けるヲヽしほらしや忠信兄の敵と名のるからは討れてやるが本意なれ共安徳帝を守奉りふたゝび天下を覆す教経ふびんながら返り打冥途で兄に云訳せよ横川の禅師覚範が引導してくれんずと長刀杖につきそらしかんら〱とぞ打笑ふ詞だゝかひ終つて後まつかうかざしに忠信が討てかゝる大太刀をかはしてはた〱はつしとあふひつぱづして忠信が切身に入たる太刀先をもどいて払ふ長刀の薙手打手に事共せず右にかゝれば左へ踊り左に乗んと取直す白刃鐏ていから〱から紅の緋威や互に勝色分ざりしに覚範頻に打かくればひらりと飛で大木の桜の梢に身をたもつ追取直して桜の木はすにすつかと切かけて足に任せて踏はなせば木はめり〱〱と中絶し向ふの岸に忠信が木におくられて渡りこす跡はかけはし丸木橋是究竟と踏しめ〱渡る不敵の勇猛将過てふみとめし足場すべつて谷底へ落れど落ず諸足に枝をまとふてまつさかさま只一刀と討かくる四郎兵衛が太刀先をはらふ長刀水車草摺の音鍔の音ちりゝんはた〱しつてう〱げに目さましき働也追ちらされし鎌倉勢忠信やらぬと取て返し又ばら〱と討かくるをなむ三宝邪魔と渡り合打あふ隙に覚範が桜にかけし諸足を切んとかゝれば木をはなれ落るを見捨て鎌倉勢皆殺しにと追て行谷には教経手練の早足ひるまず巌に長刀を突立〱かけ上れど雪に凝たる土くだけ氷柱に岩石滑らかに上ればすべりすべつても岨の梅が枝足代に半上りし岩の上鎌倉勢を追ちらし弓手の
けるヲヽしほらしや忠信兄の敵と名のるからは討タれてやるが本ン意なれ共安ン徳帝を守リ奉りふたゝび天下を覆す教経ふびんながら返り打冥途で兄に云訳せよ横川の禅師覚範が引導してくれんずと長刀杖につきそらしかんら〱とぞ打笑ふ詞だゝかひ終つて後まつかうかざしに忠信が討てかゝる大太刀をかはしてはた〱はつしとあふひつぱづして忠信が切身に入たる太刀先キをもどいて払ふ長刀の薙手打ツ手に事共せず右にかゝれば左へ踊り左に乗セんと取リ直す白刃鐏ていから〱から紅の緋威や互に勝色分カざりしに覚範頻に打かくればひらりと飛ンで大木の桜の梢に身をたもつ追ツ取リ直して桜の木はすにすつかと切かけて足に任せて踏はなせば木はめり〱〱と中絶し向ふの岸に忠信が木におくられて渡りこす跡はかけはし丸木橋是究竟と踏しめ〱渡る不敵の勇猛将過てふみとめし足場すべつて谷底へ落れど落ず諸足に枝をまとふてまつさかさま只一ト刀と討かくる四郎兵衛が太刀先キをはらふ長刀水車草摺の音ト鍔の音トちりゝんはた〱しつてう〱げに目さましき働也追ツちらされし鎌倉勢忠信やらぬと取ツて返し又ばら〱と討かくるをなむ三宝邪魔と渡り合打あふ隙に覚範が桜にかけし諸足を切んとかゝれば木をはなれ落るを見捨て鎌倉勢皆殺しにと追て行谷には教経手練の早足ひるまず巌に長刀を突立〱かけ上れど雪に凝たる土くだけ氷柱に岩石滑らかに上ればすべりすべつても岨の梅が枝足代に半上りし岩の上鎌倉勢を追ツちらし弓ン手の
地色:横川の,ウ:横川の地色/ウ
ウ:引導ウ
ウ:長刀ウ
フシ:かんら〱とぞ打笑フシ
地:詞だゝかひ,ウ:詞だゝかひ地/ウ
ウ:まつかうウ
ハル:討てハル
ウ:かはしてウ
合:あふ合
ウ:ひつぱづしてウ
ハル:太刀先をハル
ウ:もどいてウ
色:薙手,合:薙手色/合
ウ:打手にウ
色:事共色
詞:右に,ノリ:右に詞/ノリ
合:踊り合
地:左に,ハル:左に地/ハル
ノル:白刃ノル
中:から中
ウ:勝色ウ
ハル:打かくればハル
ウ:大木のウ
ウ:追取直してウ
フシ:はすにフシ
詞:足に,ノリ:足に詞/ノリ
地:向ふの,ウ:向ふの地/ウ
ハル:忠信がハル
中:木に中
ウ:おくられてウ
合:こす合
ウ:かけはしウ
ハル:踏しめハル
色:〱渡る色
詞:渡る詞
地:四郎兵衛が,ウ:四郎兵衛が地/ウ
ハル:はらふハル
色:水車,合:水車色/合
ハル:草摺のハル
中:鍔の音中
トル:はたトル
合:〱し合
ハル:しつてうハル
フシ:目さましきフシ
地:追ちらされし,ウ:追ちらされし地/ウ
ハル:忠信ハル
色:取て返し色
詞:又,ノリ:又詞/ノリ
地:桜に,ウ:桜に地/ウ
ハル:かゝればハル
ウ:落るをウ
ハツミフシ:皆殺しにとハツミフシ
地:谷には,ウ:谷には地/ウ
キン:教経キン
ハル:手練のハル
ウ:ひるまずウ
ウ:突立ウ
ウ:〱かウ
中:かけ上れど中
キン:雪にキン
ウ:土ウ
ハル:氷柱にハル
合:すべりすべ合
中:岨の,ウ:岨の中/ウ
合:足代に合
ハル:半ハル
ウ:鎌倉勢をウ
フシ:追ちらしフシ
詞:弓手の,ノリ:弓手の詞/ノリ