2011年度以前の月例会報告

このページでは2011年度以前のネオ・ロジスティクス共同研究会の月例会の報告を掲載しております。2012年度の最新の月例会報告はこちらのページを、講演後のロジ討議の報告についてはこちらのページをご覧ください。ここでは研究責任者藤田精一教授による各月の講演要旨のみを記載し、作成された講演録の最初のページは月例会講演録のページにて公開しております。

※役職名は講演当時のものです。

『 三菱電機のロジスティクス活動 』  2012年3月22日第一講演

中村 嘉行氏  三菱電機株式会社 ロジスティクス部 物流技術・JIT推進グループマネジャー

 講演者の中村氏は早稲田卒業生、1984年に三菱電機のブラウン管製造部門へ就職された。その後、カナダやメキシコなどの海外勤務を経て、現在は本社のロジスティクス部におられる。グローバル企業である三菱電機の連結売上は3.6兆円にのぼる。主事業は重電、自動車部品、家電で7割を占める。バランス経営を目指し、成長の維持を常に念頭においている。三菱電機の各事業部門は技術を持ちながら現場重視を貫いている。
三菱電機ではJIT改善活動といって、見える化をはかったムダ取りを実施している。2005年度以前は勘と経験と度胸でJIT改善活動を行っていたが、それ以降は改善活動が連携をとる形で全社に広げている。つまり良好事例は水平展開していこうという活動である。
以前には、昔は「良きに計らえ」ということで物流改善に取組んでいたものが、その後利益を生む活動という認識になり、現在では生き残るために最適化を計る活動にまで意識が変わっている。経営管理者が改善に関心をもち常にフォローアップしていく姿勢、見える化をおこない最適化をはかる、いまできることは即実行に移すなど、全社的にJIT改善活動が推進されている。
具体的な物流改善活動の事例として、海外輸出におけるKD部品運送の工夫、コンテナ積込みシミュレータの導入、海外への重軽量品混載事例などご説明いただいた。物流改善は決して一人でできるものではなく、製品設計と物流の連携、製造との連携、海外拠点との連携など、講演の随所で連携の大切さを強調された。
今回の講演の主題は、三菱電機の中で行われている物流を取り巻く人々の意識改革を中心に その仕掛けや課題をお話しいただいた。時代の流れの中で、日本の各企業がさまざまな形で物流活動の進化を図っているが、各社の取り組みの共通項のようなものが見えてくる。その一つが今回の”連携”という用語で表現される。世の中がグローバル化されると、連携の範囲も当然広がってくる。そうしたグローバルなシステム作りが一層重要になる気がしてならない。 <文責:藤田精一>

『 日本版AEO制度と味の素社の取り組み 』  2012年3月22日第二講演

蓑田 順子氏 味の素株式会社 物流企画部 課長

 今日の主題はAEO(Authorized Economic Operator: 認定された貿易関連事業者)で、この制度は関税法の中の特例法である。講演者の蓑田氏は、味の素においてこの認証取得に当初から携わってこられた。AEO制度は貨物のセキュリティー管理と法令順守の体制整備に優れている事業者を税関が認定し、税関手続きの迅速化・簡素化などの便宜をはかる制度である。世界の各国がそれぞれに同様の制度を構築し、それらを国どうしが相互に認定して融通を図る試みもあり、究極的には世界標準のようなものができてくる可能性もある。日本では、それまで輸出通関手続き簡素化のために包括事前審査制度があったが、2008年にそれが廃止され、それに代わって特定輸出申告制度(いわゆる今日の本題である日本版AEO制度)が確立され、すでに300社以上の国内企業が認証を取得している。
制度そのものは、輸入者のAEO制度、輸出者のAEO制度、倉庫業者のAEO制度、通関業者のAEO制度、輸送者のAEO制度、製造者のAEO制度などとさまざまある。この制度により、通関の迅速化・リードタイムや物流コストが削減がはかれる効果がある。
日本版AEO制度はあくまでも日本国内のルールであり、善意の企業の申告を信じるという立場をとっている。認証を受ければすべてが無審査というわけでもなさそうだ、常に税関と連絡をとり、時には通関時に審査対象になるらしい。蓑田氏は味の素が認証を受けたことにより、税関との距離が縮まったという印象をもたれたと話された。税関は認証を得るためにさまざま支援を提供くださったようだ。 <文責:藤田精一>

『 動産担保融資の実態と活用 』  2012年2月16日第一講演

久保田 清氏 NPO法人 日本動産鑑定 理事長

 動産担保融資(Asset Based Lending)という用語を初めて耳にしたのは4~5年前のことである。それまでアメリカではかなり普及した概念だと聞いていたが、日本では馴染まなかった。担保といえば不動産だった。3年まえ「ガイアの夜明け」というテレビ番組で、動産担保に関する ほんの5分程度の紹介があった。ある瓦製造企業のバックヤードにおかれた製品を動産鑑定士が その企業の動産(この場合は製品在庫)を審査をしている風景が映された。それをもとに金融機関が融資を行うという筋書きなのだ。動産の価値が融資につながる話に関心をもち、今回、NPO法人日本動産鑑定理事長の久保田氏に講演をお願いした。
  久保田氏はもともとは銀行員だった。企業融資の大きなよりどころは財務諸表であったが、どうもそれだけだと企業の実態が見えなかったという。表向きの財務事情は良く見えても、その背後で本当に製品が売れているか疑問がある。見えない部分が多分にあるというのだ。財務諸表の数値を表面財務といい、実態財務は在庫である。この在庫をうまく調整すれば財務諸表の数値すら粉飾することさえ可能だという。動産担保の目的は、この在庫事情を見える化し、企業のキャッシュフロー改善に役立てようということである。
  動産の価値をどう評価するのかは関心がある。帳簿価格、流通価格、処分価格など、企業何の在庫にはさまざまな価値がある。30円で仕入れて、100円で売れば利益が生じる。でも売れ残って50円で処分することになるかもしれない。同じ商品がさまざまな価格に転価するわけだ。そうした価値を目利きで鑑定し、動産の価値を評価する。普通には、動産の価値は流通価格と処分価格の中間値あたりに落ち着くそうだ。
  NPO法人日本動産鑑定には6~7名の従業員しかいない。それだけの人数であらゆる種類の動産鑑定を行うことは不可能だ。それで、賛助会員を集め、そうした人たちとのパートナーシップのもとに、相談の評価をしているそうだ。
  中小企業への融資が思うようにいかない。企業評価が難しいからである。動産担保を導入すれば多くの中小企業が救われる可能性がある。日本国内での今後の普及に期待したい。<文責:藤田精一>

『 (強い小さな)小規模工場づくり工法の一考察 』  2012年2月16日第二講演

高山 章久氏 浜ゴムエンジニアリング株式会社 取締役社長

 早稲田大学では、20年ほど前からこの小規模自律分散システムに着目してきた。日本の経済発展でそうした概念があまり普及しなかったが、いまその小規模工場のメリットに着目した経営者が現れ、今回ネオ・ロジへお越しいただいて、思いを語っていただいた。
  大規模工場が小規模工場にまさるのは、生産効率であろう。大規模工場が最善のシステムであるという保証はまったくない。それはちょうどJIT生産が必ずしも最適とは限らないのと同じ理屈である。ある条件のもとでそれが最善なのであって、条件が崩れれば正反対の生産システムの方が最適になることすらある。
  今回の講演者である高山氏は、浜ゴムエンジニアリングの社長でおられる。彼の戦略のもとにいま中国を中心に、この小規模タイヤ工場を15箇所ほど設立している。小さければ小さいなりのメリットがある。極端な話、コンテナに設備を設置して、それを運び込めばその工程を完成することすら可能になる。小さい工場は川上から川下まで一目で見渡せるという。特に海外のローカルな場所に工場を構築する場合など、この小規模工場が強力な武器になる。昨今のリスクを重んじる経営からも 生産拠点の分散、リスク回避が強く求められるようになった。こうした背景からも小規模工場のメリットが感じられる。ただ高山氏の主張する小規模というのは、売れるスピードに合わせた工場を作っていこうという意味で、小規模というよりは最適生産システムの構築といった方がふさわしいという意味のようだ。
  質疑応答の中で、「あえてデメリットは何か」という問いに対して、人的生産性が問われると回答された。小規模の工場に人を配置していくと、大規模工場に必要な人数に比べて、人の数が増えてしまう。そのために人的生産性という尺度で見ると、多少落ちるという。しかし、多能工化などで小規模工場間の人の融通などを図ることにより、この問題も解決できそうだと主張された。<文責:藤田精一>

『 カゴメにおけるロジスティクスについて 』  2012年1月19日第一講演

岡本 尚久氏 カゴメ株式会社 SCM部 企画G 部長

 ケチャップや野菜ジュースで企業イメージを探ればカゴメにたどり着く。講演の中でもトマトの調達(特約の農園での栽培、そして海外からの調達)から、製品を顧客に届ける需給管理をしている。多くの材料在庫があるが、トマトそのもので貯蔵するのではなく、ペースト状で保管するという。
  90年ほど昔、愛知トマトソースとして創業し、商標登録を籠の目を形を使用し、1963年に「カゴメ株式会社」と改称した。その中で、SCM部は、当初は営業部物流課として営業の内部組織として存在した。1991年に需給システムが稼動し、それにあわせて物流部が独立した。その後、1998年、2005年にロジスティクス部そしてSCM部へと改称した。現在SCM部は23名、関連子会社としてカゴメ物流サービス(KBS)がある。
  講演を通しての印象の中で、一番頭に残る需給配送および同期化に力を注いでいることである。ドライ製品についていえば、全国6工場および生産委託先で生産し、8箇所の物流拠点を経由して得意先へ配送される。配送担当の主要はKBSであるが、一部配送は委託している。その中でもアサヒビールとの共同配送を指摘された。アサヒビールとは資本提携を期に、工場(名古屋地区)から長野の物流湯センターまで、往路にカゴメ製品、復路にアサヒ製品を輸送している。これからのカゴメの課題としては、KBSへ物流管理を移管し、生鮮物流のトータル管理システムの構築を目指している。
  物流部の需給業務の役割分担であるが、需要予測、出荷計画(ただし、通常品のみ)、補充計画、週次の生産計画、調達計画(要注意品のみ)、配車計画などがある。資材の調達には別途、調達部が担当する。システムの管理はSAPのパッケージを利用している。営業も計画業務に携わっているが、営業作業は月次のレベルであり、SCM部は週次レベルでの計画作業をそれぞれ手分けをしている。
  東北大震災の体験を通し、リスクへの対応策もいくつか紹介くださった。<文責:藤田精一>

『 東芝グループ ロジスティクス改革の取組 』  2011年12月15日第一講演

正木 裕二氏 株式会社東芝 ロジスティクス企画室 室長

 東芝は東京電気(重電の流れ、藤岡市助創業)と芝浦製作所(エレクトロニクスの流れ、田中久重創業)が1939年に一つの流れとなって、東京芝浦電気となった。東芝という呼称に変更になったのは1884年のことである。講演者の正木氏は1981年に東芝に入社しておられる。東芝の売上をみると、2011年度予想で約7兆円、うちデジタル・プロダクツが33%、電子デバイスが20%、社会インフラが33%、家庭電器などが14%となっている。事業部はカンパニー制で、デジタル・プロダクツ事業グループ、電子デバイス事業グループ、社会インフラ事業グループがある。ロジスティクス企画室(L企)は社長直轄で、調達・ロジスティクスグループとして先の事業グループと並列の立場にある。L企のもとに100%子会社の東芝ロジスティクス(TLOG)があり、親会社と連携して東芝のロジを担当している。重電から家庭用品まで多品目の製品をインターナショナルに扱うので、それだけにロジの役割も多様性を極めることになる。2010年に海外向け売上高比率が55%であったのに対し、2013年には65%まで拡大する計画である。
  東芝は総合電機メーカーではなく、複合電機メーカーであるという。安定した収益基盤を確立し、エコ・リーディングカンパニーとしての地位を確立しようとしている。東芝のロジは重電関係では工場から直接顧客へ搬送されるが、軽電関係は工場、地区倉庫、東芝ストアという流通経路を敷いている。現在の課題は、売上高に占める物流費の割合を低く抑えることにある。さまざまな経済変動の中で、売価ダウンが生じたならば、物流の効率を極力計らないと、売上高物流比率は上昇してしまう。
  そしていま、東芝グループのロジスティクス部門が目指す姿として、カンパニー・分社会社の調達・生産・販売部門などと連携し、ロジスティクスイノベーション活動を協働実践し、事業競争力の向上を図るとしている。
  講演の中では、さらにロジスティクス改善活動事例も多く示された。巨大グローバル企業が世界に対してロジスティクスネットワークを構築され、常に物流効率の改善に努めておられる姿が、講演の隅々にまで感じられた。<文責:藤田精一>

『 米国におけるロジスティクス 一日系企業の立場から 』  2011年12月15日第二講演

濱崎 真人氏 東芝ロジスティクス株式会社 インデントロジ事業部 参事

 東芝ロジスティクスは東芝の100%子会社であり、現在、外販比率は3割程度という。講演者の濱崎氏は、2003年本学ビジネススクールのMOT専修に入学し、小生のゼミに所属した。卒業近くに東芝ロジから米国在住となり、現地責任者として7年間赴任し、本年4月に帰国した。講演では、米国市場の特性、米国のSCMの特徴、担当したTVの配送、ロジ改善事例などを手際よく、しかも体験にもとづいて話をまとめられた。
  米国は東部および中西部地域に人口の約80%が集中する。消費財マーケットはまさにその地域に存在することになる。また消費者の力が強く、商品に対する返品が常時可能である。濱崎氏の経験値と思われるが、TV配送に要する西海岸からの平均輸送距離は1,972マイル(LAからシカゴまでの距離)だとういう。したがって、LAからラスベガスへ運ぶのに比べて、NYまで運ぶと約9倍の輸送費がかかることになる(米国内輸送、トレーラー満載を仮定)。
  中国からアメリカ消費地へ製品を送る場合だが、太平洋の船輸送、ロングビーチ陸揚げ、トラックで東部地区への輸送を含めておよそ25日かかる。そのうちで最も輸送コストが高額なのは米国内トラック輸送(約6割)だという。パーフェクトワールドという指標を導入して、それとの対比で、ロジ改善効果を計っていこうという試みがある。それはトレーラー満載で出荷すれば一台あたりのコストは最適化するという前提にたち、それぞれの取組(製品輸送)をそのパーフェクトワールドにどの程度近づけることができるか表そうというものである。
  濱崎氏によれば、米国進出日系企業販社におけるロジ組織は、ノンコア部門の位置づけにあるという。したがってマネジメントにロジの知見が求められ、それが欠けるとロジ改善活動には十分な成果が期待できない。その意味でもロジ分社化が求められることになる<文責:藤田精一>

