駿殿
此家を落給ふかコハ何ゆへと身のとがと思ひよらねばいふ人もこたゆる人もこずへからす泣てわびする土佐坊を右を左へ持なをしじたいこいつがにげ廻りひまた故お供におくれた己首の飛方が我君様の御行方よい投算なげざんと引つかみ直平天ちよつぺいあたま頭巾づきんごしすぽりとぬいて空へ投こけたる方はたつみの間うばらおはらの方でも有まい元は牛若うしの方巳午みむまもよしや吉野も氣遣きづかひ爰に戌亥いぬいとりならで程は有まい追付んと忠義と思ひせし事も今に成ては未申ひつじさる思ひちがひの荒者があら砂蹴すなけひゞきはとう〱どろ〱〱ふみしめ〱踏ならし義経ぎけいの跡をとらこく風をおこして追てゆく第二風につれて聞ゆるときの声物すさましき氣色けしきかなきのふは北闕ほくけつ守護しゆごけふは都を落人おちうどの身と成給ふ九郎義経数多あまたの武士もちり〲に成亀井六郎駿河次郎主従しう〲三人大和路へ夜深よぶかいそぐ旅の空跡ふり返れば堀川の御所も一の雲けぶり浮世は夢の伏見道稲荷いなりの宮居にさしかゝれば亀井六郎おくればせにかけ付正しくあ鯨波ときのこへは鎌倉勢うしろを見するも無念也御ゆるしかうむつて一合戦かつせん仕らんと申ればいやとよ重清都にてしうと川越太郎がいつし鎌倉殿のいきどをり白に云ひらけうの君の

ウ:何ゆへ

中:人も

ウ:詫

ハル:土佐坊をハル

ウフシ:右をウフシ

詞:じたい,ノル:じたい詞/ノル

地:よい,ウ:よい地/ウ

ハル:直平ハル

ウ:すぽりと

色:空へ

詞:こけたる,ノリ:こけたる詞/ノリ

地:うばら,ウ:うばら地/ウ

ハル:有まいハル

ウ:元は

ウキン:丑のウキン

ハルキン:巳午もハルキン

中:吉野も,ウ:吉野も中/ウ

色:氣遣

詞:爰に,ノリ:爰に詞/ノリ

地:忠義と,ハル:忠義と地/ハル

ウ:今に

ウ:とう〱

合:どろ〱

キン:義経のキン

地:吹,ハル:吹地/ハル

フシ:つれてフシ

色:ときの声

ウ:物すさましき

ウフシ:氣色かなウフシ

地色:きのふは,中:きのふは地色/中

ウ:都を

ハル:身とハル

中:義経

ウ:数多の

ハル:駿河ハル

中:主従,ウ:主従中/ウ

ハル:跡ハル

ウ:御所も

色:雲煙

ウ:夢の

フシ:稲荷のフシ

地色:亀井,ハル:亀井地色/ハル

ウ:おくればせに

色:かけ付

詞:正しく

地:御赦を,ウ:御赦を地/ウ

ウ:仕らん

ハル:申上ればハル

色:重清

詞:都にて