』 2012年5月17日第一講演
杉本 潤氏 カプスゲル・ジャパン株式会社 サプライチェーンマネジメント部長
従業員200名の典型的な中小企業が技能を売り物に、投資ファンドの支援で堅実にビジネスを展開している様子を話された。製品は薬のカプセルであり、これを受注生産、見越生産で製薬メーカーに供給している。どこにでも見られるパターンだが、供給の仕組みを講演者の前職であったJFEと比較していた。ものづくりという点で、その共通点に着目していたのが面白い。この講演でいくつか気のついた点を述べる。
投資ファンドと企業活動とのかかわり
かつてナピスコを買収して話題となったカスゲル社の傘下のカプスゲル社の日本法人が作るカプセルはわれわれの生活に身近に存在している。多様な薬のカプセルだ。私の身のまわりにある持薬もカプセルに入っている。ここに投資しているカスゲル社のような投資ファンドについては日頃、われわれの議論の外にあるように思う。だが身近に実は存在しているようだ。今日、米国の大統領選で話題になっているロムニー氏は84年ペイトン社を設立し、企業を買収、立て直した後、売却して利益を上げたといわれている。これが投資ファンドの仕事だ。最近では多くの企業の背後に投資ファンドの影がある。ところで、投資ファンドは、どこまで具体的な経営にかかわるのか。おそらく、カプセルの作り方までをアドバイスすることはないだろう。人事にはかかわりをもつのか。投資ファンドはただ利益を上げるというだけでは説明がつかない。どのような社会的な責任のもとに行動するのか。機能展開で明らかにしようとすれば、優良企業に資金を提供する。計画を満たす資金の下で、もの作りを支援し、人々の生活に貢献するというつながりが、投資ファンドの存在意義となるのだろうか。単に儲ける、利益を上げるという目的ではないはずだ。だが、ややもすると投資ファンドが現代の大金貸しのような暗いイメージがあるのは、人々の生活に貢献するというつながりが明らかになっていないからなのだろう。では人事は、経営戦略はとなると投資ファンドには経営にどこまで関与するのかといった研究課題があるように思う。
薬品サプライチェーンとしての見方
カプセルは中に薬をつめるから、当然カプセル製造は薬品製造ラインに機能的にはつながっている。もしピッチタイムが合えば物理的にもつなげることができる。しかし、カプセル製造と薬品製造は歴史的に別々に発展してきたので、独立した企業がいま分担している。もともとサプライチェーンというのは自律した企業の連鎖によって構成されるといういい方をするが、これらは条件さえ整えば一貫する。サプライチェーンの理想像は機能、工程の一貫したつながりである。それが経済的、技術的な制約によって異なる企業によって分担されているのだ。
そこで統合ラインを一度考えてみるとどうなるか。
ある企業で異なった作業帽子をかぶった女子の組立員がラインで仕事をしているのを目撃した。聞くと企業が異なるというのである。統合された工程の編成途中なのだろう。まずつなぎ、条件を整える開発をし、インライン方式として組み込んでいく。コカコーラがかつてバイプラントといって容器作成ラインをつなげていた。技術的に異なる要素があるので、二つを接近させ、連結したのであろう。自動車の組立ラインもその中にモジュール組立を担当する企業を含んでいる。
ある食品メーカーで容器製造を充填工程と直結したことがあった。これで在庫問題はスッキリした。もちろん、ピッチを合わせるために機器開発を行った。
こうして、サプライチェーン全体を一体化し、統合する努力をしてみてはどうか?しかし、反面重厚長大のシステムがフレキシビリティを失うという欠点が出てしまう。そうなれば、さらにその解決を追求する。かくして改善は不断のものとなる。
カプセルに入った薬品の流れを下方に展開していくと、体内に入って人体の必要な器官に薬剤を運ぶということになる。単に人間に薬剤を提供するといった見方だけでなく、もっと細分化された究極のサプライチェーンが見えてくるように思った。小さいだけに全体が見易く、特徴もはっきりしていて、典型的な中小企業のもつ様々な問題点をいろいろ教えてくれた講演であった。 <文責:高橋輝男>