『 あなたの損得判断は確かですか? 』  2011年11月17日第一講演

藤田 精一 早稲田大学商学学術院 教授

 第一講演は早稲田大学藤田教授のご講義を頂いた。日常誰でも行っている思考活動であるが、この「損得学」は明快な理論体系に裏付けられた意思決定のための「経済性分析」である。損得学では、第1原則として比較の目的と対象を明確にする、第2原則として各案の間で相違する費用と収益とを、お金の流れ(キャッシュフロー)に着目して捉える。
  ビジネスでは、仕入れを行い、一定の利益を加えて売価を設定し取引を行う。商品が売れると売上(収益)が入ってくると同時に商品(費用)が出て行き、利益が残る。だが取引の前に商品を滅失するとどうなるか。
  収益100円、原価30円、利益70円として、1つの商品を滅失した場合、いくらの損になるかという問いに対し一般的には支出した費用、つまり原価を損失分と考えるだろう。だが損得学では条件に応じて次のように考えるとご説明される。
  1日に限定数しか作れない場合(手不足状態)では、損失額は100円、つまり入ってくるべき「収益」が失われたことになるからである。
  一方いくらでも作れる場合(手余り状態)では、損失額は30円、つまりまた作れば収益を得ることができるので、「原価」のみが失われたことになる。
  また売れ残りが廃棄される場合、損失額はゼロ円、つまり最終的に処分されるので失ったものに該当しなくなる。
  以上の3つの条件を例示されたが、これは損得計算が条件設定(比較の目的)によって、或いは立場によって損得が異なる場合があることを物語っている。次に立場によって異なる損得の違いについて例示された。
  愛煙家のA氏は、パチンコに600円投資し、6個のたばこを手に入れた。翌日友人に1つ125円で譲った。このたばこは150円で市販されている。製造部長は25円の損だと言った。経理部長は25円の得だと言った。なぜ損得が逆転しているのか。製造部長の判断は、A氏が125円で売る場合と売らない場合を比較し、愛煙家A氏が友人に売った場合その1個を売店から買うには150円支払わねばならない。つまり25円損したことになる。
  一方経理部長は過去に投資した600円で6個のたばこを手に入れたので、1個100円で仕入れのものを125円で譲ったから25円得したことになるという意見だった。
  損得学では製造部長の意見を正しいとする。なぜなら意思決定は未来に向かって行うものであり、既に支出してしまった費用は意思決定の時点では取り返しのできない「埋没原価」と考えるからであると説かれた。
  「大切なのは、取りうる選択肢のなかで比較し、最良を選択すること。会計学は、「過去の事実」をどのように捉えるかという専門家が判断する領域であるのに対し、将来キャッシュフローが最大になる選択をする損得学は、ビジネスの現場において私たちの意思決定の領域である」と、ある起業家も指摘している。
  よく似た損得計算に「割勘計算」がある。収益や費用をどのように分配するかという問題に使われるが、これは損得学の対象ではない。なぜなら割勘計算は「公平の問題」であり、解は無数に存在するからである。損得学は必ず比較の対象があって、択一的に正解が存在することを説かれた。誰もが正しい意思決定をしたいと願うはずである。損得学はそれを導く有力な解を提供してくれる。<文責:森和彦>

『 なぜ物流の社会的地位は低いのか 』  2011年11月17日第二講演

津久井 英喜氏 首都圏流通機構株式会社 顧問

  第二講演はプラネット物流時代に日雑メーカーの共同物流にご尽力された元諏訪東京理科大学教授の津久井氏によるご講演を頂いた。
  従属的産業、3K(危険、きつい、汚い)職場、長時間労働など物流業の一般的イメージは悪い。賃金水準もある調査によれば低位なものとなっている。このように「物流」の社会的地位は決して高くないことは明らかである。
  しかし、津久井氏の講演はもっと高次な視点で論じられていた。それは物流の全産業における低位な位置づけに対して、その向上を図るため施策であった。
  まず物流の位置づけは、業界、企業、企業戦略、時代等によって変わってくるものであるが、「部分の問題なら後からどうにでもなる」と考えられていることに起因していると説かれる。このように考えられている根本原因は経営者の意思決定課題にまで物流が認識されていないことにあり、これを解決するために近視眼的な解決策を捨て、①3年、5年、10年という時間軸の視点から課題を提示する、②近未来の物流のあり方を領域(グローバル・ロジスティクス)、構造(循環型ロジスティクス)、考え方(物流協働化戦略)という視点に因数分解し全体と関連付けて考える。③企業経営の視野を蟻の目→鳥の目→魚の目と時間軸の経過と共に拡大させる、などの方策をご提示された。
  これらの視座には、津久井氏のプラネット物流時代に培われた「共同物流成功の自信」に裏付けられたポリシーが感じられる。そしてさらに業界、異業種という共同物流の枠を超えて、津久井氏が目指す「あるべき姿」は物流の「社会システム」という位置づけである。だが成功を収めた共同物流でさえ、根本的な問題として残るのは自社にとって有利かどうかという利害関係の問題である。共同物流はこの点が生命線といっても過言ではない。多くの共同物流はこのバランスが崩れ共同化が解消されたり、取り組む以前にこの点に躓いて実現しない、など企業間の駆引きが先行する。
  津久井氏の結論は、この駆引きを統制して業界、業際の物流共同化を実現しようとするのではなく、「灯台」の役割を果たす情報発信機能によって、社会システムとしての物流の地位を高めようとする方向性を見出されている。その根拠として機械システムは生成された状態から変化することは無いが、社会システムは時間の経過により自己修復(オートポイエシス)する、まさに「複雑系」として捉えており、その自己修復を誘導するのが「あるべき姿」の情報発信機能を持った「灯台」であるとの結論に到達されたと思われる。この灯台機能を実行するためにSNSを活用した意見交換の場を提供し、サロンを活用したオフ会と合わせて次世代の「物資供給システム」を探査する「協働」のワークショップを展開されている。
  筆者は冒頭に述べたような卑属なイメージの視点から本講演の展開を推論していたが、津久井氏の高次元での論理展開に、改めて物流の目指すべき姿をご示唆頂いた思いである。<文責:森和彦>

『 ライフサイクルコスティングの概念と事例 』  2011年10月20日第一講演

門奈 哲也氏 日本信頼性学会 LCC研究会 主査、サッポロビール株式会社 新価値開発部 パッケージ技術開発センター センター長代理

 門奈氏から日本信頼性学会LCC研究会の立場から、ライフサイクルコスティング(日本信頼性協会では、ライフサイクルコスト=LCC、ライフサイクルコスティング=Lccと表現する)について、その概念、歴史、事例を交え、環境問題も絡めて分かり易く講義をいただいた。
LCCは、商品の獲得コスト(=Acquisition Cost)と、それ以降商品を顧客が購入して当初の機能を維持・発揮させるコスト(=所有者コスト)、天寿を全うして廃棄に至る(廃棄コスト)のすべてのコストを指す。そして、門奈氏は、Lccを実施し精査することで、ロジスティクスコストの削減の強力なツールとなる、と説明されたと理解する。但し、完全にLccを実施することはかなり難しく、理由は、その間の資産保有者が供給者から所有者に代わり、コストの負担者が代わるという点、というのが門奈氏の指摘される課題であり、まさしくそのとおりである。日本で自衛隊のみがまともにLccを行っているといわれているが、兵器関連は完全に自衛隊用であり、機器の企画開発段階からメーカーに密着し、廃棄まですべて自らの手の内で完結するので、当然と言うべきであろう。
筆者は約30年前にロジスティクス関連の講演を受け、初めてライフサイクルコストの考え方に接した。米国の軍事費を大幅に削減する新しい入札方法によってLCCが注目され、その広い観点からのコストの把握の重要性と奥深さ、面白さを実感し、ロジスティクス理解の重要なファクターであると認識した。ロジスティクスはもともとミリタリーロジスティクスであり、その後ビジネスの領域に派生し、ビジネスロジスティクスとなったが、そのビジネスに身を置いてきた経験で、ロジスティクスの概念を簡単に理解するための重要なファクターは、「顧客最優先」、「全体最適」、そしてこの「ライフサイクルコスト(=LCC)」と考えるようになった。ロジスティクスの定義は種々あるが、ごく簡単に表現すると、「最大の顧客満足を最小のコストで獲得する。」、あるいは、LCCには商品を購入した顧客のコストも当然含まれるので、「LCCの最小化を目指す」ともいえよう。
門奈氏も言及されているように、「LCCの95%は開発段階で決定する」と言われる。この点を理解することが、LCCを意識することの最も重要な意義ではないかと私は考える。例えば、大なり小なりリコールが発生した場合は、当然製造者が費用を負担することになる。結果的にその商品の利益がマイナスになることもありうる。また、車の廃棄費用を購入時に支払うことも、LCCの先払いと言える。さらに、粗大ごみを捨てる場合にコンビニで指定のシールを購入し、それをゴミに貼って役所に収集を依頼するなどなど、廃棄費用も「見える化」されつつあると言える。また、省エネの面から、消費電力を極力落とした家電商品が競争力を上げている。これらの費用をすべて開発段階で最小化するような商品作りが、メーカーに求められているということである。したがって、「LCC最小化」ということが、企業の競争力の最重要な源泉であるといっても決して過言ではない。
さて、企業にとってLccが難しいということを門奈氏が述べているが、非常にラフではあるがLccにトライした一例を紹介する。ある日本製の機械(原価は数百万円程度)を米国で販売し、その後保守契約を結んだ例でLccを行った。日本での獲得コストに、保管費・包装費・輸送費・保険費・7年間の保守メンテナンス費(購入者が製造元に支払う)・廃棄等々の費用を足し合わせてみた(機械消費電力やスペース費用等は除く)。保守契約の費用は所有者が製造元に支払うが、試算の結果、Lccは製造原価の約2.5倍であり、保守メンテナンス費用は半分以上であった。これを試算した理由は、その商品の販売時の利益と保守契約費用が妥当であったかどうか、すなわち、顧客から支払われた価格と保守費用でメーカー側の足は出ていないのかどうか、を確認したかったわけである。その結果幸いプラスであった。但し、保守メンテナンスだけではほぼイーブンであった。もし保守メンテナンスで予想外の費用が掛かった場合、LCCが膨らんで赤字になったかもしれないということであり、その原因はやはり開発段階の責任に帰する部分が殆どではないかと思われた。
最後に、LCCと環境問題のLCAは、ある意味で非常に類似した概念と思われる。いずれもこれまでとかく注目されなかった、見えない部分、すなわち浮かんだ氷山の水面下、あるいは負のアウトプット(排出物)に光を当てて費用や負荷を顕在化させ、それを極小化させることを目指す。いずれも社会を豊かにしようというベクトルであり、今後さらに注目され、成果につながればと期待する。<文責:酒井路朗>

『クリナップグループが目指すサプライチェーンマネジメント』  2011年10月20日第二講演

大竹 重雄氏 クリナップロジスティクス株式会社 代表取締役

 大竹氏にはクリナップグループのSCMの最適化についてご講演をいただいた。システムキッチンの製造と販売に関するそれまでのサプライチェーンを抜本的に改革し、棚卸回転期間=1/12(内製品のみ回転期間=1/16)と改善しながら、売上高2倍、売上高物流費比率28%減を達成した等という点で、ベストプラクティスともいえる成果事例である。
講演と質疑応答に出てきたキーワードを幾つか挙げてみる。(講演順ではない)
・アナログ的 ・機会損失は実損ではない ・在庫責任は誰も取らない ・物留
・中間在庫ゼロ ・倉庫全廃 ・部材保有の拡充 ・MRP無し ・受注生産方式
・生産革新システムCPS ・出荷順別多品種混合一個作り生産方式
・営業支援システム ・製品を作る権利書 ・生簀に泳がせる
・調達のミルクラン方式 ・クロスドック ・共同配送 ・包装材リユース化
・花弁型から最適配車へ
筆者は約30年前にロジスティクス関連の講演を受け、初めてライフサイクルコストの考え方に接した。米国の軍事費を大幅に削減する新しい入札方法によってLCCが注目され、その広い観点からのコストの把握の重要性と奥深さ、面白さを実感し、ロジスティクス理解の重要なファクターであると認識した。ロジスティクスはもともとミリタリーロジスティクスであり、その後ビジネスの領域に派生し、ビジネスロジスティクスとなったが、そのビジネスに身を置いてきた経験で、ロジスティクスの概念を簡単に理解するための重要なファクターは、「顧客最優先」、「全体最適」、そしてこの「ライフサイクルコスト(=LCC)」と考えるようになった。ロジスティクスの定義は種々あるが、ごく簡単に表現すると、「最大の顧客満足を最小のコストで獲得する。」、あるいは、LCCには商品を購入した顧客のコストも当然含まれるので、「LCCの最小化を目指す」ともいえよう。
これらのキーワードのすべてがSCMのジグゾーパズルのピースであり、それぞれに緻密に対処した結果が、目覚ましい成果につながったと考えるが、特に重要なワードは「中間在庫ゼロ」と筆者は考える。
ロジスティクスの最適化に近づくには、在庫の極小化を避けては通れない。他方、顧客満足を維持する、あるいは顧客満足度で競合他社に先んずることもまた、企業存続の最重要命題であろう。メーカーにとって、顧客満足を獲得しながら在庫削減を目指す施策を考えたとき、最終的には、製造部門の実力に帰着すると言っても過言ではない。即ち、いかに短手番で製品を製造し、顧客に届けられるか、である。ましてや、クリナップのように、中間在庫ゼロで且つ受注生産へ完全移行を断行するには、製造の徹底的な能力アップと信頼性が不可欠であった。そのために、講演ではそれほど言及されてはいないが、きめの細かい地道な努力を重ねられたことは想像に難くない。調達のミルクランや長手番部材の自社生産を行い、また、製品配送の仕組みを単純化して、受注から顧客納品までのリードタイムを二種類(システム商品は7日、単品は2日)のみに単純化し、さらには物流費の削減のために共同配送へも展開していった。
講演ではさらりと説明されたが、私は営業マンの現場での顧客対応で、劇的な変化があったのではないかと想像する。顧客の最大関心事は価格であるが、それとセットで納期が問われる。クリナップでは納期は二種類と決まっているので、顧客商談の場で納期解答ができる。在庫が無いから確認や問い合わせはそもそもできないし、無用である。このスピード解答を可能にしている仕組みは、営業の立場からかなりの戦力になっていると考える。
サプライチェーンマネジメントの正道を、大上段で推進し成果につなげた素晴らしい事例である。<文責:酒井路朗>

