駿退殿使殿
駿退殿使殿
給ふなと鼓を取て礼をなし飛がごとくに行末の跡をくらましうせにける始終しゞうの様子つまびらかに聞ておどろく四郎兵衛亀井駿河諸共に御前にすゝみ生類しやうるいの誠有弁舌べんぜつにて大将の御うたがひも某が心もはれて此世の大けい上なしと申詞もおはらぬ所へ河連法眼罷怪力くはいりよく乱神らんしんかたらずといへ共かの源九郎が申せしは一山の衆徒今宵夜討に来る条先て忍びを入候あたか恰も府節ふせつを合するごとし敵を引受たゝかはんか討て出申べきや賢慮けんりよいかゞとうかゞへば四郎兵衛忠信よき計略けいりやくごさんなれ狐にゆづり給ひしも元は拙者に給はる姓名せいめい君にかはつて討死せば一たん事はしづまらんひらさら御免かうむたく存奉り候と余義よぎなき願ひに御大将我思ふ子細有しばらく此場は立退のかれず我名を名乗衆徒等をはかれ汝死すれば我も死ぬ必討死すべからずと御帯刀はかせたびてげる仁あつき御詞に出行跡を見おくつて静来れと打連奥にぞ〽入給ふ時もうつさず入来るは山しな荒法橋あらほつきやう我慢がまんの大太刀指さしこはらし案内あないに及ばずずつと通りコレ〱法眼殿只今は直御出近祝着しうちやく義経からめおかれしとやお手柄てがらといひお使がら早速さつそくながら参つたと詞に人々目を見合せ扨は鼓の返礼にきやつをたばかり寄たるよと心にうなづきいかにも〱奥の殿からめサアいざ〱と先に立亀井に目はじき間もあらせず得たりと利腕きゝうで手も早くゆかくだけとずでんどうおこしも立ずふみ〱早縄たぐつてくゝり上ちうに引立大将の

○:鼓を,乱序:鼓を,ハヤメ:鼓を○/乱序/ハヤメ

地色:始終の,ウ:始終の地色/ウ

ウ:聞て

ハル:四郎兵衛ハル

ウ:亀井

色:進

詞:生類の

地色:申,ウ:申地色/ウ

ハル:河連法眼ハル

色:罷

詞:怪力

地色:敵を,ウ:敵を地色/ウ

ウ:賢慮

ハル:四郎兵衛ハル

ウ:よき

色:ごさんなれ

詞:狐に

地:ひらさら,ウ:ひらさら地/ウ

ハル:存ハル

ウ:余義

中:御大将

詞:我

地色:汝,ハル:汝地色/ハル

ウ:必

中:すべからず

ハル:御帯刀をハル

中:給てげる

ハル:仁徳ハル

ウ:出行

中:見送つて

色:静

ウ:打連

トル:奥にぞトル

上:入

地:時も,ハル:時も地/ハル

中:荒法橋

ウ:我慢の

ウフシ:指ウフシ

地:案内に,ハル:案内に地/ハル

色:ずつと

詞:コレ

地:詞に,ウ:詞に地/ウ

ハル:扨はハル

ウ:心に

色:いかにも

ウ:奥の

ウ:いざ

ハル:先にハル

ウ:得たりと

色:ずでんどう

ウ:起しも

ハル:くゝり上ハル

ウ:宙に