三度四度めにはてもかはつた事又五度めは不思議立六度めにはこはげ立それよりは打ざりしが君は爰にと聞付て心せく道忠信にはぐれた時鼓の事思ひ出し打ばふしぎや目の前にくる共なく見へたるは女心の迷ひ目かと思ふて連立来りしに又此時宜はどふぞいのと申上れば義経公ムウ鼓を打ば帰り来るとはそれぞよき詮義の近道静そちに云付る其鼓を以て同道した忠信を詮義せよ奇しい事あらば此刀でと投出し我手で打れぬ鼓の妙音それを肴に一献酌ん早々鼓打〱と云捨奥に入給へば亀井駿河も忠信にひつ添〽てこそ入にけれ静は君の仰を受手に取上て引結ぶしんき深紅をないまぜの調結んで胴かけて手の中しめて肩に上手品もゆらに打ならす声清々と澄渡り心耳をすます妙音は世に類なき初音の鼓彼洛陽に聞へたる会稽城門の越の鼓かくやと思ふ春風に誘はれ来る佐藤忠信静が前に両手をつき音に聞とれし其風情すはやと見れど打止ず猶も様子を調の音色聞入聞いる余念の躰奇き者とは見て取静折よしと鼓を止遅かつた忠信殿我君様のお待兼サア〱奥へと何氣なき詞にはつとは云ながら座を立おくれて指うつむく油断を見すまし切付るをひらりと飛退飛しさりコハ何と
三ン度四度めにはてもかはつた事又五度めは不思議立六度めにはこはげ立それよりは打タざりしが君は爰にと聞付てケ心せく道忠信にはぐれた時鼓の事思ひ出し打テばふしぎや目の前にくる共なく見へたるは女心の迷ひ目かと思ふて連レ立来りしに又此時宜はどふぞいのと申シ上れば義経公ムウ鼓を打テば帰り来るとはそれぞよき詮義の近カ道静そちに云付クる其鼓を以ツて同道した忠信を詮義せよ奇しい事あらば此刀でと投ケ出し我手で打タれぬ鼓の妙音それを肴に一ツ献酌ん早々鼓打テ〱と云捨奥に入給へば亀井駿河も忠信にひつ添〽てこそ入にけれ静は君の仰を受ケ手に取リ上て引結ぶしんき深紅をないまぜの調結んで胴かけて手の中チしめて肩に上ケ手品もゆらに打ならす声清々と澄渡り心耳をすます妙音は世に類なき初ツ音の鼓彼洛陽に聞へたる会稽城門の越の鼓かくやと思ふ春風に誘はれ来る佐藤忠信静が前に両手をつき音に聞とれし其風情すはやと見れど打止ず猶も様子を調の音色聞入聞いる余念の躰奇き者とは見て取ル静折よしと鼓を止遅かつた忠信殿我君様のお待チ兼サア〱奥へと何氣なき詞にはつとは云ながら座を立おくれて指うつむく油断を見すまし切付クるをひらりと飛退飛しさりコハ何ンと
ウ:四度めにはウ
ウ:又ウ
ウ:六度めにはウ
ハル:こはげ立ハル
ウ:それよりはウ
ウ:君はウ
ウ:心せくウ
ウ:鼓のウ
中:思ひ出し中
ハル:くる共ハル
ウ:女心のウ
フシ:来りしにフシ
地色:又,ハル:又地色/ハル
色:義経公色
詞:ムウ詞
地:奇しい,ウ:奇しい地/ウ
色:此色
ハル:我ハル
ウ:それをウ
トル:云捨トル
ウ:入ウ
ハル:亀井ハル
中:ひつ,ヲクリ:ひつ中/ヲクリ
地色:静は,ハル:静は,中:静は地色/ハル/中
ウ:手にウ
ウ:しんきウ
ハル:ないまぜのハル
長地:調,ウ:調長地/ウ
ウ:胴ウ
ウ:手のウ
ウ:手品もウ
中:打ならす中
ハル:心耳をハル
色:妙音は色
本フシ:世に本フシ
ハル:初音のハル
江戸:彼,キン:彼江戸/キン
ウ:洛陽にウ
ハル:会稽城門のハル
ウ:かくやとウ
ナヲス:春風に,ナカ:春風にナヲス/ナカ
ウ:佐藤ウ
ウ:静がウ
ハル:両手をハル
ウ:音にウ
中:すはやと,キン:すはやと中/キン
ハル:打ハル
ウ:猶もウ
謡:調の謡
ナヲス:奇き,ウ:奇きナヲス/ウ
ハル:折ハル
色:鼓を色
詞:遅かつた詞
地色:サア,ハル:サア地色/ハル
中:云ながら中
ウ:座をウ
ウ:油断をウ
ハル:切付るをハル
ウ:ひらりとウ
色:飛しさり色
詞:コハ詞