『3PL活動の変遷と将来展望』  2011年9月15日第一講演

加藤 進一郎氏 一般社団法人日本3PL協会 専務理事、トーヨーカネツソリューションズ株式会社 相談役

 日本3PL協会専務理事・トーヨーカネツソリューションズ(株)相談役の加藤進一郎氏に日本の3PL活動の変遷と将来展望に関して講演いただいた。 日本3PL協会設立の経緯は、全日本トラック協会の大須賀正孝氏(株式会社ハマキョウレックス会長・日本3PL協会会長)の講演を機に物流業者の勉強会を作ろうとの声が上がったのが契機であった。3PLの定義としては様々なものがあるが、総合物流施策大綱では、「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること」としている。
講演の中で印象深かった事項について順次述べてみたい。
3PL活動とは、つまるところ地球資源の有効活用でありレンタル的活動ということができる。地球物理学の松原氏は3PL活動をレンタルの思想と捉えているとの紹介があった。我々の祖先は、狩猟生活から農耕生活に移行したが、そのことは所有から共有への発想の転換があると捉えるのだというのである。些か発想の飛躍が大きすぎる気はしないでもないが納得させられる点もある。
事業戦略作成に当たっては日経新聞の社説の日本企業の世界市場でのシェアの揺らぎを引用しての問題提起が印象に残った。新興国企業が力をつけた結果、ハイテクの分野でもコモディティー(市況商品)化が速まってきた。日本企業は売上高確保のために利益の出にくい製品をつくり続けている。こうした状況から抜け出すにはビジネスモデルの見直しが欠かせない。アップルはiPhone(多機能携帯電話)やiPad(タブレット型端末)で多くの機能を束ねた製品を開発し、激しい価格競争にさらされるのを避け、高い収益を生む。更にネットワークでつながり、音楽・映像・ゲーム配信などのサービスにもビジネスを広げる。最初にできるだけ大きな経営の絵を描き、足りないものは他の企業の手を借りる。スマートフォンでは生産もソフトも自分ではつくらないが、儲けの源泉の端末技術は自ら押さえ、サービスも一手に管理している。重要なのは大きな絵を描いて技術を束ね付加価値を高める総合力だ。さらには、世界市場で競争するには総合力で負けないような「国の経営モデル」も必要であると指摘している。日本の産業政策の閉塞感は、自動車・コンピューター等の過去の成功体験から抜け切れていない思考回路に起因しているということに深く憂慮せざるをえない。
EC(電子商取引)市場が10年前の想定と変わっているという点は興味深かった。消費者層はパソコン利用の青年~中年層・ビジネスパーソンではなく、携帯利用の若年~高齢者、物流ニーズは専用センター構築・ドライバーに店頭業務を代行させるための専用輸送NW構築ではなく事業規模に応じた俊敏な物流システム規模の変化・宅配ネットワークの活用が現在の姿となっている。共同センター化と情報プラットフォーム化を通じて3PLが、こうした状況に対応できるEC物流の担い手となりうる可能性は大きいのであろう。<文責:高坂彰>

『日産自動車におけるロジステックス活動最新事情』  2011年9月15日第二講演

安藤 康行氏 日産自動車株式会社 部品物流技術部 部長

 日産自動車はグローバル販売420万台の自動車メーカーである。講演概要は以下の通り。
日産自動車は従来物流を、物流管理部と各事業機能中のオペレーション部門で担っていたが、2002年よりSCM本部を設立し、生産管理・ロジステックスのシステム機能をSCM企画部に統合した。また、ルノーとのアライアンスが進む中で、ロジスティクスの地位向上・物流動線の飛躍的向上を受けて、所与のものとされていた部品レベルでの形状・組み付けレベルなどの移動単位、サプライヤーの生産基地などの見直しを2005年より開始し、2006年には物流技術部を設立し、設計段階からの物流最適化を推進している。
物流エンジニアリングを担う部品物流エンジニアリング部は、新車軸での最適な物流費の検討・部品物流ネットワークの観点からの最適化・部品荷姿の観点からの最適化の3グループで構成されている。包装設計(容積)、輸送距離、サプライヤー・開発・購買間のフィードバックサイクル構築、積載効率について「如何に運ばないか」の観点から様々な検討を行っている。
震災後の完成車物流の状況を述べる。輸送途中の車両2,647台が被災し、港湾では国内東北向け海上ルート、北米向けルートが使用不可となった。日産宮城サービスセンターが津波により壊滅的な被害を受けた。復旧状況は、国内向けは、仙台港・八戸港使用不可期間はトレーラーの代替輸送で対応、1ヵ月後海上輸送再開。輸出は、栃木工場北米向けは、日立港使用不可のため追浜港で対応中。日産宮城サービスセンターの新車納整は栃木サービスセンターで補完中。2002年から構築のSCM管理体制が寄与。海外生産車両計画を部品調達可能車種優先生産により生産ロスを防いだ。販売方式の見直し実施、3リージョン制によるリージョンマネジメント強化、部品単位での管理効果により海外生産への影響を極少化できた。結果として1911年度第1四半期のグローバル販売台数は、前年同期比10.6%の増加(954千台→1,056千台)。ゴーン改革が、日産を大きく変え続けてきていることを実感した。日産の独立性の保持については、これからも注視していきたい。<文責:高坂彰>

『BTOシステムバスの仕組みとロジスティクスと経営』  2011年7月21日第一講演

三村 光昭氏 株式会社ノーリツ 物流システム部部長

 住宅設備機器メーカー(株)ノーリツの主力製品の一つであるシステムバスのロジスティクスについて、オペレーションでの改善と在庫削減による経営貢献の両面から講演があった。
前半では、納入先施工現場の工事計画に合わせた時間指定納入という大きな顧客要求制約に対し、注文生産というメリットを最大限に活かし、物流、生産のタイミングを逆算し滞留を生じないように進めていく便別着工・便別出荷導入事例の紹介があった。また、トラック輸送の積載効率向上のためのスキット改良や積載方法改善の事例とその効果の紹介もあった。どちらの事例でも、あるべき姿を具体的に実現するために関連部署や協力会社を巻き込んだ実行力に特に学ぶべきところがあると感じた。
また後半では、物流部門における費用と改善効果を評価するための、より的確な物流コスト比率指標として、営業価格に影響される対売上高比率でなく定価ベースでの対基準売上高比率を用いることで物流コスト削減の効果を明確にし、説得力の強化も図っていた。さらに、この指標を効果的に活用した事例として、出荷に関わるピッキング・積み付け・積込みなどの作業を便別出荷の時刻と連動させたダイアグラムを組むことで、トータルでのリードタイム短縮と在庫削減に結びつける成果を上げていることを高く評価したい。
受注生産製造業は見込み生産に比べてロスがないのが当たり前のように思われているが、顧客の要求は多種多様で、特に生産・物流の大きな変動への対応は、ピークに合わせた無駄な固定費の発生、あるいは資源的な制約からの強引な平準化による失注にもなりかねない難しい問題を含んでおり、営業部門の的確な協力が必須である。物流部門単独での改善をきめ細かく実施しながら、生産・営業など他部門との連携によりさらに大きな効果を上げ、全体最適といえる状態を実現するのは決して容易なことではない。ノーリツでは経営層を巻き込んだ改善推進を図ることで実質的な全体最適を実現しているといえるのではないか。トヨタの生産方式を導入してきた経緯があるとのことだが、企業風土に定着することで組織力としても高い改革・改善力を保有しているのではなかろうかと推察する。<文責:中澤喜久雄>

『 住宅建材物流の仮題と克服に関する一考察 』  2011年7月21日第二講演

吉田 聡氏 センコー株式会社 住宅物流営業本部 住宅物流営業開発部長

 住宅建材物流を一つの柱としている大手物流事業者センコー(株)の事業概要、住宅物流市場動向と建材物流の課題、およびこれらに対応した人材育成、顧客のコスト削減要請などへの取り組みの現状と将来の課題について講演があった。
躯体物流、内装物流それぞれに、各建設現場によって変わる作業環境や建設工程に合わせた搬入、また重量やサイズが大きく梱包にも制約のある資材を取り扱うといった建材物流固有の条件に対し、顧客の要求に「誠実」に対応することで事業を拡大してきた実績に強みを持っていることがよく理解できた。その強みを活かすため、社員のみならず協力会社の運転手に対しても、建材物流への理解と誠実で臨機応変な対応を徹底する教育を行うための施設・制度を設置・構築しているのは物流企業としては数少なく、その企業姿勢と関係者の努力が素晴らしいと感じた
キャッシュフロー重視、ノンアセット化の時流のなかで物流委託先にコスト低減を常時求める風潮が一般化している。しかし、講演者も指摘しているように、住宅の購入者にとっては一生で一度の高額な商品購入であり、しかも実物を確認することが出来ない状態での購入となる。品質を犠牲にしたコストカットを行い顧客の信頼を損なう事業者に将来はなく、物流を担う事業者にもコストと品質のバランスが取れた事業推進が強く求められている。特にドライバーは直接、顧客に接する物流事業者の商品の一部そのものであり、その教育はきわめて重要である。既に取り組んでいると思うが、教育の成果をさらに高めてモチベーションを向上していくためには、ドライバーの評価と待遇への反映のための枠組みも重要となると感じた。 <文責:中澤喜久雄>

『サプライチェーン効率化のためのロジスティクス改善』  2011年6月16日第一講演

田村 耕司氏 コマツ物流株式会社 代表取締役社長

  経営者としてのロジスティクス改革について強い意欲を感じた。かつて競争相手として意識していたキャタピラー社への関心も、本来のターゲットである顧客への関心に置き換えらていると思う。ビジネスにおける競争はライバルに追いつけ、追い越せ、そして蹴落とせではなく、努力の相手を顧客に絞り、彼らと競うという視点を持つことが大切だというのが私の主張である。さらに 流行に流されない腰の強さも感じさせた。コアビジネスに集中するという姿勢である。一時、日本では経営の多角化が話題となり、多くの企業が多角化路線を歩んだ。大手電機メーカーも食品メーカーもそうだった。それによって収益の増大を図った。しかしいまコマツはそれらを整理するという戦略をとった。例えばコマツフォークリフト社を吸収して整理した。こうしてコアビジネスに集中した。日立物流などとは異なる戦略である。こうした戦略の違いがどのような成果を生むか興味のあるところだ。コマツ物流はコマツを直接支援する会社として位置づけられているという。
ロジスティクスについては当然のことを地道に実践していると思う。船積みの時間に合わせて生産を計画し、輸送システムも専用車両をフル活用して稼働率を高めようとしている。そして効果をあげた。
ICタグの利用も、リターナブルパレットの活用も全体としてコマツ固有のしぶとさを感じさせるシステムであった。<文責:高橋輝男>

『 Nikeのサプライチェーン 』  2011年6月16日第二講演

能智 寿子氏 株式会社ナイキ ゴルフオペレーションズ

 ナイキの輸送業者などサプライチェーンに関連する企業に、ナイキの戦略を徹底的に理解させ彼等との間に良好な取引関係を築くシステムについて興味ある話を伺った。私のまわりで育った優秀な女子は大学で教鞭をとったり、コンサルタントとしてグローバルに活躍しているが、企業でロジスティクスに従事している人は多くない。しかしこれからは今日の講師のようにロジスティクスプロフェッショナルとしても活躍して欲しい。
ナイキのケースではサプライチェーン業者も初めは外国資本の企業との付き合いに戸惑ったかも知れぬが、ナイキの辛抱強い努力があって、評価の仕組みに積極的に参加しているのであろう。
私の持論は、交渉はゲームであり、競争であると思う。ここではナイキとサプライチェーン業者との仕事がゲームとして、競争を伴って行われている。それが頼もしい。
戦略項目の中で販売店との協働から消費者との協働に代わったというのは大きな変化である。まさにサプライチェーンマネジメントの成長である。WEBベースの販売はきっと新しい波に乗るだろう。若い世代のみならず中年の購買者もこれを見逃しはしないだろう。<文責:高橋輝男>

『 ダイソーのビジネスモデルとロジスティクス 』  2011年5月26日第一講演

柳澤 雅紀氏 株式会社大創産業 本社システム室 課長

 講演概要:ダイソーのビジネスモデルの特徴から入り、国内並びに海外店舗についての現状、これら国内・国外店舗へのロジスティクスについての講演であった。ビジネスモデルとしては「安さ」「品質」「ボリューム」「新しさ・新鮮さ」「新しいコンセプト」の5つのキーワードが紹介された。国内出店は直営店・代理店(フランチャイズ店)をあわせて47都道府県に2,576店舗(2011年3月11日時点:大震災によって被害の店あり若干変動)、海外は25カ国・地域に出店。これらへのロジスティクスは国内には札幌・新潟・関東・関西・鳥栖に物流拠点を持ち全国の店をカバーする体制をとっているが、出店の状況を見ながら、倉庫の統廃合を推進している。このところ、海外への出荷が増加傾向。海外のロジスティクス拠点は、現在3箇所である。これらの海外拠点は、全世界へ出荷をおこなう。国内拠点での品揃え・ピッキングは「店別ピッキング」「ゾーンピッキング」「トータルピッキング」「デジタルピッキング」の4方式を採用。これらは、倉庫の規模・在庫商品内容・取り扱いロットなどにより使い分けているが、店別ピッキングを最重要視している。ちなみに、ダイソーのトータル取り扱いSKU /アイテムは約60,000品目で、このところの100円均一以外の商品の取り扱いにより、在庫・商品管理は今までよりは細かにおこなわれるようになっている。<文責:吉岡洋一>

コメント:2005年3月の週刊ダイヤモンドの感動サービス調査によると、ダイソーの100円ショップはデイズニーリゾートに続いて2位にランクされている。この要因が、今回講演で語られた5つのキーワードの実行にあると理解できた。これらをビジネスコンセプトとする店舗が、国内と全世界に大きく広がっているのは、広く世界の現代の顧客の期待価値をダイソーが実現していることにあると思われる。これらをバックアップしているロジスティクスは、多種類アイテムの取り扱いであっても、荷扱いとしては100円という価格の均一的くくりと4~5ゾーンのまとまりで、製造から店舗までのシステムが簡素化しやすい要因を持っていると感じた。それと同時に、売上が力強く上昇しているときの物流システムは、売り主導で進むので問題・課題が表面化しにくいが、すでに変化しつつあるように、ダイソーの取り扱い品目が、100円均一を逸脱して今以上に多岐多様になっていったときに、ロジスティクスをどのような形で高度化していくのか、新しい挑戦が始まるのではないかと思った。<文責:吉岡洋一>

