ネオ・ロジスティクス研究会について

設立趣旨

 1962年、早稲田大学生産研究所(やがてシステム科学研究所、アジア太平洋研究センター、WBS研究センターと改称されていった)の設立以来、われわれは生産システムに深い関心をもっていた。私を含む研究所の一部スタッフが日本機械工業連合会の産業高度化研究専門委員会、新生産システム開発分科会から委託されたプロジェクトに取り組んだのは1987年で、われわれはこれを機に次世代生産システム開発に焦点をあてたのである。

 当初の3年間はワーキング・メンバーとして産業界から6社が加わり、そこから派遣された研究員と研究所のアカデミックスタッフがグループを編成して活動した。
 ここでとり上げられていたテーマのキーワードは、パラダイムシフト、ボーダレス、インフォメーション支援、競争上優位、フレキシビリティ、システム化の光と影、人間中心の生産などであった。
 この委託研究は1990年に終わったが、この組織を継続しようという声が湧き上り、産業界からの支援をもって、マルチクライアント方式の次世代生産システム開発(スタート1991年の頃から10年後の姿をイメージしていた)Manufacturing2001と名をつけてプロジェクトがスタートした。
 小規模分散型生産、システム導入の波及効果、CIMの評価、人間中心生産などが主たるテーマであった。

 1993年、次世代生産システム開発プロジェクトはさらに3年間続いた。これはManufacturing2003とした。この頃、円高の進行、国際化、環境問題、市場の多様化と生産環境は大きく揺らいだ。
 1996年になって、このような生産研究をどのようにその後、展開させるかを考える時がきた。産業界には生産や物的流通システムの延長方向にロジスティクスというコンセプトが少しずつ出来上がっていった。それは生産という枠の中で最適なシステムを開発するのではなく、物的流通、調達、廃棄/回収などを含んで、マテリアルフロー全体を視野に入れて研究しようという態度を強調していた。もう生産あるいは物的流通といった単独の枠の中だけでは処理しきれない問題が多くなってきているとわれわれはそれを実感していた。
 そこで、ロジスティクスという名の下に、従来の生産システム研究の領域を拡大しようと試みたのである。1996年のことであった。われわれはネオ・ロジスティクス共同研究会を組織したのである。

 その時の企画書には、次のように述べられている。

 「ネオ・ロジスティクス共同研究会は、わが国およびグローバルに展開する様々な活動についての次世代のロジスティクスの構築をめざす。ともすれば、われわれは従来、ECR、SCM、マテリアル・マネジメントなど欧米において体系化、そして、実践され、磨き上げられたコンセプト、方法、技法を応用するというかたちで、輸入し、学習し、消化してきたロジスティクスを、ここでわが国独自の場を踏まえてリデザインしてはどうかと考えた。
 そのためには理論的な柱と実践との諸技術を融合させて、実践を前提としたロジスティクスの体系化、エンジニアリングの確立が望まれる。
 またこれからの研究は、日本における企業が、国内における競争を有効に展開しようというだけでなく、グローバルな競争時代に入りつつあるという状況を理解しておく必要がある。そのためには、アカデミックな機関、人材とロジスティクス業務に直接関わっている企業が真剣に協働することが不可欠となる。

 このようなロジスティクス研究をネオ(新しい)という言葉にこめて略称ネオ・ロジはスタートしたのである。

 私は時々、このスタート時の文章を見ながら、現在の活動に目をやるのである。新しいネオ・ロジスティクスの発展を念じてやまない。

2007.8.1 早稲田大学 名誉教授 高橋 輝男(学術博士)