テーベ・私人墓の発掘調査

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ここにおさめられた文章は、早稲田大学エジプト学研究所が発行した「エジプト調査十年の歩み」(1982年)、「エジプト調査の歩み(II)」(1989年)などからの抜粋です。


テーベ・岩窟墓の発掘調査:目次

はじめに

 ルクソール西岸クルナ村と呼ばれる地区の丘陵中腹には、新王国時代の岩窟墓群がひしめきあって建造されている。「魚の丘」の彩色階段、彩壁画との比較研究を目的として、1980年12月から第18王朝の貴族の墓の清掃作業と比較調査を開始した。これまでに 241号墓、 317号墓、 128号墓、 129号墓、 333号墓などの清掃と調査を行っている。

 また、第18王朝の王アメンヘテプ3世によって建造された「魚の丘」の彩色階段や、建造物の彩壁画との比較資料収集のため、墓の清掃調査と並行してクルナ村の貴族墓の観察調査を行った。これまでに第18王朝後半に年代づけられる23基の墓の比較調査を行っている。

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アル=コーカ地区

[241号墓の調査]
 「魚の丘」の彩色階段、彩壁画との比較研究の目的で、われわれは第18王朝の貴族の墓の清掃調査を行った。このテーベ私人墓 241号は、トトメス3世時代(アメンヘテプ3世の1世紀前)のアアフ・メスという名の書記のもので、1930年に前室のみの調査が英国人によって行われてはいたが、奥室は未発掘であり、新発見の可能性もある墓であった。調査の結果は、奥室には壁画も碑文もなく、またその床面は後代に作られた墓のせいで崩れ落ちていることが分ったが、遺物はほとんど得られなかった。一方、前室の壁には色彩豊かな絵が描かれていた。図柄は貴族の墓に一般的なもので、農耕、狩猟や漁撈、宴会や葬祭の場面、さらに天井には七宝の連続文が描かれている。調査はこの壁画の絵と文字のトレース、墓全体の正確な実測図作りを中心に行われた。なお、調査中の墓の入口付近に落ち込みが発見され、この墓自体も、それ以前にあった別の墓の一部を壊して作られていることが判明した。

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シャイク・アブド・アル=クルナ地区

[128, 129, 317, 318号墓の調査]
  318号墓は、第18王朝トトメスV世治世ごろに築かれた岩窟墓である。墓主のアメン・メスは「アメン神の死者の町の石工」の称号を持つ。墓は、前室と奥室から成り、天井を含めて全壁面に彩色画が描かれていた。前室には、オシリス神と西方の女神とを礼拝する墓主と妻、農耕、ビール作り、ワイン作りを描いた壁画がある。奥室への入り口は軒蛇腹をもつ門を象って造られ、アヌビス神と東方・西方の女神を礼拝する墓主夫妻の姿が浮き彫りされている。奥室には、供物台の前に座る墓主の図や宴会の場面など、比較的保存の良い壁画が残されていた。

  318号墓は、前室西壁面に開けられた狭いトンネルで 129、 128、 317号墓とつながっている。 317号墓では多数のミイラが発見され、これらのミイラは形質人類学の専門家によって計測・レントゲン撮影等の調査が行われた。

 これらの墓の調査中、木製のバー像、ホルス像、ファイアンス製の護符、スカラベ、多数のビーズ、土器等が出土した。また、 129号墓前庭部東側で未登録の墓が発見され、W2号墓と仮称することにした。Wは早稲田大学の頭文字である。

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ドゥラ・アブ・アル=ナガ地区

[333, W-4, W-5, W-6号墓]
 第18王朝の壁画比較研究のため、 333号墓および 334号墓の調査を計画した。墓の位置があらかじめ確認できなかったので、墓の存在が推定される通称「マンダラ山」と呼ばれる小丘の南斜面から調査に着手した。この結果、 333号墓の位置を確認すると同時に、遺跡地図に記されていない3基の墓を検出することができた。3基の墓には発見順にW4、W5、W6という仮名称を与えた。

  333号墓は南斜面の中腹に位置し、発掘時には前室の天井が崩落していた。研究書によると、この墓は、第18王朝に年代付けられているが、墓主の名前は知られていない。前室には宴会、西方の女神とオシリス神を礼拝する墓主の姿などを描いた壁画が、奥室には供物と人物の壁画が残っていた。

 W4号墓は、前庭部、前室、奥室から成り、壁画は描かれていない。前庭部からは、墓主アメン・エム・ウィアの名が刻まれた石柱2本、礎石、男性彫像上部など貴重な遺物が出土した。W5号墓前室には葬送儀礼の場面が、W6号墓にはパピュルスの茂みで鳥を捕らえる場面が残存していたが、いずれもあまり保存状態が良くない。

 W5号墓とW6号墓は、かつて記録に残されながら位置がわからなくなってしまった墓である可能性が高く、有意義な再発見になるかもしれない。

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Aerial view of the site 発掘地の航空写真


Excavation of the tomb 発掘風景


Mural painting of the tomb 私人墓内壁画


Painted mural fragment of the tomb 私人墓内出土壁画片


Mummy found at the tomb 私人墓から発見されたミイラ


Human figure found at the tomb 私人墓より出土した彫刻像



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(First drafted: 15 February 1996)
(Last revised: 25 January 2000)