『 大野耐一氏とゴールドラット博士 』  2011年5月26日第二講演

岸良 裕司氏 ゴールドラットコンサルティング ディレクター、日本TOC推進協議会 理事

 講演概要:「Globe突破する力」、国土交通省におけるTOC理論講習会のVTRから始まり、いかに「TOC理論」が世の中を変えていくかを実証・実例を持って説いた講演であった。表題の大野耐一氏は、トヨタ自動車のカンバン・システムを作ったことで有名な人であるが、これらのシステムの不変性を理論的に裏付け、幅広い分野への適用を試みたのが、ゴールドラット博士。大野氏の発想は、トヨタ・システムの全体最適を狙ったものであったが、結果的には「カンバン・システム」という生産段階のみの最適化の実現で流通・販売段階では、完成車の在庫がかなり多く発生するという事態を生んでいる。これらをいかに全体最適に持っていくのかを「TOC(Theory Of Constraint)」の考えに沿って語られたのが今回の講演であった。TOCの概念は「部分最適から全体最適を目標として、ボトルネックを見つけて全体調和を図っていくこと」「”つながり“と”ばらつき”を前提とすると、全体の制約に集中することが全体最適となり、非制約に力を注ぐことは無駄となる」「Focus=Not to do=“今はやらないこと“が集中を実現する」というものである。それは、システムとは「目的を達成しようとして協力する、相互に依存し合う複数の独立した構成要素のネットワークである」(エドワード・デミング)の考え方に基づく。これらの考え方が、いかに重要かをインドの自動車メーカーのTATAsteelの急速な成長のバックグランドや世界80社における目覚しい成果について学術的調査結果として紹介。これらの背景にあるのは、わたしたちが日常に持っている仮説の誤りに基づくもので、本当の問題解決をするためには、わたしたちの中で「パラダイムシフト」が必要。それは、わたしたちの頭の中で「原因」と「結果」の因果関係が明確に構造的に整理して認識されていないことによって起こっている。これらを在庫でいうと「利益を出すために在庫コストを下げる」という議論があるが、この場合、在庫を利益を上げるための投資”在庫を買う→商品を売る“であると考えないと部分最適の「在庫を減らす」だけに集中しても問題は解決しない。つまり「在庫を圧倒的に減少させながら売上を伸ばす」=「お客様の利益を増やすことで自社の利益も増やすWIN-WINのサプライチェーン」の構築がない限り問題は解決しない。小売業の立場に立てば、本当に望んでいたことは「在庫を減らすこと=在庫コスト低減ではなく、在庫回転率を上げてROIを向上することにあった」=「在庫に縛られていたキャッシュの解放による資金繰りの改善」であった。これらで変わったことといえば「パラダイム」だけである。”数々の仮定から成り立つ既成概念を新しい仮定に切り替えること”である。つまりは「本質を捉え、それを実践する」ということに尽きるだろう。<文責:吉岡洋一>

 コメント(第2講演・討議をあわせて):何が出てくるのかと思っていたら、タイトルの人物の実践と理論をベースにした、経営の中における「パラダイムシフト」についての実証的裏づけのある講演であった。当方は、流通・マーケテイングを専門にしており、これらの中で、在庫問題をかなり掘り下げ、具体的に実効性あるシステム・モデルを作ってきているが、今日の講演は、これらへの理論付けと同時に違った角度からの説得であった。ただ、全体として説得性があるのだが、ストーリーと話の展開としては、これら理論を世の中への啓蒙という形で行おうとしたときには、いまひとつ実践へ向けてのロジックの整理と平易な翻訳と工夫が必要と思った。今のままだと、言葉も実践もほんの一部の人たちだけの所有物に終わってしまいそうな気がした。SCMということが急速にビジネスの表舞台に出てきているが、結局のところ、今日のようなセオリーの視点と実践なしでは、単に一気通貫の概念に終わってしまうと思われる。この意味で、今日のTOC理論をより分かりやすい形でSCMに関係付けて広く社会に強力に普及させていくことが必要と思った。<文責:吉岡洋一>

『 経営戦略とビジネスモデル 』  2011年4月14日第一講演

井上 達彦氏 早稲田大学商学学術院 教授

 普段、何気なく「経営戦略」という用語使っている。井上氏は冒頭に「経営戦略の本質は何だろうか」という問いかけをされた。解答は「競争をしなくてもすむ(非競争状態を作り上げる)」ということだ。宮本武蔵は戦わなかったという。我々がよく戦略の一つとして「差別化」をあげるが、それは非競争状態を作り上げる方法の一つなのだ。考えてみると随所にその考えが応用できる。「この野球に勝つためにはどうすればよいか」と尋ねられたとき、「負けない方法を考えればよい」。その方法として、エラーをしない、打撃力を磨く、相手より早く走る。少なくとも相手チームより優れていれば勝利につながることになる。収益を拡大するには、速く配送するには、国際競争力を上げるにはなどといった問いかけにも、収益を下げないようにするには、配送力を維持するには、海外企業を迎えうつには、と一歩しりぞいて対策を練ればたくさんの知恵がでるだろう。その方法(たとえば差別化)をうみ出す仕組みを考えればいいのだ。井上氏はその仕組み作りのケースをいくつか示された。先行優位をねらう(先にマーケットへ入って、マーケットを独占する)、後追いをする(優れた製品の後を追う)など考えを進めることができる。
仕組みを作る方法には要素分解アプローチとモデルアプローチがある。要素分解アプローチは成功要因を理論的に分析して、自社の能力を踏まえてそれらの要素を組み合わせて全体を構成しなおせばよい。モデル論の方は、一種のベンチマーキングアプローチと解釈できる。自社の現状をあるべき姿にむけて、ベンチマーク手法を用いて、ビジネスモデルを作り上げることある。真似ることだが、学ぶという用語の語源は真似るにあると聞いたことがある。ただ、学ぶという用語の方が範囲が広い。単にコピーをする以外にも、対象となるモデルとまったく正反対のモデルを作り上げることも真似るの範疇に入る。井上氏は「他社のビジネスモデルを抽象化して、自社業界の文脈にあるように適応させて真似ること」と記述している。<文責:藤田精一>

『 RFIDの国際標準化と現在の実力について 』  2011年4月14日第二講演

清水 雅史氏 NTT未来ねっと研究所 主幹研究員

 本講演は、RFID技術の面から捉えたお話であった。講演のハイライトは清水氏が携わっている標準化の問題で、物流の分野でも良く使われる860~960MHzの周波数帯ではまもなく920MHz帯に集約されるという。日本は現在950MHzであるが、来年には920MHz帯へ移行し、アメリカや中国と周波数を共有できるという。ただヨーロッパの場合は、そこへの移行が7年先になり、グローバルな標準化にはまだ時間がかかりそうだ。清水氏の見る今後の展望であるが、パッシブタグは低消費電力化により通信距離は延伸されるが、読み取り範囲の制御は難しいという技術問題が残るという。またアクティブ系のデバイスはスマートメーターの普及により、低価格化が図れる可能性があるという。電波法は国によって規定が違うので、歴史的に周波数帯が確保されると、それを変更するのは難しいそうだ。アマチュア無線や携帯電話がある周波数帯を使っていれば、後発技術はそれを避けて通らねばならない。一つの技術がそこを占有すると後発技術はそれを避けなければならないのは当然かもしれない。しかし、グローバルは標準を作ろうとすれば、そこでの妥協なくしては問題は解決しないのだ。<文責:藤田精一>

『マースジャパンサプライチェーン』  2011年2月17日午前

矢部 実氏 マースジャパンリミテッド 供給物流統括部 部長

 マースジャパンの親会社はアメリカバージニア州マクレーンにあるマース・インターナショナルである。年間売上げは3兆円にのぼる。マースがグローバルに展開するペットケア、チョコレート、食品など6事業のうち マースジャパンでは 売上げのうちチョコレートが10%、ペットフードが90%で圧倒的にペットフードの占める割合が大きい。ペットフードの生産拠点はオーストラリアとタイで、製品を日本へ運んで販売している。それゆえ国内の競合他社と比較して調達のリードタイムが長くなってしまう。また海外の供給工場とのコミュニケーションも大切になる。それらの供給工場は日本のみならず世界拠点の注文の生産をしているからだ。従来は月次で発注をしていたが、それをピリオド(4週一ピリオド)として週次の発注になった。マースジャパンのサプライチェーンの改善はしっかりと行われている。国内の横もちのコストを削減するために拠点統合が行われた。供給体制の強化、効率化に向けての施策として、需要予測の精度向上が図られている。またマースジャパンにおける営業部と供給/物流部との連携はきわめてよい。週次の発注ゆえ、供給工場とのコミュニケーションの改善がなされてきた。さらに「S&OPプロセス」が導入された。S&OPとは新規および既存のプロダクトにいての顧客志向のマーケティング計画をサプライチェーンマネジメントと統合することで戦略的計画を創出するプロセスである。
 講演者の矢部氏は以前サプライチェーンのコンサルタントをしておられた。その後海外のプロセス系の生産に携わり、5年ほど前にマースに来られた。国内に生産拠点をもたずに、顧客の求める製品を常に供給し続けるさまざまな工夫をしておられる。

『RightScoresTM ロジスティクスパフォーマンス、コスト、バリュー指標』
  2011年2月17日午後

E.H.フレーゼル氏 ロジスティクス・リソーシズインターナショナル社長、 ジョージア工科大学サプライ
                                       チェーンロジスティクス研究所創立者

 フレーゼル氏は1988年に初めて日本を訪問した。日本のロジスティクスシステムとアメリカのロジスティクスシステムの比較が目的だった。今回の講演では、博士はまずメトリックス(指標)について触れた。企業の中で問題が起こると、それに対する指標を作成し、問題解決の努力をする。しかし正しい指標のバランスがとれていないと新しい問題が発生し、また指標を測定して解決を図ることになる。その繰り返しが延々と続くのだ。サプライチェーンでもそのことがいえる。工場から輸配送、倉庫、輸配送、顧客へ向かうチェーンの中で、メトリックスを間違えるとガタガタになってしまう。バランスの取れた指標とはどんなものか、そのことが大切なのだ。フレーゼル氏は講演の後半で、たとえばメトリックスはどのような特性を持つべきかを論じた。聴衆とのインターラクティブな講演の中で、メトリックスはまずSimpleであるべきだという。さらには包括的、それをサポートするデータがあること、バランスがとれていることなどを挙げられた。さらにTarget(目指すもの)、プロセス、プレゼンテーションについても、それぞれに特性について考えた。あえて一つの指標をあげるとしたら「トータルサプライチェーンコスト/パーフェクトオーダー」だといわれた。
 フレーゼル氏は、ジョージア工大でときおり教鞭をとっておられる。アメリカのロジスティクスを引っ張る第一人者である。

『ニチレイフーズのロジスティクス』  2011年1月20日午前

花澤 義剛氏(株式会社ニチレイフーズ ロジスティクス部 部長)
高橋 一成氏(同 ロジスティクス部 物流開発グループ 企画チームリーダー)

 ニチレイフーズの創設は1942年の帝国水産統制株式会社にはじまる。1985年にニチレイの商号になった。ニチレイフーズはニチレイ持株会社のグループ企業の一つで、グループ企業の中にはニチレイフーズのほかにニチレイロジグループがある。冷凍食品、冷凍野菜、レトルト食品をはじめ、冷凍食品が売上げの93%、ほか常温食品もある。最近は海外からの製品輸入も大きな割合を占めるようになった。ニチレイフーズのロジスティクス部は営業本部、生産本部、商品本部にならんで企業の柱となっている。冷食商品を日本全国に届けるために日本を7つの領域にわけ、それぞれに配送拠点を置いている。そして一部地域では他メーカーとの共同配送もある。「物流は共同で、競争は店頭で」というスローガンなのだ。物流コストは販売物流に限ると年間90億円程度になる。今後の物流課題としては製品調達物流の可視化、原材料物流の可視化、物流品質の向上など、営業収益の向上や資本効率の向上を目的に更なる活動を深めている。
 講演はお二人の講演者で行われた。質問に応じてご専門の中で回答いただき、的確な応答をされた。JTやマルハニチロといった競合企業とともに日本の冷食産業をリードする。質疑応答も盛んだった。

『ヤクルトグループの物流』  2011年1月20日午後

齋藤 清之氏 株式会社ヤクルト本社 物流統括部 部長

 ヤクルトは創業75周年を迎える。京都帝国大学の代田実博士が微生物の研究中に健腸作用のある乳酸菌を発見したのが始まりで、昭和10年に事業化された。ヤクルト本社ではヤクルトなどの乳製品のほか、食品、化粧品、医薬品を製造販売している。ヤクルト本社は製品の製造、地域主要拠点のDCの管理運営をし、それらは販売会社に渡る。販売会社に置かれた製品はさらにスーパー、小売店、自販機、それにヤクルトレディー(乳酸飲料)、ヤクルトビューティー(化粧品)へと渡っていく。われわれに馴染みの深いヤクルトレディーは各人が個人事業主で、各人が販売会社から商品を仕入れて、販売しているわけだ。ヤクルトは海外でも販売され、毎日の販売数は3000万本にのぼり(内国内が1000万本、海外が2000万本)、海外売上げが増える傾向にある。
 現在の物流網は共同配送センターを通して行われている。本社工場で作られた製品は共配センターに納入される。そこが本社と販売会社の商品受け渡しの接点になっている。共配センターからヤクルトレディーのいるYLセンターへと運ばれる。共配センターは物流子会社が管理会社となり、実行部隊を外部専門業者にアウトソースする仕組みをとっている。共配センターの導入により発注方法の簡素化、発注ロットの緩和、注文リードタイムの短縮など、さまざまなメリットが確認されている。
 誰もが知っているヤクルトの販売がどのような物流ネットワークを経由して行われているのか、関心を抱く方々は多いと思う。実際にお話を伺ってみると実にシンプルな形態で、全国5箇所におかれる共配センターの役割をよく理解できた。

『物流ABC(Activity-Based Costing)で企業物流はどう変わるか』
  2010年12月16日午前

内田 明美子氏 株式会社湯浅コンサルティング コンサルタント

 内田氏は2004年に日通総研から湯浅コンサルティングへ移られた。ご専門の一つにABC(活動別原価計算)がある。講演ではABCがどのように作業改善に役立つか、ABCが採算管理にどう役立つかに焦点をあててお話しくださった。つまり、この2つの改善に役立つのがABCである。講演では物流ABCの計算メカニズムと、その結果が企業物流の中でどう役立つかの順番で話しが進んだ。興味深い話は、ABCは「アクティビティー単価×処理量」で活動のコストを把握することにある。物流の担当者には処理量を管理することは難しい(顧客の意向で決まる)ので、単価の切り下げ(アクティビティー単価の切り下げ)に焦点をあてるべきである。ABCの利用範囲として、作業時間を計画して人員を配置したり、時間帯別の稼動状況を分析したり、処理量にあわせて勤務時間のシフトを改善したりと、さまざまな応用例を紹介された。さらに大きなインパクトとして、たとえば、採算を考えない顧客サービスを改めることもできる。
 内田氏の話は歯切れがよい。その明確な論理だった解説は市販の月刊誌の中でも拝見することができる。ABCはCost accounting(原価計算)であるから、コストに関心のある方々はぜひとも内田氏のABCの話を一度検討してみていただきたい。

