女性アスリートの諸問題

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スポーツにおける相対的エネルギー不足 Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S)

2007年にアメリカスポーツ医学会が定義した女性アスリートの三主徴 (FAT) とは、摂食障害の有無に関わらない「低エナジー・アベイラビリティー」・「視床下部性無月経」・「骨粗鬆症」の3つを指します。その後、2014年に国際オリンピック委員会 (IOC) が提示した「スポーツにおける相対的エネルギー不足 (RED-S) 」では、相対的エネルギー不足により様々な健康問題を引き起こすとされています。

RED-S現象はFATにおける3つの症状を含め、免疫や代謝、心血管系、成長・発達などといった生理的機能への悪影響が引き起こされるため、アスリートにおける健康やパフォーマンスに影響を及ぼしますが、RED-Sは女性アスリートに限らず男性アスリートにも当てはまるとされています。

スポーツにおける相対的エネルギー不足
図1. FATの概念とRED-Sによって引き起こされる健康問題

RED-Sの予防と治療には、エネルギー摂取量の増加や運動量の減少による低エナジー・アベイラビリティーを改善することが非常に重要です。また、2014年IOCスポーツ栄養に関する声明では「RED-Sにおけるスポーツ参加リスク評価」も示されています。“高リスク”カテゴリーの競技者は競技に参加してはいけない、“中リスク”カテゴリーの競技者は治療計画があり指導の下であれば競技に参加しても良いとされています。また、リスク評価は適合性の評価と臨床状態の変化を確認する為に定期的(1~3ヶ月)ごとに行うことが望ましいとされています。
(この評価を日本のスポーツ現場で応用するのは難しい面もあります)

表1.  RED-Sにおけるスポーツ参加リスク評価

高リスク:赤信号(参加してはいけない) 中リスク:黄色信号(参加には注意が必要)低リスク:青信号(参加して良い)
  • 神経性食欲不振症や深刻な摂食異常
  • 低エナジー・アベイラビリティーに関連した深刻な心理、生理的状態
  • 脱水に繋がる極端な減量法により誘発された不安定な血行動態または命にかかわる状態
  • 長期的な低体脂肪異常:DXA, ISAK / 非ISAK身体測定法によって評価
  • 大幅な減量(体重の5-10%/月)
  • 青年期における成長と発達の減衰
  • 月経周期:6ヶ月以上にわたる視床下部性無月経
  • 初潮年齢16歳以上
  • 男性におけるホルモンプロファイル異常
  • 骨密度の低下(年齢別平均骨密度に対するマイナス標準偏差値以下である)
  • ホルモン分泌、月経異常または低エナジー・アベイラビリティーによる疲労骨折経験が1回以上
  • アスリートにおける低エナジー・アベイラビリティーと摂食障害、心電図の異常、臨床検査値の異常に関連した身体/心理的合併症
  • 長期的な相対的エネルギー不足
  • 摂食障害行動による他メンバーへの悪影響
  • 治療の進展不足または服薬不従順
  • 適切なエナジー・アベイラビリティーに伴う健康的な食習慣
  • 正常なホルモン分泌、代謝機能
  • 競技や年齢、民族に伴う健康的な骨密度
  • 健康的な運動器官

DXA: 2重エネルギーエックス線吸収測定法(骨密度検査)
ISAK: 国際キンアンソロポメトリー推進学会

参考文献
Mountjoy, M., Sundgot-Borgen, J., Burke, L., Susan, C., Naama, C., Constance, L., Nanna, M., Roberta, S., Kathrin, S., Richard, B., Arne, L. (2014). “The IOC consensus statement: beyond the female athlete triad—Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S).” British journal of sports medicine, 48(7):491-497.

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