便
便
夕部も三度たきてもふ連ていこ抱ていこと門口迄出たれ共一夜てたんのうするでもなし五十日ひまとろやら百日へだてておこふやら知ぬ事に馴染なじましては跡の難と五町三町ゆぶりあるいてたゝき付ねさしてはそつとこかし我はだればうつゝにもさがしてしがみ付わづかな間の別れでさへ恋こがるゝ物一生を引わけふとは思はね共是非ぜひに及ばずいとまの状了竹へ渡せしを内證ないしやうにて請取ては親のゆるさぬふ義とが科心よからず持て帰れ是迄の縁約束やくそく事死だと思へば事済と切はなれよき男氣はつねしる程猶悲しく此家に居るとおまへが立ず内へいぬるとよめらにやならず悲しい者はわたし一人是が別れにならふも知ぬよし松をおこしてちよつとあはして下さんせイヤそれならぬ今逢て今別るゝ其身跡の思ひが猶不便びんなわけて今宵はおきやくも有ぐと〱いはずと早くおいきやれそれでもちよつとよし松にハテ扨未練みれんな跡の難義を思はずやとむりに引立去状もともに渡して門先へ心強くもつき出し子が可愛かはゆくば了竹へ詫言わひこと立て春迄もかくまひもらはゞ思案しあんもあらんそれ叶はずば是かきりと門の戸しめて内に入ノウそれがかなふ程なれば此思ひはござんせぬつれないぞや我夫とがもない身を去のみか我子に迄逢さぬはあんまりむごいどうよくな顔見る迄はなんぼでもいなぬ〱と門打たゝき情じや慈悲じひじや爰

詞:夕部も

地:ゆぶり,ハル:ゆぶり地/ハル

ウ:ねさしては

ウ:我

ウ:乳を

ウ:わづかな

ウ:恋こ

ウ:引わけふ

色:思はね共

詞:是非に

地色:切離,ハル:切離地色/ハル

上:常を

中:しる

フシ:猶フシ

詞:此

地:悲しい,上:悲しい地/上

詞:是が

地:よし松を,ハル:よし松を地/ハル

詞:イヤ

地色:わけて,ウ:わけて地色/ウ

ハル:お客もハル

ウ:ぐと〱

色:おいきやれ

上:それでも

詞:ハテ

地色:むりに,ウ:むりに地色/ウ

ウ:倶に

ハル:心強くもハル

色:突出し子

詞:子が

地:それ,ウ:それ地/ウ

ハル:是ハル

ウ:門の

フシ:内にフシ

地:ノウ,上:ノウ地/上

ウ:此

ウ:つれないぞや

中:我

詞:科も

地色:顔,ハル:顔地色/ハル

ウ:いなぬ

詞:情じや