『中国物流ソリューションの最新事情 ~基本から応用~』 2010年12月16日午後

呉 群氏 株式会社アルプス物流 事業推進部 海外支援課 マネージャー

 呉氏は早大アジア太平洋研究科で戦略の勉強をされ、現在はアルプス物流の海外支援課におられる。北京出身で中国物流に詳しい。講演ではまず中国物流の難しさを指摘された。規制が多く、法律がよく変わる、地域・人によって解釈が変わる。保税物流制度があり、国内物流なのに輸出入手続きが必要となる。また外貨送金や外貨入金が難しいなど物流と商流の問に課題がある。保税というのは税を保留するという意味である。税というのは関税(日本は輸入関税、中国は輸出関税)、増値税(付加価値税、消費税のようなもの)をさす。中国は1978年の改革開放以来、経済の建て直しのために経済拠点がスタートした。外国資本の誘致のために関税率を高く国内産業を保護する必要があった。そして海外企業誘致のために保税制度を構築したのだ。物流業務の円滑な発展のために保税区が設立された。その後経済の発展とともに海外製造業が進出し、輸出加工区、物流園区、保税港区、総合保税区が出てきた。それぞれに役割が異なるのだが、将来的には保税港区と総合保税区に集約されるかもしれないと呉氏は言う。
 呉氏はきわめて流暢な日本語で、ポイントを的確に指摘された。何となく中国物流を理解してきた人にとって、中国物流の履歴と課題を押さえるのに大変有意義な講演だった。中国物流の背景にはそれなりの中国の事情があり、更なる発展を目指している。その話を中国物流に詳しい方から伺うのは非常に勉強になった。

『財務・サービスパフォーマンスを最大化するロジスティクス戦略の構築』
 2010年11月18日午前

松川 公司氏 三菱化学エンジニアリング株式会社 生産・ロジスティクス事業部 次長

 講演はE.H.フレーゼル氏のToolや理論にもとづいたロジスティクスモデルの紹介である。フレーゼル氏は米国ジョージア工大ロジスティクス研究所の創設者で、独特の理論を展開している。彼の理論は体系だっており、世界的に成功事例が多い。また意思決定ツールとして、理論をモデル化し、そのモデルを松川氏の所属する三菱化学エンジニアリングとのコラボで構築してきた。見える化のモデルとしてモデルの使い道は幅広い。従来から見える化は数値化指標の設定が適切でなかったり、全体最適志向に欠けるところがあった。講演で紹介されたモデルは、いくつかのパラメターの設定で、そこから派生するさまざまな評価指標の動きが一目瞭然に分かる優れものだ。
 講演の随所にフレーゼル理論があらわれ、それをどのように活用したかの論理が明確に示された。それだけにモデルの位置づけが聞く人たちに素直に理解できるような気がした。ロジスティクス活動の見える化を課題にしている企業には 是非一度検討いただきたいロジスティクスモデルである。

『SCOR10.0の概要と進化のトレンド』 2010年11月18日午後

三枝 利彰氏 株式会社日本ビジネスクリエイト コンサルティング統括本部
                                           ディレクターコンサルタント

 SCORはSupply Chain Operations Reference Modelの略称で、サプライチェーンのプロセス参照モデルである。SCORという名称は良く知られているが、SCORの内容までは把握していないという会員企業が多かった。企業がみずからの最適サプライチェーンを設計するときに、SCORは様々な面で支援してくれる。設計図の示し方から評価指標、ベンチマーキングの情報など、一種の辞書のような役割を果たしてくれるのだ。設計図といっても、企業がどの程度詳細なものを作りたいかによって、その書き方が異なるはずである。SCORもそれに対応して、レベル設定がほどこされている。それぞれのレベルに応じた詳細情報が用意されているのである。もちろん、この辞書を使うためにはSCC(Supply Chain Council)とよばれる協会の会員にならなければならない。世界で300社、日本で60社ほどが加盟している。
 講演では、その基本的な概念と事例が示され、SCORの使い方も合わせて紹介された。最近のロジスティクスの潮流として「人」が扱われるように、SCORにおいても直近のバージョンアップでPeopleを取り入れている。さまざまな応用展開を含めて、それらをxCORとよんでいる。サプライチェーンの設計や評価に関心のある企業にとっては、是非のその概念に一度触れて欲しいと感じた。

『M&A拡大型フォワーダー企業における業務標準化と物流情報システムの導入 -国際航空貨物企業の事業拡大のために-』 2010年10月28日午前

三原 康司氏 株式会社ミナージュ 代表取締役

 三原氏は1985年にソニーへ入社し、約20年にわたり業務システム設計や商品開発マネジメントの仕事をしてこられた。その中で物流が重要な位置を占めることを認識したという。2007年に三原氏は業務システム設計コンサルティング会社を設立し、生産・物流関連のコンサルティングを行っている。
 この日の講演では、顧客の一つであるJ社の業務標準化と物流情報システム導入を取り上げ、その課題を論じた。概略は次の通りである。J社は東南アジアの5カ国5拠点(J社を含む)で航空貨物輸送をしている。目的は各国の顧客満足度の向上であり、そのためにグループ全体の業務標準化をはかることが必要であった。講演では、業務標準化の実現のための手順を述べられ、合わせてそこで直面した難しい課題について言及された。講演の結論としては、システムの統合にあたって各拠点の全員に参加を求めて設計実施をしていくこと、各拠点に必要最低限の標準化を求めることなどを挙げられた。
 三原氏の講演は実際に彼が体験した業務についてであり、それだけにさまざまな課題に取り組んだ苦労話には迫力があった。

『経営とSCM』 2010年10月28日午後

松本 忠雄氏 多摩大学大学院経営情報学研究科 教授

 松本氏は2003年にネオロジ共同研究会で講演をいただいた経緯がある。そのときの講演では、花王の在庫管理(特に需要予測)の精度が極めてよいことをお話しいただいた。その後松本氏は花王を離れ、現在は多摩大学大学院で教鞭をとられている。
 今回の講演では、企業経営における意思決定にSCMが深くかかわっていることを強調された。「SCMは一筋縄ではいかない」という。対象となる物資の特性によって対応がまったく異なってくるのだ。その事例をいくつかの事例で示された。物資の製品単価と物流費単価との関係、日雑品の年間出荷額の図を見て販売方法の見直しを主張された点は大変興味深い。
 現在は膨大な実績と計画データが入手できるようになり、問題はそれらのデータの使い方であるという。上手に使えばターゲットは経営全体に及ぶ。つまりデータの使い方が企業の差別化要因になるというのだ。
 講演において松本氏は、実データにもとづいたものの見方、特にSCMのあり方を強調された。物流に深くかかわった松本氏の話は、ネオロジ会員にSCMのあり方を考えさせる機会を下さったと思う。

『産業資材のインターネット通販への取り組み』 2010年9月16日午前

瀬戸 欣哉氏 株式会社MonotaRO 代表執行役社長

 MonotaROは尼崎にある会社で、産業用間接資材のネット販売をしている。会社のネーミングは3通りの解釈がある。モノが足りる、Maintenance-Repair-OperationでMROがアルファベットの大文字になっている、そして流通の鬼退治(まさに桃太郎)という3つである。
 会社は2000年10月に創立したが、実際に営業を開始したのは翌年の11月である。商品点数は100万点、うち5万点が在庫商品である。顧客登録は50万口座で、あくまでも事業所が顧客となっている。その多くは製造業を中心とする中小企業である。顧客登録は毎月一万口座程度の増加率だという。開始当時は生産関連の商品を扱っていたが、2008年に金物卸が倒産し、その企業の在庫を買って産業用資材全般を扱うようになった。したがって、現在では作業工具、切削工具、測定工具、搬送機器、作業服、作業手袋、油圧機器、梱包用品、ねじ・ボルト、潤滑剤、塗装用品などを販売している。通販がホームセンターと大きく異なるのは、ロングテール商品を扱えること、全国販売、広い幅のユーザー対象、顧客の購買が短い時間で終わること、現場への納入が可能なことなどがあげられる。将来的には、ホームセンターとインターネット通販の融合をも視野にいれているように伺えた。
 瀬戸氏の話し方は単刀直入で、その仕組みを明確に説明くださった。逆にいえば、ネット通販の特色は業務構造の単純化にメリットがありそうな気がする。

『住宅産業におけるロジスティックス』 2010年9月16日午後

本多 正幸氏 大和ハウス工業株式会社 岡山工場長
尾崎 学 氏  同、生産購買本部 生産部生産企画グループ 主任技術者

 講演は岡山工場長の本多氏と、大和ハウス工業本社の尾崎氏のお二人によっておこなわれた。
 本多氏は岡山工場の現況について語られた。大和ハウス工業は74社のグループ企業で、住宅事業、建築事業、集合住宅、マンション、流通倉庫を扱う価値創造企業である。岡山工場は甲子園11個分という広大な土地に、1997年10月に操業を開始している。当初は全国工場への部材配送センターとしての拠点であったが、2007年7月より四国工場と統合して現在の岡山工場になっている。屋根パネル、外壁パネル、梁、床パネル、天井パネルなど1100点の部材を生産している。必要なものを、必要なときに、必要なだけ生産出荷することを目指している。工場内では、他部門(営業、設計、仕切り、施工など)と生産部門との情報・業務の流れについて、全体最適を図る試みがなされている。また工場の生産リードタイム(生産決定日から実際の出荷日までの時間)を短縮する努力がなされている。努力目標として現在63日の工期を3割削減する夢を語られた。
 その他の講演内容として、尾崎氏から大和ハウス工業の調達物流、販売物流、静脈物流をカバーしていだいた。特に、静脈物流に関しては、2005年より住宅系新築現場および工場にて、ゼロエミッションを維持・継続している、そして現在、CO2の(2007年度比)16%削減を目指している。住宅産業のリーダーとしてきわめて積極的に改善を進められている様子が講演を通して伝わってきた。

『中古書籍の物流戦略について』 2010年7月15日午前

高橋 淳氏 ブックオフロジスティクス株式会社 代表取締役

 ブックオフは新古書店とよばれている。街中で一般書店が廃業する中で、郊外に新古書店が誕生している様は、出版不況の中でiPadが人々の関心を集めている様子に似ている。作られて流行だという人もいる。伝統的な出版のSCMはどちらかといえば苦悩に満ちた様相であるが、新古書店やiPadには何か新しい要因があるようだ。われわれが書籍を購入するときには、目的をもって書店へ足を運ぶ人もいるが、同じようなに衝動買いで書店に出かける人も多いことも納得できる。だからこそ新古書店が成立するのだ。高橋氏はその新古書店のビジネスモデルについて語られた。
ブックオフの販売価格は定価の半額か105円、それから書籍の分類も10のカテゴリーしかない。ブックオフの100%子会社であるブックオフロジスティクスは相模原に配送センターを構え、300の直営店で買い取った書籍を10のカテゴリーに分けて箱詰めしている。そして要請があれば、その箱を直営店へ送り込む仕組みになっている。ブックオフには直営店のほかに600の加盟店があって、そこは自給自足の運営(つまり自分で本を買い取り、販売する)している。出版業界には再販制度があり、定価販売が維持されている点が、ブックオフにとっては大きな支えになっている。本の価値がそれによって規定されるので、ブックオフを本の定価設定に大きな努力を注ぐ必要がないのである。
 高橋氏によれば、ブックオフは衣料品や雑貨をも扱い始めたという。ただし、それらには本のように定価がないので、目利きの人が値段を決定する必要がでてくる。これからの分野として注目される。中古本の販売には複雑なSCMを思い浮かべがちであるが、高橋氏の講演を聞く限り全体的にアバウトな印象をうけた。しかしそのアバウトさを巧みに手加減することによって、見事なビジネスモデルを作り上げたユニークなビジネス展開になっている。

『SCM改革と現場の日常管理』 2010年7月15日午後

小澤 幸雄氏 株式会社リコー SCM推進室 エグゼクティブスペシャリスト

 SCM改革の一例として、月次生産販売から週時生版への移行を紹介いただいた。多品種の部品調達を小ロット化し、プロセス改善をはかることにより、キャッシュフローの創出に貢献した。月次生販だとどうしても販売計画があたらないのだ。生産では度重なる変更があり、販売への不信感が増大した。また販売では売れ行きの変化に即座に対応できない生産体制に不信感が増すといった具合である。そこでリコーでは企業の全部門を巻き込んでの改革がはじまった。
 御殿場事業所では改善活動が盛んで、少品種多量生産から多品種少量生産、変種変量生産を経て、個別仕様生産へと変貌してきた。また年度別の廃棄物発生量もリードタイムの短縮を図ることにより、これまでのダンボール梱包からフレームで製品を囲む梱包へと変化してきた。
 小澤氏は昨年3月まで長い期間生産分野に携わり、SCM推進室にはそのあとに移ってほぼ1年4ヶ月ほどの経験をされてきたところだ。SCMへ移られて会社全体を見渡せるようになったという印象を述べておられた。

『搬送機器の管理意識向上』 2010年6月17日午前

鈴木 徹氏 株式会社紀文産業 資材部 マネージャー

 紀文グループは紀文食品、紀文フレッシュシステム、紀文産業、紀文本店などが強い絆で結ばれている。講演者の鈴木氏がマネージャーを務める紀文産業資材部は食品および調達分野を取り扱う商社として、国内外での独自の仕入れ・販売チャネルを構築し、お客様へサービスを提供することを目的としている。今回の講演では、搬送機器の管理の問題について触れた。現状の問題点は、物流品質の悪化(誤配、破損、遅配が毎日のように発生)、運用資産の増加(カゴ台車だけで年間6400万円のリース残)であった。この問題点の理解を助けるために、平和島センターの事例を説明された。
 課題解決のために、バーコードでなくてRFIDの技術を導入する試みがなされた。カゴ台車のどこにRFIDを取り付けたか、周辺設備、GPSの装着など現場の写真を示しながら説明された。結果としてカゴ台車の紛失はゼロになり、誤配、破損、遅配は激減した。カゴ台車の棚卸時間も一時間以内で完了するようになった。つまり管理体制が整備されたのである。
 カゴ台車の管理が整備されると、そこに搭載される商品と紐付けすることによって、商品管理も可能になる。カゴ台車管理の取組みが紀文SCM構築の大きな基盤となり、更なる高度化になりそうだ。鈴木氏は、カゴ台車の管理体制の確立にここ数年力を尽くしてきた。生鮮食品関係のカゴ台車管理は、日雑品のカゴ台車とは衛生管理の面で大きく異なるという。そうした課題を解決しながらカゴ台車管理の基準を確立していくと、多くの類似企業へこのシステムが利用されていきそうだ。

