知盛声を上天皇はいづくにましますお乳の人典侍の局と呼はり〱どうど伏ヱヽ無念口惜や是程の手によはりはせじと長刀杖に立上りお乳の人我君とよろぼひ〱かけ廻れば一間を踏明九郎判官帝を弓手の小脇にひん抱局を引付つつ立給へばあら珍らしやいかに義経思ひぞ出る浦浪に知盛が沈し其有様に又義経も微塵になさんと長刀取直しサア〱勝負と詰寄ば義経少もさはぎ給はずヤア知盛さなせかれそ義経が云事有と帝を典侍の局に渡ししづ〱と歩出其方西海にて入水と偽り帝を供奉し此所に忍び一門の怨を報はんとは天晴〱我此家に逗留せしよりなみ〱ならぬ人相骨柄さつする所平家の落人弁慶に云含帝をさぐる斗略過て踏こへしにはたして武蔵が五躰のしびれ其上我に方人の躰を見せ心をゆるさせ討取術我其事を量しり艀の船頭を海へ切込裏海へ船を廻しとくより是へ入こんで始終くはしく見届帝も我手に入たれ共日の本をしろしめす万乗の君何条義経が擒にするいはれあらん一旦の御艱難は平家に血を引給ふ故今某が助奉つたる迚不和なる兄頼朝も我誤とはよも云まじ必々帝の事は氣づかはれそ知盛と聞嬉しさは典侍の局ヲヽあの詞に違なく先程より義経殿段々の情にて天皇の御身の上はしるべの方へ渡さふと
知盛声を上天皇はいづくにましますお乳の人典侍の局と呼はり〱どうど伏ヱヽ無念口惜や是程の手によはりはせじと長刀杖に立上りお乳の人我君とよろぼひ〱かけ廻れば一ト間を踏明ケ九郎判官帝を弓手の小脇にひん抱局を引キ付ケつつ立給へばあら珍らしやいかに義経思ひぞ出る浦浪に知盛が沈し其有様に又義経も微塵になさんと長刀取直しサア〱勝負と詰寄レば義経少シもさはぎ給はずヤア知盛さなせかれそ義経が云事有と帝を典侍の局に渡ししづ〱と歩出其方西海にて入水と偽り帝を供奉し此所に忍び一チ門の怨を報はんとは天晴〱我此家に逗留せしよりなみ〱ならぬ人相骨柄さつする所平家の落人弁慶に云含帝をさぐる斗略過て踏こへしにはたして武蔵が五躰のしびれ其上我に方人の躰を見せ心をゆるさせ討取ル術我其事を量しり艀の船頭を海へ切込ミ裏海へ船を廻しとくより是へ入こんで始終くはしく見届帝も我手に入たれ共日の本をしろしめす万乗の君何ン条義経が擒にするいはれあらん一ツ旦の御艱難は平家に血を引給ふ故今某が助ケ奉つたる迚不和なる兄頼朝も我誤とはよも云まじ必々帝の事は氣づかはれそ知盛と聞嬉しさは典侍の局ヲヽあの詞に違なく先キ程より義経殿段々の情にて天皇の御身の上はしるべの方へ渡さふと
色:声を上色
詞:天皇は詞
地色:呼はり,ハル:呼はり地色/ハル
色:どうど色
詞:ヱヽ詞
地色:よろぼひ,ハル:よろぼひ地色/ハル
中:かけ廻れば中
ウ:一間をウ
ウ:判官ウ
ハル:局をハル
フシ:引付つつ立給へばフシ
フシ:つつ立給へばフシ
地:あら,ハル:あら地/ハル
色:義経色
謡:思ひぞ,詞:思ひぞ謡/詞
ハル:知盛がハル
ナヲス:取直し,色:取直しナヲス/色
詞:サア詞
地色:義経,ハル:義経地色/ハル
色:給はず色
詞:ヤア詞
地色:帝を,ウ:帝を地色/ウ
フシ:しづフシ
詞:其詞
地色:我,ウ:我地色/ウ
ハル:なみハル
ウ:さつするウ
色:落人色
詞:弁慶に詞
地色:始終,ウ:始終地色/ウ
ハル:入たれ共ハル
ウ:日の本をウ
ウ:何条ウ
中:いはれ中
ウ:一旦のウ
ハル:引給ふハル
ハル:給ふ故ハル
ウ:今ウ
ウ:不和なるウ
ウ:我ウ
中:云まじ中
ウ:必ウ
ウ:はウ
ハル:聞ハル
中:典侍の局中
詞:ヲヽ詞