殿殿廿殿
殿殿廿殿
左衛門判聞れたかいづれも談合だんかうとは此事元来もとよりとがなき判官殿大和路に徘徊はいくはいと有ば一衆徒しゆとを頼来られんは必定ひつぢやう也其時はかた〱頼まれ申てかくまふ氣か又は討て出す所存しよぞんか心々ですまぬ事めい々に遠慮ゑんりよなく評義ひやうぎと聞もあへず荒法橋あらほつきやうげに尤去ながら我々が評定ひやうぢやうお尋迄なく一仕置頭しおきがしら法眼殿から了簡りやうけんを定申さるれば誰て詞をそむかず一とうせん先御所存はととひかへすホヽウ了簡は胸に有まつかく〱と云聞さば仮令たとへ心に合ず共よもやいやとは申されまじ左有ばかへつて不かくもとひ所存は跡でいはん先おの〱の思ふ所真直まつすくに申されよといへ共互に心置しば返答へんたうおこたりしが返坂の薬医やくゐ遠慮えんりよなくぬつと出先愚僧ぐそうが存るは義経をかくまふは二年乃至ないし十年廿年其間立やしなひひとりわづかでも弁慶といふくらひ抜の候へばいか程くらひこまも知ずと有てかくまふまいといはゞかの弁慶めつそう者七つ道具ののこぎり家尻やじりんも知申さずどかとぬすまれ申さんより一山の出し前にて茶粥ちやがゆをくはせやしなふが勘定かんぢやうならんと申にぞ法眼おかしく思ひながらムウそれもかんやう要扨両人はと云せもあへずされば〱此事において勘定かんぢやうも何にもいらず人をすくふが沙門しやもんの役とがなき義経かくまふ迚鎌倉より討手来らば忍辱にんにく袈裟けさ引かへがうよろひに身をかため逆寄さかよせに押寄討すぐに鎌倉へ追のぼり御身におぼへなき条々申ひらいてざんしやばら一々に切ならべ夫も叶はぬ物ならば理非わきまへぬ頼朝を討取て判官殿の天下とせん我々が所存

色:荒法橋

詞:実

地色:申されよ,ウ:申されよ地色/ウ

ハル:いへ共ハル

フシ:暫しフシ

地:返坂の,ウ:返坂の地/ウ

ハル:遠慮なくハル

詞:先

地:勘定ならん,ハル:勘定ならん地/ハル

サハリ:申にぞサハリ

地:法眼,ウ:法眼地/ウ

ハル:おかしくハル

中:思ひながら

詞:ムウ

地色:扨,ウ:扨地色/ウ

ハル:云せもハル

色:されば

詞:此

地:忍辱の,中::忍辱の,ウ:忍辱の地/中:/ウ

ハル:身をハル

ウ:逆寄に

ウ:直に

ウ:申開いて

ウ:夫も

ウ:判官殿の

ウ:我々