『ビッグウォレット戦略と割勘モデル』 2010年6月17日午後

古谷 文太氏 株式会社百家堂 代表取締役社長

 古谷氏は早稲田大学卒業後、12年間建設会社で働き、その後コカ・コーラグループに移られた。今回の講演ではコカ・コーラ時代の経験にもとづき、当時のコカ・コーラのSCMの特色を説明された。10年ほど前、消費者の嗜好の多様化や流通の変化にともない、地域分業体制のデメリットが目立つようになった。そこで12のボトリングカンパニーは各企業の独立を保ちながら、資本の枠を超えて協業することになった。その結果、4年間で1000億円を超えるコスト削減効果を生んだ。つまり協業会社は機能統合をはかり、サプライヤーとの交渉優位を利用して大きなコスト削減に結びつけたのだ。課題はそこで得たメリットをボトリングカンパニーの間でどう分配するかである。獲得した利益を活動に参加した企業が公平に配分する問題は割勘問題とよばれている。割勘問題にはたくさんの配分例が考えられ、意思決定のためには参加する企業相互の納得のもとに、最適案を決定する必要がある。古谷氏はその時の苦労話を語られた。
 協業企業は一つの大きなビッグポケットをもち、そこで得られた利益をボトリングカンパニーの小さなポケットに還元するわけであるが、その還元の基準が割勘計算になる。古谷氏はこれをビッグ・ウォレット戦略と称している。その成功要因を5つ挙げられた。その詳細は、彼の著書『コカ・コーラに学ぶビッグ・ウォレット戦略』に記載されている。現在、その協業企業は日本のコカ・コーラのSCMから消失してしまった。なぜ消失してしまったのかの理由も講演の中で述べておられる(彼の著書の中にも記述されている)。
 古谷氏の語り口は穏やかで分かりやすい。現実の場では相当な議論が交わされたのであろうが、講演の中ではその結果として得られた結論を淡々と語られた。協業の難しさを肌で感じることができた。

『 「ニトリ」=「製造物流小売業」 』 2010年5月20日午前

講演者  長 達也氏 株式会社ニトリ 物流部 運輸マネージャー
パネラー 鈴木 弘一氏 株式会社ランドキャリー 専務取締役
       清遠 太喜氏 トナン輸送株式会社 常務取締役
       丹野 健氏  株式会社しんけん 代表取締役
       松岡 弘晃氏 富士運輸株式会社 代表取締役

 ニトリの長氏は、3年前までは港湾の仕事をしておられ、そのあとニトリへ転勤された。ご講演は長氏の発案で、物流パートナーの4名の方々にもパネラーとしてご参加いただいた。長氏はニトリの物流を語るにはニトリの人間ではなく、普段から物流の協力を仰いでいる物流パートナーに語っていただく方が、聴衆のみなさんに信じていただけるというのである。ニトリは毎年春に物流コンペティション説明会を開き、ニトリとの取引を希望する物流業者に物流条件を説明するとともに、入札をおこなっている。今回ご参加いただいたパートナー4名の会社は過去2年間、ニトリとの取引を続けてきた信用企業(ニトリの呼称)である。物流業者への委託業務はCBMエリア渡しで行われている。CBMは立米のことで商品のm3(容積)で決定される。依頼の荷物情報は荷主から業者へ事前情報が開示され、それをいかに輸送するかは業者の裁量にまかされている。その中で特に業者にとって難しいのは3月の需要のピークにいかに対処するかである。通常期の2倍近くの需要量がこの時期に集中する。
 今回の講演は、長氏がニトリのロジスティクス概略を説明されたあとで、すぐに質疑応答に入った。参加者とパネラー、講演者の質疑応答の中で次第に問題点、課題が明らかになり、参加者にとっても理解が深まるというユニークなプレゼンテーションであった。

『移動発注点方式を活用した自動発注の概要と活用事例』 2010年5月20日午後

関口 寿一氏 シーコムス株式会社 代表取締役

 関口氏は「不定期不定量自動発注在庫モデル」の発案者である。彼に言わせると決して不定期不定量モデルを作ろうという意図があったわけではなく、自らが構築したモデルが人からそうよばれているにすぎないという。関口氏は始めに在庫管理の必要性を論じ、在庫管理業務の中にはあまり人が介在しない方がよいという。5時から業務で、その日の在庫を調べて発注量を決定する作業に明け暮れたという人がいた。彼にとっては それは苦痛にほかならず、それよりは在庫管理はモデルに任せて、人は在庫管理本来の仕事に専念して欲しいと関口氏は願っている。自動発注モデルの用件として、モデルが取引条件(商品ごとのリードタイム、納品ロットや発注条件)に対応できる仕組みであること、売れ行きの変化に対応できることが挙げられる。
 関口氏はライオン在籍時にこのモデルを作り、現在は独立してライオン時代とは構造的に進化したAILS(アイルス)とよばれる自動発注モデルを完成した。ただ現在もモデルの改修をおこなっている。現在は加工食品・日雑の在庫管理に利用され、将来的には生産をも加味した部品管理にも手を広げていきたいという。

『国際アントレプレヌールシップと倫理教育』 2010年4月15日午前

東出 浩教氏 早稲田大学大学院商学研究科 教授、WBS研究センター 所長

 東出教授は、まずBorn-global Phenomenaという用語を示された。Born-globalというのは「生まれながらにしてグローバル」という意味である。新技術をもとに新しいビジネスを立ち上げたり、ベストな原材料を世界からかき集めて商品を作り、それを世界で売る。そのような作り方やサービスの提供が一般的になりつつある。一例をあげるとオーストラリアにコクリアという企業がある。この会社は体に埋め込むタイプの補聴器を作り、世界を市場に年商500~600億円の販売をしているが、オーストラリアでのシェアーはわずか5%にすぎない。アメリカ、ヨーロッパそしてアジアに市場を求めているのだ。
 Globalという用語は1990年代初頭の用語であるが、残念ながら日本はそれを無視してきたような気がする。このような世界にまたがるビジネスは、世界中で競争を展開するので、距離感がなくなってしまう(Death of distance)ということになる。そうしたビジネスの必要条件として、差別化、製品の質が高いこと、ユニークであることなどの用件が挙げられた。このようなBorn-global企業を育てるにはどのような人材教育が必要なのだろうか。
 東出氏は、こうした問題に加えて倫理教育のあり方についても触れた。今回の講演は企業の経営者に何か勇気のようなものを与えてくれる気がした。どこの企業もグローバルな展開を視野に入れながら海外展開を図ってはいるが、なかなか積極的に打って出られない。起業を考える企業の気持ちの持ち方、努力の程度、他人の意見を聞くべきか、見通しのつかないことへの挑戦をすべきかなど、多くの疑問がわく。そんな課題への統計資料も示された。

『変化をマネジメントに向けて「現場力を戦略へ」-現場主義の新たな視点
“気づき”を生み出すIT(FOAⅡ:日本流ものづくりコンセプト)』 2010年4月15日午後

奥 雅春氏 東京大学ものづくり経営研究センター 特任研究員、玉川大学 客員教授、元ブリヂストン

 奥氏は、ブリヂストンの顧問を務めるかたわら、玉川大学で教鞭をとっておられる。今回の講演ではFOA(Flow oriented Architecture)の概念を中心に講演された。日本では現物現場主義(経営者が積極的に現場に向かいあうこと)がとられてきたが、グローバル化が進むとそれが難しくなってきている。そうした背景の中で、現場の組織知をいかにグローバルに共有するかを考えるようになった。そこで、現場の有用な情報を文字情報として記録することに着目した。現場における出来事(これをイベントとよんでいる)、たとえば製品が完成する、事故が起きる、不良品が出るというような事象をもとに、メッセージを発信する。そのメッセージをフローとして流し、ストックしない形でIT活用を図るというのがFOAの基本概念である。その情報を必要とする人が情報の流れの中から必要な情報を蓄えればいいのである。それが人々に「気づき」を与えてくれるのだ。さらにその「気づき」から業務改善につながっていく経営サイクルができあがる。FOAはこのような業務改善・改革サイクルの牽引力を提供する機能がある。
 奥氏の講演は大変興味深いものがあり、新しい情報システムのあり方を説明してくださったような気がした。ただ奥氏によれば、このような考え方はcomputingの世界では以前から存在していたといわれる。人間の脳の働きも決してすべての情報を蓄えることはしていない。自分にとって必要な情報をだけを取り込んでいるのである。すべての情報を蓄え、そこからデータマイニング(情報検索)を行うやり方とはまったく相対する考え方である。

『工場レイアウトの設計・評価におけるシミュレーションの活用』 2010年3月10日午前

伊呂原 隆氏 上智大学理工学部情報理工学科 准教授

 伊呂原氏は、まず典型的なレイアウト分析手法であるDI(Distance, Intensity)分析を示された。レイアウトを構成する部門間の距離と流れの強度(部門間を移動する製品の流れの多さを表すので、物流強度といってよい)を評価尺度にする方法である。横軸に距離を縦軸に強度をとって部門間の位置づけをすれば、直感的にどの部門を近づけて配置すればよいかが分かるのである。近年のレイアウト研究では、その評価尺度がDIから生産効率(リードタイムの最小化、仕掛在庫量の最小化、あるいはスループットの最大化)へと変わってきた。そのためにはシミュレーションが必要である。いくつかのケースを何度も繰返し計算して最適解を探しだす。その中で待ち行列理論で使われるリトルの公式が飛び出した。システム内の在庫と平均リードタイムの間にはリトルの公式が成り立つのだ。
 伊呂原氏は、この後2つの事例を示された。一つは印刷工場の例、もう一つは製薬会社の例である。それぞれの工場から提供いただいたデータをもとに工場稼動状況を変化させると、評価値にどのような影響を与えるかをシミュレーションによって検証することができる。工場は既存のものであるから、シミュレーションによってよりよい解答が得られたからといって、その工場のレイアウトを変えることは難しい。しかし、シミュレーションによってあるべきレイアウトの検討ができるようになるという特色がある。
 最適化問題を、聞き手の直感的理解が可能なように説明くださり、大変興味深い。ネオロジでは珍しい理論的アプローチによる工場レイアウトの手法をまなぶことができた。

『日揮のロジスティックス』 2010年3月10日午後

笹山 孝夫氏 日揮株式会社 調達部 ロジスティックスチーム

 日揮のような業務をおこなう会社はEPC(Engineering, Procurement, Construction)コントラクターとよばれる。石油化学関連のプロジェクト受注が多いが、その一つひとつが2000億円、3000億円、ときによっては数兆円規模のプロジェクトになることがあるという。プラントエンジニアリングの輸送はミリタリーの輸送に近いと言われている。自らは輸送手段を所有せず、必要に応じ必要な輸送手段を確保し、常に撤退を前提にしている。プラント建設資材を調達先から目的地まで、安全にスケジュール通りに、競争力のあるコストで運ばなければならない。目的地の港まではうまく運べても、そのあと道路がなかったり、橋の強度が足りずに、そのインフラを補強することも仕事に一部になる。現地ではサブコントラクターを手配して施設を建設したり、輸送をはたさなければならない。一つのプロジェクトについての調達国は20数カ国になる。従って、日揮の調達部(ロジスティクス業務をつかさどる部門)は44名のスタッフがおり、そのうち日本人は18名にすぎない。あとはフィリピン、インドネシアをはじめ外人勢がしめている。
 笹山氏は、輸送手段のいくつの例を写真で示された。何百トンもの機材を吊るすクレーンを備えたHeavy船、Roro船、Barge, 港のないところでも資材を運べるLanding craftなどがある。プロジェクトは次第に大型化し、リモート化している。大型化に対しては海外子会社を最大限活用し、またリモート化では現地でのフルオペレーション体制を構築している。
 設計、調達、建設を武器に、そのノウハウを使いながらプラント建設をすすめていく姿は、日ごろネオロジで見聞するロジの話とは全く異なっていた。規模もそうだが、調達の段階で船の予約をしたり、建設が過酷な環境に向かって仕事を進めていくバイタリティーがすばらしい。

『ミツカングループのロジスティクス』 2010年2月18日午前

中村 信吾氏 株式会社ミツカンロジテック 代表取締役社長

 講演者の中村氏は株式会社ミツカンに入社以来、生産、原価管理、企画部門などを経て現在はロジスティクス部門(ミツカンロジテック)の社長をしておられる。ミツカンの社会的使命(スローガン)は「やがて、いのちに変わるもの」である。ミツカンロジテックはミツカングループの物流企画、物流管理、現場業務(物流、受注)を担当し、ドライ(加工食品)・チルド(納豆)・冷凍品を扱っている。調達および需給調整機能は有していない。ドライ食品に関しては、その拠点を生産工場と同じ敷地内に配置している。そのほか北日本には委託先のセンターを2箇所配置している。チルド食品は全国8箇所に配送センターを配置している。またS研と称し、同業3社で共同配送を実施している。S研による共配は 24道県 面積で全国の約68%をカバーしている。ミツカンロジテックは品質への取組みを重んじ、誤納品、在庫差異、庫内破損の3項目を、物流における「安全、品質」の代表的項目としている。その他、その数値進捗を数値化して、他項目(運賃、パレット管理)とあわせ、物流コンクールを実施し品質向上を目指している。
 ミツカンのロジスティックス活動をシンプルに構築しており、聞き手にとってその仕組みを理解するのはそれほど難しくなかった。かなりの検討を加えてシステム構築をしておられる感じがした。愛知県の半田市に本社をおき、その製品は全国に販売されている。一つの家庭に平均12アイテムのミツカン製品があるといわれている。

『物流現場力と経営戦略 -その整合と連携による競争力向上』
 2010年2月18日午後

高橋 輝男氏 早稲田大学 名誉教授、ネオ・ロジスティクス共同研究会 最高顧問

 「現場力」という用語を最近よく耳にする。高橋氏ははじめに現場力の解釈が数多くあることを指摘した。講演では「現場力とは、第一線の作業者が本来の仕事をするだけでなく、解決すべき問題を発見し、改善していく組織力である」と定義している。そして一つの例として自律分散システムを取り上げた。自律性をもった個がいくつか集まり、相互に共振し、全体としての秩序を築き成長していく。ただ、そうしたシステムが勝手に自己増殖しても困る。企業陣は戦略という枠組みを作り、システム化をはかっていく。つまり企業における戦略の枠組み作りは設計的であり、現場における活動は自律をベースとした誘発的な活動である。設計的な領域と誘発的な領域が交わり、ここにせめぎ合いの領域が形成される。現場力が強いと、せめぎ合いの領域は下の方に押しやられる。逆に強いと上方に移動し、経営と社会とを関連づける社会的使命を定めることにも現場力が力をもつようになる。高橋氏は社会的使命を求める機能展開を示した。上位の機能を選ぶと、それに対応するシステムは将来のビジネスモデルとなる。またさらに上位の機能には、そのグループの社会的使命が示されるという。
 高橋氏の講演は、現場力向上と経営戦略の整合性を論じたものである。現場力が強くなると次第にマネジメントと統合して新しい秩序を生み出していくかもしれない。自律したマネジメントグループのようなものができる可能性がある。現場力の考え方は伝統的な組織論の枠を壊して、新しい組織論を生むとしている。