『 大成建設におけるエンジニアリング本部でのビジネス紹介ロジスティクス分野戦略展開について 』 2012年5月17日第二講演
倉林 宏行氏 大成建設株式会社 エンジニアリング本部統括グループ部長
倉林氏はネオロジ研究会が開始された当時から8年間、毎月、月例会に参加しておられた。しばらくのご無沙汰であったが、今回は久しぶりに、ネオロジで彼の仕事の活動について語っていただいた。会社(大成建設)が建設業界で生き抜くには本業に固執していてはダメだという。スーパーゼネコンとよばれる大手ゼネコン(売上1兆円以上)は日本には5社ほどある。問題は、1992年当時の建設投資予測は年間84兆円あったのが、2015年の予測値は44兆円程度に見込まれている。大手ゼネコンがこれまでの市場シェアを維持していくと、当然のことながら各ゼネコンの売上は縮小してしまう。これからを勝ち抜くには、どうしても従来からの建設業のビジネスモデルを打ち破らなければならない。ゼネコンの利益構造を破壊し、ビジネスモデル改革により、利益構造の多角化を図る必要があるということだ。倉林氏の講演の圧巻は、そのために何をするかである。
倉林氏の話の説得性はこのあとにある。顧客のニーズを把握しそのためのソリューションを提供する。これは顧客満足を獲得する手段であるが、従来はこの段階でとまっていた。それをもう一段進めて、顧客の信頼を得たあと顧客と自社の相互便益享受関係を築いて、パートナーシップを構築しようというのである。建設総合企業として、顧客にソリューションを提供していた段階から、『顧客の総合利益』を念頭に入れた顧客とのパートナーシップを構築して利益構造の多角化を図る構想だ。倉林氏は、現在、大成建設エンジニアリング部部長でいらっしゃる。彼の取組では医療業界での取組みを長年続けておられ、その事例を紹介くださった。医療業界の経営課題を述べられたあと、医療業界の新たな流通プラットフォームの構築、物流共同化を成功させるためメガ物流施設構想計画である。それをやるためには、スーパーゼネコンみずからがコンサル事業を行い、さらには3PLや保守サービス業をおこなっていこうというのである。そうした計画のもとに顧客からの一括元請受注が可能になる。究極論として、トータルに仕事を請負い、一定の利益が確保できるなら、極端な話、ビル建設など無料でもいいという言い方もできるのだ。
よく、3PL企業は提案型事業であるという。提案は、たとえば、輸送が主体ならばその川上行程、川下行程まで遡って荷主に提案をするというのである。業務を拡大して仕事を得る話である。倉林構想はそれを上回っている。新事業を付加して利益を上げる構造を変革しようというのである。輸送企業なら、荷主との共存を前提に一括元請の仕組みを考え、輸送を利用して、他の事業から利益を上げる仕組みを考えようと言うわけだ。できることなら輸送費用はタダで提供してもいいのだ。そのためには、自分の事業を拡大する必要がある。コンサルティング能力を自社にもつのもいい、あるいは特定の分野の専門知識(たとえば医療関連の知識)を自社に取り込み、その分野のノウハウを顧客に提供し事業を拡大していくと言う方法もある。倉林氏にいわせれば、新しいビジネスモデルの構築というのは、そういう事業拡大を検討することだということになる。 <文責:藤田精一>
『 コーポレートガバナンス 経営者の報酬と交代はどうあるべきか 』 2012年4月19日第一講演
久保 克行先氏 早稲田大学ビジネススクール 教授
経営者の報酬という私の日ごろの関心とは少しかけ離れた部分に関する講演であったから、新しい刺激を十分に得た。
友人達との会話から、私は経営陣に加わった人々が外部から見ると収入にはそれほど大きな関心を持っているとは思っていなかった。
「どう、うんと給料が増えたんじゃない?」
「全然、それより会社の当面の運用とか、社会的責任の重圧がズシリと重く、収入が増えるなんてことなどあまり関心がない」という。
これは照れなのか?本当に関心がないのか?増えないのか?
