先お家の大事おこりしは是非に及ぬ我ふ運其場にも有合せす御屋敷へは帰られず所詮時節を待て御詫と思ひの外の御切腹なむ三宝皆師直めがなす業せめて冥途の御供と刀に手はかけたれど何を手柄に御供とどの頬さげていひ訳せんと心をくだく折から蜜に様子を承はれば由良殿御親子郷右衛門殿を始めとして故殿の鬱憤散ぜん為寄々の思召立有との噂我等迚も御勘当の身といふでもなし手懸り求め由良殿に対面とげ御企の連判に御加へ下さらば生々世々の面目貴殿に逢も優曇華の花を咲せて侍の一分立て給はれかし古傍輩のよしみ武士の情お頼申と両手をつき先非を悔し男泣理りせめてふびんなる弥五郎も傍輩の悔道理と思へ共大事をむさと明さじとコレサ〱勘平はて扨お手前は身の云訳に取まぜて御企のイヤ連判などゝは何の譫言左様の噂かつてなし某は由良殿ゟ郷右衛門殿へ急の使先君の御廟所へ御石牌を建立せんとの催し併我々迚も浪人の身の上是こそ塩冶判官殿の御石塔と末の世迄も人の口の端にかゝる物故御用金を集る其御使先君の御恩を思ふ人を撰出す為わざと大事を明されず先君の御恩を思はゞナヽ合点か〱と石碑になぞらへ大星の工をよそにしらせしは
先キお家の大事おこりしは是非に及ぬ我ふ運其場にも有合せす御屋敷キへは帰られず所詮時節を待ツて御詫と思ひの外の御切ツ腹なむ三宝皆師直めがなす業せめて冥途の御供と刀に手はかけたれど何を手柄に御供とどの頬さげていひ訳せんと心をくだく折から蜜に様子を承はれば由良殿御親子郷右衛門殿を始めとして故殿の鬱憤散ぜん為寄々の思召ン立チ有との噂我等迚も御勘当の身といふでもなし手懸り求め由良殿に対面とげ御企の連ン判に御加へ下さらば生々世々の面目貴殿に逢も優曇華の花を咲せて侍イの一チ分ン立て給はれかし古傍輩のよしみ武士の情お頼申スと両手をつき先非を悔し男泣理りせめてふびんなる弥五郎も傍輩の悔道理と思へ共大事をむさと明カさじとコレサ〱勘平はて扨お手前は身の云訳に取まぜて御企のイヤ連判などゝは何ンの譫言左様の噂かつてなし某は由良殿ゟ郷右衛門殿へ急の使イ先ン君の御廟所へ御石牌を建立せんとの催し併我々迚も浪人の身の上是こそ塩冶判官殿の御石塔と末の世迄も人の口の端にかゝる物故御用金を集る其御使イ先ン君の御恩を思ふ人を撰出す為わざと大事を明されず先君の御恩を思はゞナヽ合点か〱と石碑になぞらへ大星の工をよそにしらせしは
地:何を,中:何を地/中
ハル:どのハル
キン:心をキン
色:折から色
詞:蜜に詞
地:生々世々の,ウ:生々世々の地/ウ
ハル:面目ハル
ウ:貴殿にウ
ウ:花をウ
ウ:立てウ
ウ:古ウ
ウ:お頼ウ
上:先非を上
フシ:男泣フシ
中:理,ノル:理中/ノル
ハル:せめてハル
地:弥五郎も,ウ:弥五郎も地/ウ
ウ:道理とウ
ハル:大事をハル
色:明さじと色
詞:コレサ詞
地色:石碑に,ウ:石碑に地色/ウ
ハル:大星のハル
ウ:工をウ