『小売業専用センターの実態とセンターフィー問題』 2010年1月21日午前

寺嶋 正尚氏 産業能率大学経営学部 講師、財団法人流通経済研究所 客員研究員

 寺嶋氏はセンターフィー問題の意味と課題について語った。センターフィーの存在は、日本の商習慣で商品が生産者価格で販売されるのではなく、小売店舗受渡し価格で取引されていることに起因している。これは小売業が発案した新しいビジネスモデルとも考えることができるが、一方においては小売業の部分最適を狙った発想だという批判もある。センターフィーとは日本独特の考え方であり、欧米諸国には見られない。「欠品は絶対あってはならない」という小売業の主張があるが、寺嶋氏の小規模アンケートでは、たとえば、スーパーで買い物をしたときに欠品があった場合は、他のメーカーの品物を買うとか、同一メーカーでサイズを変更して買うほうが、欠品のために他のスーパーを訪れるケースより圧倒的に多いことがわかった。センターフィー問題の解決策として、専用センターから汎用センターへの移行、専用センターならば効率的な活用を考えるなどの案を示された。
 寺嶋氏は、センターフィーについて知識を持たない参加者にも問題点が把握できるように、平易に解説くださった。小売業が享受するJIT納入や欠品の解決に専用センターが大きく寄与するのに対して、サプライチェーンの中でのセンターの存在意義を問いかける講演だった。

『協同組合八戸総合卸センター(HOC)における物流共同化の取組事例』
2010年1月21日午後

関野 達也氏 株式会社共同物流サービス 常務取締役、共同組合八戸総合卸センター
鍵谷 真司氏 同、仙台営業所長

 関野・鍵谷両氏が所属するHOCは青森県八戸市に本社をおき、青森、岩手、秋田(そして宮城、山形の一部)を商圏とし、卸センター物流共同事業を展開している。現在はスーパーやホームセンターの物流センターとして事業を展開しているが、創立(昭和47年)当時は卸センター組合員のケース保管を中心に入出庫作業をし、やがて、共同配送事業(昭和52年)に移行していった。そして組合員の配送先が同一地域・同一店舗の場合、組合員の出荷商品を取りまとめ、共同配送をしようという試みを始めた。当初は八戸市内を中心に行われた事業であったが、やがて配送地域が青森市、弘前市まで拡大し、共同化を検討する日本の多くの物流業者や国の視察団が、八戸を訪れたといわれている(昭和60-62年)。その後は共同配送事業に参加する組合員の数も減少し、また貨物そのものも減少したため、現在はホームセンターの物流センター、食品スーパーの物流センターとして業態を変化させている。最近ではさらに新規事業への取組みにも着手し、医療施設向け食材仕分・配送、機械製造業向けJIT部品供給などの分野へも進出している。
 関野・鍵谷両氏にはそれぞれ八戸、仙台からお越しいただいた。関野氏は長年卸センターで仕事を続けてこられ、現在HOCを運営を取りまとめておられ、また鍵谷氏は物流施設を製造販売する会社からHOCに移ってこられた。HOCの企業の変遷、新しい試みなど参加者の関心を深めるようにお話しいただいた。共同物流の原点が理解でき有意義であった。

『新ビジネスモデル発想のための“閃け”ヒント集』 2009年12月17日午前

黒須 誠治氏 早稲田大学商学研究科 教授

 ビジネスモデルとは儲けの仕組みを考えることで、お客に新しい付加価値を仕えるビジネスモデルと仕事を効率化するビジネスモデルの2つに分類できる。そうしたビジネスモデルを発想するために人々はキッカケやヒントに遭遇するのを受動的に待っていたものである。たとえば異業種交流会に参加したり、成功した会社に経験談を聞いたり読んだり、お客の要求を聞いたりしていた。つまり偶然閃くのを待っていたわけである(これをセレンディビティという)。しかし閃く能力には個人差がある。そこでキッカケとなるヒントを人工的に作成したのが、黒須氏が考案した「閃けヒント集」である。
 今回の講演はそうした背景をもとにした100余りあるヒント集を次々と紹介された。たとえば既存のビジネスを組み合わせたり、融合したり、直列につなげれば新しいビジネスモデルを考えることができる。バナナの叩き売りをしたあと、宅配便でそのバナナを届けるといった仕組みである。思いついたものに出張○○、出前○○というように、出張や出前を前に付けてもアイデアがわく。たとえば、出前シュレッダー、出前動物園、移動茶室、出張トリミングといった具合だ。もちろん、黒須氏は発想した後に何をすべきかについても言及している。
 通常の講演とは違った雰囲気で、参加者に一つでも二つでも何か閃いてもらおうという趣旨で、次々をそのヒントを出していただいた。極めてユニークな講演であった。

『売れない時代の勝利の方程式;アドバンストSCM』 2009年12月17日午後

原田 啓二氏 先端ロジスティクス研究所所長、元NECロジスティクス株式会社、執行役員

 原田氏の講演はまずSCMの本質や目的といった基本事項をまとめられた。当然サプライチェーンであるから「チェーンの数」、「チェーン内の効率」、「チェーン間のリンク」がSCMの本質を構成する3つの要素となる。たとえばチェーン内の効率でいえば、トヨタ生産方式(より具体的には セル生産方式の導入やトヨタ生産方式の導入)によって作業の効率を高める活動があげられる。一般に顧客が製品を購入するときには、顧客からみた価値、すなわち『顧客価値』(基本価値、使用価値、感性価値からなる)の存在が必要になる。ところが将来に向けたこれからの企業活動には社会価値(たとえば、資源保護、環境保護、安全・安心)を考慮した製品開発活動が新潮流になるとしている。要するに、これからのビジネス戦略には顧客・社会価値のある製品開発が必要なのである。その考えにもとづいたSCMによる製品の開発・供給が原田氏の唱える「アドバンストSCM」である。従来のSCMは製品の供給を効率的に行うことが主眼であったのに対し、アドバンストSCMはSCMの構成メンバーが智恵を出し合って、新しい製品の開発を同時に行なっていくものである。
 原田氏はアドバンストSCMの事例として、セブン・イレブンの事例、株式会社ニトリの事例などを取り上げられた。売れない時代にどのようにSCM構築に取り組んでいくか、その一つの考え方を鮮明に講演の中で示していただいた。

『貿易実務とLIT』 2009年11月19日午前

御手洗 正夫氏 三井物産株式会社 物流本部 物流機能推進部 LIT室 室長

 三井物産の物流の特色として、①MLX-F(受発注・物流管理)②TMLS(貿易手続き電子化基盤)③UNITRA(固体識別物流情報基盤)をあげ、それぞれについて事例を混じえて語ってくださった。三井物産では、荷主、船会社、海貨業者、ローカル物流など複雑多岐にわたるプレーヤーの間をネットワークで結んでいる。実務は単に運ぶだけではなく、加工管理、品質管理、そして価格管理までにおよんでいる。そのネットワーク基盤として、電子的に情報を交換している。TMLSをもつがゆえに、ビジネスが成り立つ場合もあるという。③はタグの利用、情物一致のためにタグをつけるが、タグをつけることによってさまざまなことがわかったという。積荷のトレースを行うだけでなく、荷物がドロップした場合(たとえばTrans-shipment(船間の荷物の積み替え))は、荷主やお届け先にその情報をいち早く伝えて信頼を得るというケースにも応用できるという。また配送間の標準時間をあらかじめ決めておき、実際に荷物がチェッキングポイント〔リーダー〕を通過したとき、その標準時間よりも長ければ、何か問題があったと判断することができる。
 講演では、さまざまな事例をお示しいただき、大変情報量の多い講演をいただいた。早い喋り口だが一言ずつに共感を覚えた。グローバルのビジネス活動を展開する会社だけにSCMの広がりも大きく、国際間のネットワークでは予想も出来ぬ問題が生じることがあるという。グローバルロジスティクスとは何かを知る上で大変有益なお話だった。

『キユーピーのロジスティクス』 2009年11月19日午後

藤田 正美氏 キユーピー株式会社 物流管理室 室長

 調味料・加工食品事業、健康機能事業、タマゴ事業、サラダ・惣菜事業、物流システム事業を展開するのがキユーピーである。藤田氏は冒頭に、15年に渡って物流の仕事をしていて、行き着いたところが人間ロジスティクスであるとし、人づくりの大切さを強調された。会社単体で社員2600人、社員の平均年齢が36歳だ。物流担当はキユーソー流通システム(KRS)である。会社の横串を指すようにロジスティクス推進室(K-SCNという)が存在し、推進室の中には情報センター(受発注窓口)、グループ企画室、管理部がある。
 受注部門は、もともと全国6箇所にあったが、2002年に物流情報センターに集約した。しかし危機管理を目的に2008年に名古屋以西のEDI受注を開始するために西日本受注グループが設立され、全国2拠点になった。業務改善としては新鮮度管理体制の確立が図られ、管理体制は月次から日次へと変更になり、補充方式を採用し始めた。また業務間の連鎖に着目しはじめ、収益最大化を支援する活動を強化しはじめた。在庫を圧縮し収益を拡大するという考え方である。
 これからのロジスティクス活動の取り組みであるが、キユーピーの想いとして、経営貢献と旺盛な改善意欲をモチベーションエンジンとしてロジスティクス活動を展開するとしている。キユーピーが考えるロジスティクスとは需要や顧客要求とを適合させ、情報と物の流れを最も効率的にフロー化し、収益最大化を図れる経営活動であるとしている。 藤田氏はソフトな語り口で、キユーピーのロジスティクス活動について語ってくださった。その想いが若い社員に伝わるように、精力的に仕事を進めておられる様子がわかった。

『新開の流通加工~テクニカル領域の流通加工~』 2009年10月15日午前

森 和彦氏 新開株式会社 人事勤労部 教育研修センター長、早稲田大学特別研究員

 森和彦氏はネオロジ初期の頃(平成8年)から研究会に参加してこられた。森氏が所属する新開株式会社は中堅の運輸業者(従業員1750名、車両500台)で、輸送、荷役、梱包、倉庫管理、情報システム、産業廃棄物処理運搬、流通加工などを行っている。特に今回の講演では、流通加工に焦点をあててお話しいただいた。
 流通加工には生産加工(組立て、切断など)と販促加工(値札づけ、セット組など)があるが、新開の流通加工は生産加工に属する。コンピュータや精密機械企業にテクニカルなサービスを中心としてビジネス展開をはかっている。講演の中で森氏は、ITソリューション事例や通信工事物流センター事例をはじめいくつかの事例を 現場の様子を交えて話された。
 新開の特色は輸送を中心として、荷主企業の生産工程の一部をも巻き込む提案をし、それを自らの経営資源で請負っている点である。多くの3PL企業が顧客を探しだすとき、サプライチェーンの一気通貫をめざし、荷主企業のラインの一部にとび込む提携を行うのはこれからの企業戦略として大いに注目できる。

『楽天物流が展開する次世代物流戦略』 2009年10月15日午後

宮田 啓友氏 楽天株式会社 物流事業部 事業長

 楽天市場は1997年5月にスタートし、2008年末には会員数4,700万人、出店店舗数27,000社におよぶ日本最大のショッピングモールである。その店の数は毎年大きく増加している。ネットショップへの年間支出額や割合も増加しているが、それでも米国市場に比べると日本は5分の1程度の市場でしかない。まだまだ大きく進展する可能性を残した分野である。
 宮田氏はEC市場の特色を挙げられ、深夜帯の利用者が多いことを指摘された。そして「趣味・娯楽」のための利用者が多く、ネットショッピングをした人の約8割をしめている。そして今後は、衣料・スポーツ・本といった分野でのEC化がみられると予想しておられる。講演の後半で BtoBビジネスとBtoCビジネスの違いについて触れた。まず物流に関するオペレーションを比較すると、BtoCでは工程が多くかつ複雑である。商品特性についてはロングテールの品目が数多く存在する。そして配送の多くは小口である。
 宮田氏の講演は歯切れがよく、講演資料の内容が素直に頭に残る。ぜひ多くの方々に一度耳を傾けて欲しい講演であった。

『規制改革の光と影 ―運輸・貿易改革― 』 2009年9月17日午前

鈴木 英樹氏 日本郵船株式会社、現在、内閣府規制改革推進室参事

 民主党が政権交代を実現し、これからの規制改革がどのように進展するかに関心が注がれているが、いま内閣府では新任大臣の話(所見)待ちの状態だという。鈴木氏は昭和62年に日本郵船に入社し、現在はそこから内閣府の規制改革推進室へ出向している。現在の規制改革の動きは1981年第二次臨時行政調査会(通称 土光臨調)の「増税なき財政再建」に遡るという。その後1990年に第三次行革審が設置され、1993年の細川政権下で平沼研が規制緩和の提言を実施した。これが第三次臨調とよばれた。最近では「聖域なき構造改革」とよばれ、経済規制だけでなく社会規制にも踏み込んでおり、また、閣議決定を得て紙に書き残してローリングしていくというが、岩盤の様な抵抗も多く牛歩以下のスピードで進展しているという。これは、規制で守ってくれた方が競争のない社会が実現して楽な人たちもいるということである。したがって、規制改革は最終的に一部の既得権者でなく、より多くのお客に国民・消費者にどういうどれだけのメリットが与えられるかが重要である。
 現在は規制改革会議委員会メンバーが15名(そのうち3分の1程度が女性委員)、その席で厳しい意見がでることもある。委員の方から各規制省庁に「資料をだしてくれ」と要請してもいわれても、「資料はない」と返答があるとそれで話が進まなくなってしまう終わりになるケースもが多いという。その委員会をサポートするのが規制改革推進室で、現在34名そのうち3分の2を民間出向者人が勤めている。
 鈴木氏は自分の経験を通していくつかの規制改革の課題を語られた。その一つに無謬(むびゅう)性がある。人間が間違い起こす誤謬性と違って、お役人の議論には無謬性が前提になっているという。これが硬直性を捲き起こす原因になっているとした。このほかにも鈴木氏はいくつかの課題を述べられた。普段はあまり拝聴できない霞ヶ関と永田町がらみの問題について、実際にその場の仕事に携わっている方からの直接の話にはインパクトがある。新しい政権になり、規制改革がこれからどのように進むかについて、鈴木氏の話を聞いたあと一層関心が深まった。

