がのない證拠はコレ爰にと勘平が懐へ手を指入て引出すはさつきにちらりと見て置た此財布コレ血の付て有からはこなたが親父を殺したのイヤ夫はそれはとはヱヽわごりよはなふ隠しても隠されぬ天道様が明らかな親父殿を殺して取た其金にや誰にやる金じやムウ聞へた身貧な舅娘を売た其金を中で半分くすねて置て皆やるまいかと思ふてコリヤ殺して取たのじやな今といふ今迄も律義な人じやと思ふてたまされたが腹が立わいやいヱヽ爰な人でなしあんまり軻て涙さへ出ぬわいやいなふいとしや与市兵衛殿畜生の様な婿とは知らずどふぞ元の侍にしてやりたいと年寄て夜もねずに京三界をかけあるき珍財を投打て世話さしやつたも返つてこなた身の怨と成たるか飼かふ犬に手をくはるゝとようも〱此やうにむごたらしう殺された事じや迄コリヤ爰な鬼よ蛇よとさまをかへせ親父殿を生て戻せやいと遠慮会釈もあら男のたぶさを掴で引寄〱たゝき付づだ〱に切さいなんだ迚是で何の腹がゐよと恨の数々くどき立かつぱとふして泣居たる身の誤りに勘平も五体に熱湯の汗を流し畳に喰付天罰と思ひ知たる折こそ有深編笠の侍二人早の勘平在宿をしめさるか原郷右衛門千崎弥五郎御意得たしと音なへば折悪けれ共勘平は腰ふさぎ脇挟で出迎ひコレハ〱御両所共
がのない證拠はコレ爰にと勘平が懐へ手を指入レて引出すはさつきにちらりと見て置た此財布コレ血の付イて有からはこなたが親父を殺したのイヤ夫レはそれはとはヱヽわごりよはなふ隠しても隠されぬ天道様が明らかな親父殿を殺して取た其金にや誰にやる金じやムウ聞へた身貧な舅娘を売ツた其金を中で半分ンくすねて置イて皆やるまいかと思ふてコリヤ殺して取たのじやな今といふ今迄も律義な人じやと思ふてたまされたが腹が立わいやいヱヽ爰な人でなしあんまり軻て涙さへ出ぬわいやいなふいとしや与市兵衛殿畜生の様な婿とは知らずどふぞ元トの侍イにしてやりたいと年シ寄て夜もねずに京三界をかけあるき珍財を投ケ打て世話さしやつたも返つてこなた身の怨と成たるか飼かふ犬に手をくはるゝとようも〱此やうにむごたらしう殺された事じや迄コリヤ爰な鬼よ蛇よとさまをかへせ親父殿を生ケて戻せやいと遠慮会釈もあら男のたぶさを掴で引寄セ〱たゝき付ケづだ〱に切さいなんだ迚是で何ンの腹がゐよと恨の数々くどき立テかつぱとふして泣居たる身の誤りに勘平も五体に熱湯の汗を流し畳に喰付キ天罰と思ひ知ツたる折こそ有レ深編笠の侍二人早の勘平在宿をしめさるか原郷右衛門千崎弥五郎御意得たしと音トなへば折悪ルけれ共勘平は腰ふさぎ脇挟で出迎ひコレハ〱御両所共
地:爰にと勘,ハル:爰にと勘地/ハル
ウ:手をウ
ウ:さつきにウ
ウ:見てウ
色:此財色
詞:コレ詞
地:な,上::な地/上:
ウ:いとしウ
ウ:畜生のウ
ウ:どふぞウ
ウ:年ウ
ウ:返つてこウ
詞:飼か詞
地色:遠慮,ハル:遠慮地色/ハル
ウ:たぶウ
ウ:づだ〱に切ウ
ウ:さいなんだ迚是ウ
上:恨の数上
スヱ:かつぱとスヱ
中:居たる中
地:身の,ハル:身の地/ハル
ウ:勘平もウ
ウ:五体にウ
ウ:畳にウ
フシ:思ひ知たる折フシ
地:深編笠の,ウ:深編笠の地/ウ
ウ:二人ウ
ハル:在宿をハル
色:音なへば折色
ウ:折悪ウ
ウ:腰ウ
ハル:脇挟で出迎ハル
色:出迎ひコ色
詞:コレハ詞