殿調
殿調
法眼が所存も是にて明さんと同じく弓矢手に取上引かためたはいづれをまとどちらに付ぞと見る中にかつきとはなすは義経に名ざすいも山弟の山ヤア扨は法眼頼朝方義経に弓ひかるゝよないかにも落人おちうどくみせんより世に連て一破滅はめつにせぬが仕置の役目しかとそふやイヤ覚範あぢな所に念が入義経此山を頼なば引かけてかくまはれよ金輪際こんりんざい此法眼さかし出して討て見せう其時は敵味方無分別むふんべつ衆徒原に談合だんかうせしひまおしやけふの参会是迄〱さらば〱と云捨にを待ずして立帰る所存の程ぞ不審いぶかしき跡に鬼佐渡口あんごりアリヤの事どふいふ事云合せたは皆すまた覚範はどふ思ふてぞと山科諸共尋れば覚範ふつと吹出し其あさ了簡りやうけん故法眼が底意そこゐをしらぬ今の詞でとつくりと義経をかくまひ居るそこの底迄皆知た法眼も我所存義経の味方とはうそにらんで帰つた眼中がんちうのび々にはからはゞ落しやらんもはかられず今宵八つの手はづを定め夜討に入て討て取鎌倉殿の恩賞おんしやうに預かた〱覚範が夜討のかけ引催促さいそくを聞や〱と大木の朽根くちねにどつかとこし打かけ我釈門しやくもんのより〱に孫呉そんご兵書へいしよそらんじたり我詞をあやまたず荒法橋は下かぶと十騎余り燈籠とうらうつぢより文字にかれやかたにひた〱と押寄て喚鐘くはんしやう三つ四つ乱調らんでうせよ鬼佐渡は又如意輪寺によゐりんじうら手を真直まつすぐに六地蔵の橋を引敵逃くる時を待さん〲にとめよ此覚範は新坊谷しんぼうだに

地:同じく,ウ:同じく地/ウ

ハル:いづれをハル

ウ:どちらに

ウ:かつきと

色:妹山

詞:ヤア

地色:〱と云,ウ:〱と云地色/ウ

ハル:駕をハル

フシ:程ぞフシ

地:跡に,ハル:跡に地/ハル

色:口

詞:アリヤ

地:山科,ハル:山科地/ハル

色:吹出し

詞:其

地:聞や,ハル:聞や地/ハル

詞:我

地:荒法橋は,中:荒法橋は地/中

ウ:下兜

ウ:燈籠が

ハル:一文字ハル

ウ:彼が

色:せよ

詞:鬼佐渡は,ノリ:鬼佐渡は詞/ノリ

地:敵,ハル:敵地/ハル

色:留よ

詞:此