考古調査士養成プログラムについて
 
 
考古調査士養成プログラムについて
 
文学学術院長ご挨拶
 

   古代遺跡・遺物発見のニュースは、メディアを通じて毎日のようにお茶の間を賑わし、私たちの耳目を集めております。地中から現れる考古資料は文字通り沈黙資料ですが、私たちの先祖の歴史記録であると同時に歴史の動かぬ証人です。それだけに発掘調査や遺物などの取扱いには、豊富で専門的な知識と周到な技術が必要なことは言うまでもありません。地下に眠る文化遺産は「埋蔵文化財」と呼ばれ、文化財保護法では「国民共有の財産」であると定義されています。本学の学生や卒業生も、考古学コースの教育・研究を通じて、国内はもとより広く世界を舞台に活躍しております。

   日本国内では社会の開発事業に伴い、毎年数千件におよぶ埋蔵文化財の発掘調査が行われていると聞き及びます。また外国においても世界遺産の修復や発掘調査が実施されております。発掘調査に当たって、万全を期すために高い技術と知識をもつ多くの専門家が働いております。同時に調査で得られた成果は、適切に保存され社会に還元され活用されなければなりません。そのために、都道府県や市町村の教育委員会に設置された多くの調査機関では、発掘調査の体制を整えるなど多くの努力が払われております。本プログラムはまさにそのような公的な目的と社会的必要性に基づいて設置されたものです。民間にも「埋蔵文化財調査士資格」という資格があり、この分野の専門技術と知識がいかに重要で必要とされているかがわかります。

   「考古調査士養成プログラム」は、2007年に文部科学省の「社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム」事業に採択されたのを機に、早稲田大学文学学術院に設置された考古学専門の養成プログラムです。設置の主旨は、希望する社会人と本学の学生に対して、「文化財行政学」や「文化財の保存と活用」などの科目を通じて、専門知識と理念、コンプライアンスの意義などを改めて教授することで、外部審査機関の「考古調査士資格認定機構」で資格審査を経て「考古調査士資格」を授与する仕組みになっています。資格を行政機関や民間調査機関などの実務で生かしてもらい、その能力を保証するのが「考古調査士資格」の狙いです。そのために、従来の考古学コースのカリキュラムに加えて、埋蔵文化財に関する新たな科目群を設置しました。それらを担当される講師陣は学界でも有名な一流の先生方です。科目群を履修することによって、上級資格、1級資格、2級資格に申請できる仕組みになっております。一方、資格を審査する「考古調査士資格認定機構」は学外に設置され、当該分野の第一線で活躍する著名な学者、有識者で構成されており、厳密な規定に基づいて申請者の資格が審査・認定されます。

   本学で、プログラムが設置されて以来、全国の国立・私立14大学が協賛して「考古調査士資格認定機構」に加盟を果たしました。これからもわかるように、本プログラムは社会的に広く認知され高邁な理念と社会的連携の姿勢が高く評価されております。資格取得者は全大学で1100名を超え、すでに100名以上の人たちが都道府県や市町村の埋蔵文化財の専門職についています。本学からも資格を取得した学生たちが多数就職しております。大学で学んだ専門知識や技術が資格に結びつくことは、大学と社会、学問と実践を結びつける試みとして大きな意義を持ちます。社会の共有財産である埋蔵文化財の調査、発掘が透明性をもち責任ある体制のものとで推進できるように、また高邁な精神に基づいて斯学がより一層発展するために、考古調査士養成プログラムが大きく寄与することを願ってやみません。学生の皆様、社会人の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。


令和4年9月21日 文学学術院長 高松 寿夫



 
 
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