晩には内の弥助と祝言さす程に世間晴て女夫になれとおつしやつたが日が暮てもお帰りないは虚言かいなヲあのいやる事はいの何のうそであろぞ器量のよいを見込に熊野参りから連て戻つて氣も心も知と弥助といふ我名を譲りぬしは弥左衛門と改めて内の事任せて置しやるはそなたと娶す兼ての心けふは俄に役所から親父殿を呼にきて思はぬ隙入迎ひにやろにも人はなしサイナ折悪ふ弥助殿も方々から鮓の誂仕込の桶がたるまいと明桶取にいかれましたもふ戻らるゝでござんしよと噂半へ明桶荷ひ戻る男の取なりも利口で伊達で色も香もしる人ぞしる優男娘が好た厚鬢に冠着ても憎からず内へ入間も待兼てお里は嬉しくアレ弥助様の戻らんした待兼た遅かつた若やどこぞへ寄てかと氣が廻つた案じたと女房顔していふて見る流石鮓やの娘迚早い馴とぞ見へにける母はにこ〱笑ひを含弥助殿氣にかけて下さんな此吉野郷は弁才天の教によつて夫を神共仏共戴て居よと有天女の掟其かはり程悋氣もふかい又有やうは親の孫瓜のつるにではござらぬと云くろむれば是はまあ却て迷惑段々お世話の上大切なお娘御迄下されお礼の申様もござりませぬ去ながら兎角お前には弥助殿〱と
晩には内の弥助と祝言さす程に世間ン晴て女夫になれとおつしやつたが日が暮レてもお帰りないは虚言かいなヲあのいやる事はいの何のうそであろぞ器量のよいを見込ミに熊野参りから連て戻つて氣も心も知ルと弥助といふ我名を譲りぬしは弥左衛門と改めて内の事任せて置カしやるはそなたと娶す兼ての心けふは俄に役所から親父殿を呼にきて思はぬ隙入迎ひにやろにも人はなしサイナ折悪ふル弥助殿も方々から鮓の誂仕込の桶がたるまいと明キ桶取リにいかれましたもふ戻らるゝでござんしよと噂半へ明キ桶荷ひ戻る男の取なりも利口で伊達で色も香もしる人ぞしる優男娘が好た厚鬢に冠着ても憎からず内へ入ル間も待兼てお里は嬉しくアレ弥助様ンの戻らんした待チ兼た遅かつた若やどこぞへ寄ツてかと氣が廻つた案じたと女房顔していふて見る流石鮓やの娘迚早い馴とぞ見へにける母はにこ〱笑ひを含弥助殿氣にかけて下さんな此吉野郷は弁才天の教によつて夫トを神共仏共戴て居よと有ル天女の掟其かはり程悋氣もふかい又有リやうは親の孫瓜のつるにではござらぬと云くろむれば是はまあ却て迷惑段々お世話の上大切ツなお娘御迄下されお礼の申シ様もござりませぬ去ながら兎角お前には弥助殿〱と
地:もふ,ハル:もふ地/ハル
中:ござんしよ中
ハルフシ:噂ハルフシ
ハル:半へハル
ハル:明桶ハル
中:取なりも中
ウ:利口でウ
ウ:色もウ
ウ:しるウ
ウ:厚鬢にウ
ハル:冠ハル
フシ:憎からずフシ
地:内へ,中:内へ地/中
ハル:待兼てハル
ウ:お里はウ
ウ:弥助様のウ
色:戻らんした色
詞:待兼た詞
地:案じた,ウ:案じた地/ウ
ハル:女房顔ハル
サハリ:流石,中:流石,キン:流石サハリ/中/キン
地色:母は,ウ:母は地色/ウ
ハル:にこ〱ハル
色:含色
詞:弥助殿詞
地:つるにでは,ウ:つるにでは地/ウ
ハル:ござらぬハル
詞:是は詞