『富士運輸の事業戦略』 2009年9月17日午後

松岡 弘晃氏 富士運輸株式会社 代表取締役社長

 松岡氏は先代の運送業を継いだ二代目社長である。それまでトラック会社でセールスマンをしていたが、10年前に奈良に戻り運送業を始めた。当時の会社トラックの保有台数は27~8台、それを現在は480台(10トン車370台、4トン車95台、2トン車15台)にした。これらはいずれも自社保有車である。また10年間に30人の従業員が530人に増えた。奈良という大企業の少ない地域に企業拡大を実現した松岡社長は、まず従業員を第一優先に考える事業展開をしてきた。
 小さなボートは荒波にもまれると転覆するが、大型漁船はある程度の波をもろともせずに前進できる。会社も始めは「拡大路線を目指す」というのが彼の基本的姿勢である。そうした考えのもとで、松岡氏は郵便輸送、エアカーゴ、大手路線庸車、一般貨物の4つのジャンルでの成長を目指した。こうした戦略が功を奏し、規模の拡大に成功したのである。日本では運送業者の98.4%が従業員100人以下の中小零細企業であるという。そうした背景の中で、小企業から大企業への脱却をはかったのが富士運輸である。
 松岡氏は講演の中で、富士運輸のさまざまな試みを紹介くださった。年中無休24時間営業、IT化とデジタル化、車両関係のコストダウンなど、彼独自の創意工夫を重ねることにより、売り上げは平均年間20%のアップを続けてきた。全車両にGPSやドライブレコーダーが取り付けられ、車の管理や車両の見える化が完全実施されている。 松岡氏によれば、先代の事業運営とは全く逆の方向を目指し(先代とはまったく異なる事業戦略で)、従業員とともに歩む地道な活動を通して、いまの富士運輸ができあがった。良いと思ったらすぐ実行、不得意分野には進出しない(たとえばコンビニの配送作業はしない)、『うまい話』には絶対のらないなど、自らの信念(ポリシー)を最後に示された。

『RFIDの応用事例 ~ドイツメトログループ、米国HP他~』 2009年7月16日午前

三宅 信一郎氏 株式会社BFCコンサルティング 代表取締役社長

 三宅氏の講演は内田洋行本社2階キャンバスで行われた。三宅氏は 以前は日商岩井の営業におられプラント建設に携わっていた。現在はその後のHP時代の経験をもとにRFIDの専門家でおられる。特に欧米の情勢に詳しい。欧米は何もかもいいというわけではないが、社会的インフラをみんなで作ろうという野心は高く評価できるという。RFIDの適用事例として面白いのは犬猫の管理である。現在は日本には2700万匹の犬猫がおり、疾病保険が始まった。このときに犬猫の個体管理が必要となり、インプラントタグで個体認識を始めたそうだ。
 三宅氏の講演の後半部分ではドイツメトロクループの試みが示された。デュッセルドルフから電車で一時間のところにEssenという町があり、その駅前百貨店の3階フロアーで、紳士服の個品管理を行っている。盗難防止、商品情報提供、売上向上などを目的に施された創意工夫についてスライドで説明された。
 三宅氏の発表された応用事例は 工業調査会編「実践、RFID活用戦略」の中にまとめられている。三宅氏の講演は、たくさんの応用事例を紹介してくださり、その中でビデオによる解説もあって大変理解しやすい。

『ユビキタス社会におけるインテリジェンスの最大化
  ~ワークプレイス・インテリジェントマネジメント・仮装空間~』 2009年7月16日午後

村 浩二氏   株式会社内田洋行 マーケティング本部 次世代ソリューション開発センター長
高橋 祐人氏      同       マーケティング本部 知的生産性研究所 担当部長
山本 哲之氏      同       マーケティング本部 課長

 場のしつらえ、ITのしつらえ、それとコンテンツのしつらえの3つを一体化すること、つまり情報を活用し、人と知が交流する場つくり全体をデザインすることが、いま内田洋行の新しい業務となっている。内田洋行の商標としてコラボレーション、情環融合、ユビキスタンといった用語がある。これまでの単純労働から知的労働・創発的業務へと変わってきた。同じようにデスクスペースも情報共有スペースにかわってきた。激しく変化する情報戦略、コンテンツ、情報インフラに対して、変化しづらい建築、建屋がある。そのインターフェイスとしての場(空間)づくりが求められているのである。ミドルウェアとよべばいいのだろうか。空間づくりにミドルウェア(中間的立場で機能・作用するもの)が必要になっている。
 インテリジェンス・マネジメントというのは松下幸之助が言った「衆知を集めること」に相当する。智恵や工夫を経営に活かそうという考え方である。 こうした内田洋行の事業コンセプトを伺うとともに、コンピュータ画像によるコンテンツの作成、表示技術などの話をうかがった。本社ビル3階にはハイレゾリューションの映像施設があり、これらのコンセプトを実際に画面上に表示していただいた。

『小売業の店舗・物流センターにおけるトヨタ生産方式の導入成果
~イトーヨーカ堂の場合~』 2009年6月18日午前

菊田 一郎氏 株式会社流通研究社 常務取締役、月刊「マテリアルフロー」編集長

 菊田一郎氏は月刊マテリアルフローの編集長として、これまでたくさんの企業のロジスティクス活動を取材してこられた。今回はその中からIY(イトーヨーカ堂)をテーマに、トヨタ生産方式にもとづく、業務・作業改善事例について話された。IYでは2003年3月に大宮店でTPS(Toyota Production System)の導入を図った。それを皮切りに業務改善が続けられたのだ。導入当初「こんなことをしても店の売上はあがらない」、「改善メンバーなんて顔をみるのもイヤ」というのが現場の人たちの意見だった。改善のリーダーだった平賀氏も「初め2~3ヶ月は、ケンカのような状態でしたね」という。大宮店では、陳列ボ リュームか、JIT供給か迷った。店にうず高く商品を山積みするのがいいのか、需要に見合う分だけ陳列すればいいのかという課題に直面した。惣菜加工場の床はなぜ油まみれなのか。そうした課題がTPSの概念で解決されていった。これらの話を皮切りに、菊田氏は取材にもとづいて、店舗改善や物流センターの作業改善など、さまざまな事例を紹介された。内容の詳細は月刊マテリアルフロー09年3月号に掲載されている。
 菊田氏の講演はビジュアルな写真をもとに丁寧に説明を加えられ、トヨタの改善コンセプトにもとづいた業務改善、作業改善の理解が深まった。また、同じ月刊雑誌の09年5月号に掲載されたIY川越生鮮センターにおける物流現場改善の事例にも触れられ、構内・配送・事務所の作業改善で8000万円のコスト削減に成功された例を示された。

『 変わらなくてはいけない日本の植物生産
~流通・小売の情報化に追従し得る施設野菜生産~ 』 2009年6月18日午後

星 岳彦氏 東海大学 開発工学部 教授

 企業の野菜工場への参入は1985年頃に人々の大いなる関心を集めた。しかし、その後バブ ルの崩壊によってブームは下火となり、いま改めて150億円の補正予算がつき、多くの企業が植物工場の建設に強い関心を示し始めた。おそらくこれも一過性のものになるのではないかと星氏はおっしゃる。日本の食糧自給率は穀物で27%、カロリーベースで40%にすぎない。人口一億人以上の国々で見るとこれは最低の値で、自給率100%を越えるアメリカ、 EU、ロシアがうらやましい。わが国における高齢化、耕地減少、野菜輸入の現状を見ると 、このままの構造では日本の農業は深刻な問題を抱えることになる。自立した国として今後も存続するためには、国内で食料自給可能な技術開発が極めて重要である。施設は露地の2倍以上の生産効率をもっている。ところが日本の施設植物生産面積は、耕地面積の約 1%しかない。生産性の面でもオランダには大きく水を開けられている。技術立国日本の挑戦を期待したい。
 星氏の講演メッセージは単刀直入に視聴者の心に届き、まさに日本頑張れという気持ちになる。さて、どうするかということについて、星氏は生産現場の電子化と規格化でPDCAを回せという。農業生産のデータを電子化し、その情報を生産に携わる人たちが共有しながら管理していけばいいというのだ。さらに星氏はUUECSとか BIX-ppといった研究開発にも触れられた。つまり植物工場のソフトウェアが大きな鍵になる。こうしたソフトウェアが完備されれば、人々が必要なときに必要なだけ植物を供給できることができ、また植物移動も可能になるという。
 講演をとおして、農業生産におけるSCMの確立は、将来のロジスティクスの大きな課題になるような気持ちをもった方々が多いはずだ。

『目で見る世界物流センタートレンドと欧州最新DC
 -世界物流視察40年を振り返って-』 2009年5月21日午前

鈴木 準氏 サン物流開発 代表

 鈴木準氏は1933年生まれだが、講演の姿を拝見する限り極めてお元気である。過去40年間、欧州を中心とした最新物流施設を視察してこられ、まるで物流博物館に展示したいような当時の物流施設の写真を何枚も持っておられる。1980年代に撮影されたイギリスブーツ社の物流機器、フィンランドのケスコ社の無線による入出庫、アメリカAVON社のA フレーム〈ピッキングの棚が横からみるとアルファベットのAになっている〉をはじめ、さまざまな物流機器を見せてくださった。鈴木氏は「これがいまのコンベアーの原点でしょうね。この時代にすでにここまで出来ていたのは驚きです」と語っておられる。これからの物流機器に必要なものは、IEと人間工学だという。つまり人に優しい物流であるべきだというのだ。興味深い写真の一つに横すわりのフォークリフトがあった。通常は運転手の前方に荷物を乗せるフォークがあるのだが、これは運転席の右隣にフォークがある。こうして時代を追って物流機器の変遷をみると、確かに今の機器はデザインもいいし、機能性も高まっている。中にはその当時に使われすでにこの世から姿を消してしまったものもあった。
 鈴木氏は講演後まもなく欧州の視察に向かわれるという。「私にとって、最後の視察旅行になるかもしれません」と仰っていたが、いつまでもお元気でいていただきたい。

『Vocollect 音声物流革命』
2009年5月21日午後

シソン セザール氏 ヴォコレクトジャパン株式会社 代表取締役社長

 シソン氏は在日25年のフィリピン出身で、日本語を大変流暢にしゃべられる。上智大学で懸命に勉強されたようだ。ヴォコレクト機器は音声によってピッキング指示を与えるため、目を使わずに作業ができる。それと手の動きがこれまでの作業にくらべて圧倒的に短縮される。同じ作業を従来のやり方(ハンディースキャナーでバーコードを読みながらピッキングする作業)とヴォコレクト機器を用いて作業を行った2つのビデオを同時に示す〈同じ画面に並べて示す〉DVDを映されたが、作業者の動きが全く違う。作業の生産性も高まり、作業動作がきわめてスムースなのだ。お話によれば、ウォールマート、カルフール、メトロといったメガスーパーが全てこの機器を用いているという。機器の形状は作業者が頭にヘッドフォンをかぶり、それがベルト付近にセットされたハードウエアーにコードで結ばれている。あとはシステムコンピュータから送られてくる音声指示により、作業が次々と進んでく。そして作業者は常に確認を求められる。まるで会話をしているようにも見える。 音声は話者特定といい、機器を使用する前に30分程度の登録が必要だという。そのかわり騒音の多い倉庫などで、大勢の人が同時にしゃべる環境の中でも話者が特定され、スムーズに作業ができるという。
 日本ではまだ普及が進んでいない。まだ認識が低いようだ。ただ、病院でも同じ機器が用いられ、看護師が指示を受けて作業をするケースも紹介された。新しい試みとして、もし多くの企業がそれに関心を示すと一気に普及するように思えた。

『ビジネスモデルのライフサイクルと先行条件の再検討』
2009年4月16日午前

永井 猛氏 早稲田大学大学院商学研究科 ビジネス専攻 教授

 ビジネスを支えている条件は何か。利益の前提条件は何か。永井氏はまずこのことから語り始めた。使い捨てカメラで勝ちを収めた富士フイルムはデジタルカメラでは後発メーカーになってしまった。フラットテレビで一人勝ちを収めたソニーは、プラズマテレビや液晶テレビの分野では後発ランナーである。その先を見ずに現在の商品で収益拡大を求め続けると、将来意外な展開に遭遇することになる。そうした商品を通過儀礼商品とよんでいる。もちろん通過中のメーカーがその製品で高収益をあげていれば、先など見えるわけがない。したがって結果論であることは確かだ。永井氏はたくさんの類似事例を述べられた。優秀な成果をあげる企業に対して、優秀な企業が何をしているかを調べたとする。それを学んで自社で同じことをしても優秀になれるとは限らない。そもそも優秀というのは3σを越えた異常値なのだから、調査の対象にはなりえないという。結論として、戦略は「目標」でも「目的」でもない。「ビジョン」でもなければ「ミッション」でも「ステートメント」でもない。戦略とは決定的なところでライバルと差をつけることであるとした。
 永井氏の講演には迫力がある。自分がこれまで学んできた知識は何だったのだろうと思うことがしばしばあった。是非、多くの皆さんに聞いて欲しい講演だ。

『新幹線マネジメント』
2009年4月16日午後

斉之平 伸一氏 三州製菓株式会社 代表取締役社長

 三州製菓は従業員220名(うち正社員50名)の企業で、せんべい業界では後発メーカーである。顧客は大手スーパーではなく、テーマパーク、専門店、FC直営店などで、斉之平氏はこれを串ダンゴ戦略とよんでいる。斉之平氏は社員満足と顧客満足は比例するという精神で、社員と顧客に最大の関心を払って経営の指揮をとっておられる。社員に心地よく働いてもらうためには人事制度や就業規則ではなく、暗黙のルール、思い込み、価値観、社風といったものの方が大事である。これで人は動くのだ。三州製菓では12の委員会活動を展開している。クレームゼロ委員会、安全衛生委員会、男女共同参画委員会、IT委員会、工場感謝祭委員会、一人三役委員会など、全員参加の活動である。また各委員会は横断的に製造、営業、総務、企画からの従業員が交わる形で構成されている。従業員には私募債を発行して、経営への参加意識を高めている。また、バランススコアーカードの概念を用いてKPI管理を実施している。社内情報は全て社員手帳に記載され、従業員の圧倒的な信頼を得ている。
 斉之平氏は決してワンマン社長ではない。常に人の話に耳を傾ける温厚で物静かな話し方をされる。三州製菓は学者の間でも、知る人ぞ知るというユニークな経営哲学をもった会社で、そのニッチ戦略はよく知られている。演題の新幹線マネジメントというのは、決してスピード経営という意味ではない。新幹線は16両編成の一台一台の車両につけられたモーターを駆動して高速運転ができている。社員の一人ひとりに動力になってもらって経営を推し進めるというのが新幹線経営なのだ。