コンディショニングと栄養

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アスリートのメンタルコンディショニング

早稲田大学スポーツ科学学術院教授
公益財団法人日本サッカー協会 JFAインストラクター 堀野博幸

アスリートのパフォーマンス向上には、負荷の高いトレーニングと「心と身体のコンディショニング」が必要不可欠となります。

図1に示したように、身体づくりの土台(Individual/Fundamental)が備わることではじめて、厳しいトレーニングが可能となります。特に、トップアスリートは、オーバーロードの原則を念頭に、時にはこれ以上負荷をかけると身体が壊れてしまうかもしれない「ギリギリのライン」を攻めていくことでパフォーマンス向上を図ります。コンディショニングは、身体づくりとトレーニングが積み上げられてこそ、重要な意味を持ってくるのです。

アスリートのパフォーマンスピラミッド

1.こころのパフォーマンスピラミッド

こころにも、身体と同様に「パフォーマンスピラミッド」があります。積極的思考や目標設定、自発性と自己認識など「こころづくりの土台」を築いた上ではじめて、こころを鍛えるトレーニングが可能になります。アスリートは、厳しいトレーニングの中で自分を追い込み、極限での自己コントロールや闘争心、ストレスマネジメント能力などの心理的限界の向上に挑んでいきます。このプロセスがなければ、試合本番で実力を発揮できる強靭な「こころの力」は養うことはできません。

2.試合に向けたメンタルコンディショニング

鍛え上げた強靭な「こころの力」も、厳しいトレーニング期には疲労します。そのため、試合本番で実力を発揮するためには、疲労した「こころ」に、活力と余裕を取り戻すことが重要となります。つまり、本番に向け「もっとトレーニングがしたい。早く試合をしたい」といったプレーや競技への渇望を、こころの中に溢れさせることが大切になるのです。そのために、ある時期からは試合に向け、身体的負荷に加え「こころの負荷」も段階的に軽減していきます。

具体的には、下記の4つに留意することで、こころを落ち着かせ、こころの活力を取り戻すことが重要となります。

1)日常のルーティンを確立させ、こころのエネルギーをトレーニングに集中させる
2)リフレッシュや休養に充てる時間を確保し、こころのエネルギーを再び充満させる
3)書き綴った練習日誌を見返し(日誌のない人は記憶をたどり)、これまでの取り組みや「成長プロセス」を確認することで、自己効力感を高める
4) 積み上げた技術・戦術的ポイントを整理し、本番のプレーイメージを鮮明化することで、不安を取り除き最後の調整を行う

3.当日のメンタルコンディショニング

いよいよ、試合本番の日です。コンディショニングした「こころ」の最後の仕上げに入ります。本番に向けて、様々な思いが頭の中をよぎっていることでしょう。当日も、こころのストレスを最小化するため、日常のルーティンを心がけ、本番に向けてこころにエネルギーを充満させていきましょう。

パフォーマンスの逆U字曲線

しかし、やる気の高まりと同時に、不安や緊張などが交錯して緊張と興奮のレベルが過剰に高まることがしばしば起こります。そのような場合には、図2に示した「パフォーマンスの逆U字曲線」を思い出しましょう。緊張や興奮のレベルが高まりすぎてはいないか、「いまの自分のこころの状態」を自己分析してみて下さい。緊張や興奮が過度に高まっていれば、大きな深呼吸を繰り返したり、好きなスローテンポの曲を聴いたりするなどの「リラクセーションテクニック」を使って、緊張や興奮を最適なレベルに調整していきます。

もし不安が消えなければ、「よし、考えるのはこれで終了!」と自ら決めておいたキーワードを使ったセルフトーク(独り言)を用い、不安に対する思考を停止させます(ソートストッピング:thought stopping)。あるいは、「うまくいかなかったらどうしよう」などのネガティブな発想を、「尋常でない努力を続けてきたからこそ、今ここに立てるんだ。この緊張と不安が、自分をさらに成長させてくれる。ならば、もっと緊張してやろう。そしてもっと大きく成長してやる。」と、成長の壁を乗り越えて成長した自分をイメージしながら、発想をポジティブに変換することも効果的です。

緊張や不安の種類、適したリラクセーションの方法は、一人ひとり異なります。緊張する試合を経験する中で、自分の「こころの特徴を知り」、「いまのこころの状態を分析」できれば、あとは自分に適した方法で「こころの状態をコントロール」することができるようになっていきます。

アスリートの皆さんのご活躍を応援しています。

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