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睡眠とスポーツパフォーマンス

早稲田大学スポーツ科学学術院教授
スポーツドクター(精神科) 内田直

スポーツ科学の中で睡眠の重要性はこれまでも認識されてきています。しかしながら、過去の状況をみると、必ずしもアスリートにとってどのような睡眠が必要なのか、またどのような睡眠がアスリートのパフォーマンスと関連しているのかについては必ずしも十分に理解されていなかったように思います。しかし、近年睡眠学とスポーツ科学の融合がされ始め、国立スポーツ科学センターにおいても睡眠研究が行われるようになってきました。

さて、アスリートは十分な睡眠が必要です。こういうと、「当たり前じゃないか。」という声が聞こえてきそうですが、ここにスタンフォード大学の女性睡眠研究者Cheri Mahの研究を紹介します。彼女は、スタンフォード大学バスケットボール部員に毎日10時間以上の睡眠をおよそ1ヶ月半にわたって、毎日とるように指示しました。そして、その間のバスケットボールに関するパフォーマンスの変化を記録しました。その結果が図に示したものです。

バスケットボールに関するパフォーマンスの変化

この結果を見ますと、毎日長く眠ることにより、足が速くなり、フリースローやスリーポイントシュートがより入るようになり、そして練習中や試合中のやる気が出るようになっていることが分かります。

研究者のCheri Mahはこの結果について、アスリートは慢性の睡眠不足に陥っている場合が多く、トレーニングを日常的にしているアスリートは通常の大学生よりも長く寝る必要があるのだと述べています。そして、長く眠ることにより本来持っている力を出しきることが可能になってくるとも言っています。更に興味深いのは、ダッシュのスピードの変化を経時的にみると、一ヶ月半にわたってどんどんと早くなっていくことです。これは、2-3日長く寝ただけでは完全の睡眠不足からの回復は得られないことを示唆してくるように思えます。一番大切なことは、規則的で充分な量の睡眠をとることです。アスリートは是非このことを脳裏に焼き付けて欲しいと思います。

これと類似した研究を早稲田大学でも行っています。競走部の駅伝選手が自発的に取る睡眠を測定したところ、日中の走行距離と非常に良い相関がありました。すなわち、長く走る期間(合宿期など)には24時間の中での睡眠時間は長くなり、合宿の合間の回復期ではむしろ短くなります。回復期は自由時間も多く、昼寝をする時間はむしろ多いのですが、睡眠時間は短くなるわけです。これは、同じアスリートでも高強度のトレーニングを積んだ日は、より多くの睡眠をとり身体も精神も回復させる必要が有ることを裏付けるデータだと思います。

アスリートの皆さんは、トレーニング、栄養、とともに、生活の3要素の一つである睡眠にも十分に留意した生活をおくるようにしましょう。

参考文献
Mah, C. D., Mah, K. E., Kezirian, E. J., & Dement, W. C. (2011). The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players. Sleep, 34(7), 943-950.

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