便
したがふ御威勢ゐせい国にをのすつるおか八幡宮御造営さうゑい成就じやうじゆ御代参だいさんとして御舎弟しやてい足利左兵衛督直義公あしかゞさひやうへのかみたゞよしこう鎌倉に下着げちやくなりければさい鎌倉の執事しつじ高武蔵守師直かうのむさしのかみもろなを膝元ひざもとに人を見おろす権柄けんぺいまなこ馳走ちさうの役人は桃井播磨守もゝのゐはりまのかみが弟若狭わかさ安近やすちか伯刕はくしう城主じやうしゆ塩冶判官高定ゑんやはんぐはんたかさだ馬場ばゞまく打廻威儀ゐぎたゞして相詰あひつむ直義仰出さるゝはいかに師直もろなを唐櫃からひつに入しは兄尊氏にほろぼされし新田義貞につたよしさだ後醍醐ごだいごの天皇ゟたまはつてちやくせしかぶと敵ながらも義貞は清和源氏せいわけんし嫡流ちやくりう着捨きずてかぶとといひながら其侭にも打おかれず当社の御蔵におさめる条其心得有へしとの厳命げんめいなりとのたまへば武蔵の守承はり是は思ひもよらざる御事新田が清和の末なり迚ちやくせしかぶとそんきやうせば御旗下はたしたの大小めう清和源氏はいくらも有奉納ほうなふの義然るべからず候遠慮ゑんりよなく言上すイヤ左様にては候まじ此若狭助が存るは是はまつたく尊氏公の御斗略けいりやく新田に徒党ととう討洩うちもらされ御仁徳じんとく感心かんしんせめずして降参かうさんさする御方便てだてと存奉れば無用むようとの御評義ひやうぎ卒尓そつじ也といはせもはて

地色:国に,中:国に地色/中

ウ:靏が岡八幡宮

ハル:御代参としてハル

ウ:足利

中:直義公

ウ:鎌倉に

ウ:在

色:師直

ハル:御膝元にハル

ウ:御馳走の

中:役人は

ウ:若狭助安

ウ:伯刕の

ウ:判官

ハル:馬場先にハル

ウ:幕

フシ:威儀をフシ

地色:直義,ウ:直義地色/ウ

ハル:いかにハル

中:師直

詞:此

地:当社の,ウ:当社の地/ウ

ウ:納る条

ハル:其ハル

ウ:厳命なり

ウ:武蔵の

色:承はり

詞:是は思

地:奉納の,ウ:奉納の地/ウ

ハル:候と遠ハル

ウ:遠慮

色:言上

詞:イヤ

地:いはせも,ハル:いはせも地/ハル