とつの畜生め穢はしいそこのこふイヤ親と一所でない證拠それ見て疑ひはれてたべと戸の透よりも投込一通ひろひ取間に付込女房夫は書物一目見てコリヤ最前やつた暇の状是戻してどふするのじやどふするとは聞へませぬ親了竹の悪工は常からようしつての事譬どの様な事有とてなせ隙状をくだんした持て戻ると嫁らすと思ひも寄ぬ拵嬉しい顔で油断させ鼻紙袋の去状を盗んでわしは逃てきましたおまへはよし松可愛ないか去てあの子を継母にかける氣かいのどうよくなとすがり歎けばヤア其恨は逆ねち此内をいなす折云ふくめたを何と聞た様子有て其方に隙やるでなししばしの内親里へ帰つて居よ舅了竹は元九大夫が扶持人心とけねば子細はいはぬ病氣の体にもてなし起卧も自由にすな櫛も取なと云付やつたをなせ忘れたさんばら髪で居る者を嫁にとろとは云ぬはやい何の儕かよし松が可愛かろ昼は一日あほうめかだましすかせと夜に成と嚊様〱と尋おるかゝは追付もふ爰へとだましてねさせとようねいらず呵てねさそとたゝき付こはい顔すりや声上ずしく〱泣ておるを見ては身ふしが砕てこたへらるゝ物じやない是を思へば親の恩子を持てしるといふふ孝の罰と我身をば悔で夜と共泣明す
とつの畜生め穢はしいそこのこふイヤ親と一所でない證拠それ見て疑ひはれてたべと戸の透よりも投ケ込ム一ツ通ひろひ取間に付ケ込女房夫トは書キ物一ト目見てコリヤ最前やつた暇の状是戻してどふするのじやどふするとは聞へませぬ親了竹の悪ル工は常からようしつての事譬どの様な事有とてなせ隙状をくだんした持ツて戻ると嫁らすと思ひも寄ぬ拵嬉しい顔で油断させ鼻紙袋の去リ状を盗んでわしは逃ケてきましたおまへはよし松可愛ないか去ツてあの子を継母にかける氣かいのどうよくなとすがり歎けばヤア其恨は逆ねち此内をいなす折云ふくめたを何ンと聞た様子有ツて其方に隙やるでなししばしの内親里へ帰つて居よ舅了竹は元九大夫が扶持人ン心とけねば子細はいはぬ病氣の体にもてなし起卧も自由にすな櫛も取ルなと云イ付やつたをなせ忘れたさんばら髪で居る者を嫁にとろとは云ぬはやい何ンの儕レかよし松が可愛かろ昼は一日あほうめかだましすかせと夜に成ルと嚊様〱と尋おるかゝは追ツ付もふ爰へとだましてねさせとようねいらず呵てねさそとたゝき付ケこはい顔すりや声上ずしく〱泣ておるを見ては身ふしが砕てこたへらるゝ物じやない是を思へば親の恩子を持てしるといふふ孝の罰と我身をば悔で夜と共泣明カす
ハル:畜生めハル
ウ:穢はしいウ
色:そこ色
詞:イヤ詞
地色:戸の,ウ:戸の地色/ウ
ハル:ひろひハル
ウ:夫はウ
詞:コリヤ詞
地色:持て,ハル:持て地色/ハル
ウ:嬉しいウ
ウ:鼻紙袋のウ
ウ:盗んでウ
中:きました中
ハル:可愛なハル
ウ:去てウ
ウ:かけるウ
ウ:すがりウ
キン:歎けばキン
詞:ヤア詞
地色:心,中:心地色/中
ハル:病氣のハル
ウ:起卧もウ
ウ:櫛もウ
詞:さんばら詞
地:何の,ハル:何の地/ハル
色:可愛かろ色
詞:昼は詞
地色:だまして,ハル:だまして地色/ハル
ウ:呵てウ
ウ:こはいウ
詞:しく〱詞
地色:是を,ハル:是を地色/ハル
ウ:子をウ
ウ:ふ孝のウ
上:悔で上
中:夜と中
フシ:泣明すフシ