ねど見し玉簾の内や床しきと有けるをぞの返しとて人も知たる此哥を物々しう書たは不思議殊に梶原は和哥に心を寄し武士内や床しきは此羽織の縫目の内ぞ床しきと襟際附際切ほどき見れば内には袈裟衣珠数迄添て入置たはコリヤとふじやコハいかにと𩊆る人々惟盛卿ホウさもそふずさもあらん保元平治の其昔我父小松の重盛池の禅尼と云合せ死罪に極る頼朝を命助て伊東へ流人其恩報じに惟盛を助て出家させよとの鸚鵡返しか恩返しかハアヽ敵ながらも頼朝は遖の大将見し玉だれの内よりも心の内の床しやと衣を取て是迚も父重盛の御かげと戴給ふぞ道理なる人々はつと悦び涙手負の権太は這出摺寄及ぬちゑで梶原を謀つたと思ふたがあつちが何にも皆合点思へば是迄衒たも後は命を衒るゝ種としらざる浅間しと悔に近き終り際惟盛卿も是迄は仏を衒て輪廻を離ず離る時は今此時と髻ふつつと切給へば内侍若君お里はすがり俱に尼共姿をかへ宮仕へを赦してと願へど叶はず打払ひ〱内侍は高雄の文覚へ六代が事頼まれよお里は兄に成かはり親へ孝行肝要と立出給へば弥左衛門女中の供は年寄の役と諸共旅用意手負をいたはる母親がノウこれつれない親父どの
ねど見し玉簾の内や床しきと有けるをぞの返しとて人も知ツたる此哥を物々しう書イたは不思議殊に梶原は和哥に心を寄セし武士内や床しきは此羽織の縫目の内ぞ床しきと襟際附ケ際切ほどき見れば内には袈裟衣珠数迄添て入レ置イたはコリヤとふじやコハいかにと𩊆る人々惟盛卿ホウさもそふずさもあらん保元平治の其昔我父小松の重盛池の禅尼と云合せ死罪に極る頼朝を命助ケて伊東へ流人其恩報じに惟盛を助ケて出ツ家させよとの鸚鵡返しか恩返しかハアヽ敵ながらも頼朝は遖の大将見し玉だれの内よりも心の内の床しやと衣を取ツて是迚も父重盛の御かげと戴給ふぞ道理なる人々はつと悦び涙手負の権太は這出摺寄及ぬちゑで梶原を謀つたと思ふたがあつちが何にも皆合点思へば是迄衒たも後チは命を衒るゝ種としらざる浅間しと悔に近き終り際惟盛卿も是迄は仏を衒て輪廻を離ず離る時は今此時と髻ふつつと切リ給へば内侍若君お里はすがり俱に尼共姿をかへ宮仕へを赦してと願へど叶はず打払ひ〱内侍は高雄の文覚へ六代が事頼まれよお里は兄に成リかはり親へ孝行肝要と立出給へば弥左衛門女中の供は年シ寄リの役と諸共旅用意手負をいたはる母親がノウこれつれない親父どの
地:縫目の,ウ:縫目の地/ウ
ウ:襟際ウ
ハル:見ればハル
詞:コリヤ詞
地:コハい,ハル:コハい地/ハル
色:惟盛卿色
詞:ホウ詞
地色:見し,ハル:見し地色/ハル
ウ:心のウ
ウ:衣をウ
上:父上
フシ:戴給ふぞフシ
地:人々,ハル:人々地/ハル
中:悦び中
ウ:手負のウ
ハル:這出ハル
色:摺寄色
詞:及ぬ詞
地:思へば,ハル:思へば地/ハル
ウ:後はウ
中:衒るゝ中
ウ:種とウ
フシ:浅間しフシ
地:悔に,ウ:悔に地/ウ
ハル:近きハル
ウ:惟盛卿もウ
ウ:仏をウ
ウ:離るウ
ハル:髻ハル
色:切給へば色
ウ:内侍ウ
ウ:お里はウ
ウ:俱にウ
ウ:姿をウ
ウ:宮仕へをウ
ウキン:打払ひウキン
色:〱色
詞:内侍は詞
地色:お里は,ウ:お里は地色/ウ
ウ:親へウ
ハル:肝要とハル
ウ:立出給へばウ
詞:女中の詞
地色:役と,ウ:役と地色/ウ
ウ:手負をウ
ハル:母親がハル
詞:ノウ詞