御家来中の見る目はどふしてお忍びなされましたなホウそれも御尤のお尋此義を頼まれますると女房は親里へ帰し召使は垂邪を付て段々に隙遣はし残るはあほうと四つに成躮洩る筋はござりませぬ扨々驚入ましてござりまする其旨を親共へも申聞して安堵させませう郷右衛門殿お立なされませぬかいか様出達に心せきまする義平殿お暇申ませう然らば由良助様へも宜しう申聞しませうおさらばさらばと引別れ二人は旅宿へ立帰る表しめんとする所へ此家の舅大田了竹おつとしめまい宿にかとずつと通つてきよろ〱眼是は親父様ようこそお出扨此間は女房そのを養生かてら遣はし置嘸お世話お薬でも給まするかなアヽ薬も呑まする食も喰ますそれは重畳イヤ重畳でござらぬ手前も国元に居た時は斧九大夫殿から扶持も貰ひ相應の身体今は一僕さへ召使ぬ所へさしてもない病氣を養生さしてくれよと指越れたは子細こそあらんガそれはとも有生若い女ふ埒か有ては貴殿も立ず身共も皺腹でも切ねばならぬ所で一つの相談先世間は隙やり分暇の状をおこしておいてハテ何時でも爰の勝手に呼戻す迄の事たつた一筆つい書て下されと軽ういふのも物工一物有と知ながらいやといはゞ女房を直に戻さん戻りては頼まれた人々へ詞も立ずと取つ置つ
御家来中の見る目はどふしてお忍びなされましたなホウそれも御尤のお尋此義を頼まれますると女房は親里へ帰し召シ使は垂邪を付ケて段々に隙遣はし残るはあほうと四つに成ル躮洩る筋はござりませぬ扨々驚キ入ましてござりまする其旨を親共へも申シ聞して安堵させませう郷右衛門殿お立なされませぬかいか様出達に心せきまする義平殿お暇申ませう然らば由良ノ助様へも宜しう申聞カしませうおさらばさらばと引別れ二人は旅宿へ立帰る表テしめんとする所へ此家の舅大田了竹おつとしめまい宿にかとずつと通つてきよろ〱眼是は親父様ようこそお出扨此間は女房そのを養生かてら遣はし置キ嘸お世話お薬でも給まするかなアヽ薬も呑まする食も喰ますそれは重畳イヤ重畳でござらぬ手前も国元トに居た時は斧九大夫殿から扶持も貰ひ相應の身体今は一チ僕さへ召シ使ぬ所へさしてもない病氣を養生さしてくれよと指越サれたは子細こそあらんガそれはとも有生若い女ふ埒か有ツては貴殿ンも立ず身共も皺腹でも切ラねばならぬ所で一つの相談先ツ世間ンは隙やり分ン暇の状をおこしておいてハテ何ン時でも爰の勝ツ手に呼戻す迄の事たつた一ト筆つい書イて下されと軽ういふのも物工一チ物有リと知リながらいやといはゞ女房を直クに戻さん戻りては頼まれた人々へ詞も立ずと取ツつ置つ
地:さらばと,ハル:さらばと地/ハル
フシ:二人はフシ
地:表,ウ:表地/ウ
ウ:此ウ
ハル:大田ハル
色:了竹色
詞:おつと詞
地:ずつと,ハル:ずつと地/ハル
色:きよろ〱色
詞:是は詞
地:軽う,ハル:軽う地/ハル
ウ:一物ウ
ウ:いやとウ
ウ:頼まれたウ