そんなことで日本の経営者の収入の多寡が行動にインパクトを与えることは考えていなかった。しかし、自分のことを考えてみても、今日の講演を聞いて無関心を装ってはいても、収入はインセンティブに影響していることは確かなのだろう。
失敗にたいするペナルティは大きくなく、成功の報酬は大きくといった刺激が経営者がリスクある行動を選択する際のインセンティブになると聞いて、頷けた。そう考えると、確かに多くの今の日本の経営者がリスクをとらず、安定を求めて、経営が全体として沈滞しているかのように見える。それは政治の世界にも共通する。ストックオプションなどを含めて成功にたいする報酬を組み入れることによって、より積極的な意志決定がなされるようになるかもしれない。もちろん危険はあるが、今の日本では積極的な経営が望まれる。それが、収入によって支援されるということだろう。
現場力の活用が日本ではどこでも盛んだ。これに対して本社力(経営戦略を含むトップダウンの力)はその陰にかくれて、経営が維持されているといったらいい過ぎだろうか。
震災時に日産自動車は災害対策本部からのトップダウンによる指示の速さと整合性が効果を発揮したという。もちろん、現場力は有効である。あの災害の時、ヤマト運輸が被災地への配送を維持するのに、本社から指示されることなく救援物資を配送し続けたことが4月19日の日経産業では評価されている。しかし、全体の整合性にウェイトを置けば可能ならやはりトップダウンだ。
緊急時には、まず現場でしか情報は得られず、直接の現場でしか行動は起せない。それがヤマト運輸の行動だ。しかし、一たび混乱が落ちつけば、情報を集約したトップダウンの枠が重視される。この枠の下で現場が動く。さらに平常に戻れば、自律的な現場力が再び力を発揮して、トップが指示する範囲はぐっと小さくなる。これを経営戦略の枠といっておく。
このような経営戦略の枠が、徐々に小さくなり、弱体化してしまって、現場力に負うところが大きくなったというのが今日の日本なのか。それを打破するのが、収入でもバックアップされた経営者ということになるのだろう。経営者が適切な報酬を与えられることは、積極的な策が戦略として導入されるきっかけとなる。
経営者の交代の原因、経営をつぐ新しい経営者の出身母体などの解析も面白い側面であった。<文責:高橋輝男>
『 起業家とイノベーションの視点から考えるロジスティクス 』 2012年4月19日第二講演
ハケット・ショーン マイケル氏 早稲田大学ビジネススクール 助教
ハケット氏は、米国テネシーアン(テネシー子)である。小生も、10年間米国テネシー州の州立大学で教鞭をとっていたので、テネシーには強い思い入れがある。そんな関係から昨年秋、早稲田に赴任したハケット氏に登壇いただいた。ご専門は技術経営で、今回は技術経営の立場からみたロジスティクスについて語っていただいた。
起業家が、あるアイデアを思いついたとき、次の4つの条件を真剣に考える必要がある。価値命題、製品定義、顧客定義、生産流通チェーンである。この中でも難しいのが最後の生産流通チェーンである。これから新製品を販売するのに、顧客までのサプライチェーンは見えないのだから、わからなくて当然という考えがどこかにあるのかもしれない。しかし、最近はそのサプライチェーンを肩代わりするネット企業(たとえば、Shipwire社)が現れた。起業家は製品のアイデアを思いつき、ネット企業を通して製品を顧客に届けることができる。日本の楽天物流も同じような物流プラットフォームを提供している。ただ、楽天の場合は、プラットフォームの提供が主体で、あくまでも出店した商店が大部分の物流作業をしている(もちろん、その部分を楽天に委託する場合もある)。製品の機能尊重が日本の国民性ゆえ、日本では物流にまで多くの関心が払われていないという議論もある。
新しい技術に対する日本人の姿勢の例もあげられた。いまではロボットは作業者と共存して働くという考えを誰もがもつが、ロボットの導入期には、トヨタでは、ロボットは3K仕事を受け、作業者は人がしなければできない仕事に従事した。GMでは、ロボットは作業者数の削減を目的に導入された。新しい技術を物流に導入するということを、いまの日本企業ではどの程度考えているだろうか。
クラウドコンピューティングで自社製品の需要変動を即座にとらえ、アクションをとっていく。典型的な例として、米国ウォールマートを取り上げた。スパーコンピュータを日本企業はどの程度注目しているだろうか。クラウドコンピューティングで、たとえば、倉庫が一体化するというメリットを考えているだろうか。
ハケット氏は、さまざまな質問を参加者に投げかけた。中には日米の比較の問題もあって、即答できないケースもあった。しかし、改めて、そういう見方もあるという反省の機会を与えてもらったような気がする。自分は、数週間前マレーシアとスリランカの企業を訪問した。現地会社の工作機械は韓国、中国製だった。工作機械といえば日本の技術が最高であることは現地経営者の共通認識だったが、かれらの意思決定はコストなのだ。製品技術力では確かに誇れるものがあっても、トータルとしてのコストに顕著な差があれば、やはりコストの安い方に人々の心は移っていく。かって、日本が製品品質の向上に力を注いだのと同じ努力を、ロジスティクスコストの改善に力を注ぐべきだと痛感じた。<文責:藤田精一>







