ゲベル・シルシラの石切り場


Click here for English version
英語版は ここ をクリックしてください


Copyright (C) Institute of Egyptology, Waseda Univeristy
All rights reserved.

(First drafted: 15 February 1996)
(Last revised: 8 April 2001)


ゲベル・シルシラの石切り場

Gebel Silsilah, QuickTimeVR Panorama ゲベル・シルシラ、QuickTimeVR Panorama

Photos of the Quarry at Gebel Silsilah East ゲベル・シルシラ東岸、写真集

Photos of the Quarry at Gebel Silsilah West ゲベル・シルシラ西岸、写真集


ゲベル・シルシラへの行き方(遠藤孝治)

■1. 場所
ナイル河の両岸が狭く切り立った断崖を成すゲベル・シルシラは、良質な砂岩の採取先として古代エジプトからローマ時代に至るまでの間、大規模な石切り作業が営まれた場所であり、現在そこを訪れると、古代の石切り場の跡だけでなく、製作途上にあるスフィンクス像やステラ、彩色画で飾られた祠などの歴史的・宗教的に意義の深いモニュメントの数々を見ることができます。地理的にはアスワンから北に約60km(エドフから南に約35km、コム・オンボから北に約20km)に位置し、ルクソールからは南に120km以上も離れています。東岸をアスワンから車で普通に走ったならば1時間半弱程度で着く場所ですが、ゲベル・シルシラ西岸へはエドフまで北上してから橋を渡って南下することになるため、さらに1時間近くかかってしまいます。私たちは2000年の夏にゲベル・シルシラの石切り場をアスワンのホテルから3日間訪れました。行き方に関しては、事前に早稲田大学エジプト学研究所の長谷川奏先生、河合望氏にいろいろとご教示いただきました。ここに記して感謝申し上げます。

■2. 事前の準備
1997年冬のルクソールでのテロ事件以来、エジプトでは旅行者の安全のために一部の地域の観光が厳しく規制される状況が続いています。ゲベル・シルシラのあるアスワンからルクソール間でも、銃器を所持したツーリスト・ポリスの車とともに隊列を組んで移動することが義務付けられています(これをコンボイと呼んでいます。)が、アスワンから毎日定期的に発車する通常のコンボイでは、主要な観光遺跡であるコム・オンボ、エドフ、エスナ以外の場所に立ち寄ることができません。これら3つの遺跡の団体見学でさえも、同行する警官によって見学時間を強制的に制限されますので、場合によっては一箇所につき30分足らずの忙しいスケジュールになってしまいます。
そこで、ゲベル・シルシラのような比較的マイナーな遺跡に行く場合には、自分たちだけ専用に特別なコンボイを要請することになります。移動のための車は、町中を走っているタクシー・ドライバーと交渉しても良いと思われますが、旅行代理店の方を通して依頼することもできるでしょう。トラブルを少なくするために私たちは後者の方法を選択しました。同行していただくことになったツーリスト・ポリスの方とも現地で交渉をおこないましたが、至って簡単に英語で出発日の時間と場所を申し合わせるだけのことでした。このような過程を経て、ゲベル・シルシラへは私たちとともに旅行代理店側から現地交渉人、運転手、ツーリスト・ポリス側からは2名が一台の車に乗り合わせて行くことになりました。結果的に私たちよりもエジプト人の方が多くなってしまい、賑やかな道中でした。
ゲベル・シルシラの近辺には大きな町がありませんので、お弁当と飲み物を携帯することをお薦めします。私たちの場合は、ホテルでランチ・ボックスを頼んだり、果物を買って行ったりしました。同行していただく旅行代理店の方や警察の方の分のお弁当もこちらで用意しました。大抵のガイドブックには残念なことにゲベル・シルシラという名前すら出ていません。英語版のブルーガイドには、ホルエムヘブ王のスペオスなどが図版付きで出ていたりします(Blue Guide, Egypt (London, 1988) pp.614-619)。私たちは、William J. Murnane: The Penguin Guide to Ancient Egypt (Harmondsworth, Revised edition 1996)を持参しましたが、特にゲベル・シルシラの地図(図168)が役に立ちました。他にも専門書になりますが、R. Klemm und D. D. Klemm: Stein und Steinbruche im Alten Aegypten (Belrin, 1993) の地図はかなり正確で便利でした。

■3. 行き方
現地にはルクソールからアスワン間の1/1,000,000の広域地理図を持参しましたが、縮尺が小さすぎてゲベル・シルシラの位置が正確に分からず、あまり役に立ちませんでした。また、アスワンに住む旅行代理店の方や警察の方が同行していただいたので、そのうちの誰かがゲベル・シルシラへの行き方を知っているものと信じこんでいたのですが、結局は誰も知りませんでした。こういったことはエジプトでは良くある話です。アスワンから東岸を北上すると、道路脇にはコム・オンボまで何キロメートルという標識が連続して見られ、やがてコム・オンボを過ぎると今度はエドフまで何キロメートルという標識が見られます。ゲベル・シルシラはコム・オンボとエドフの間にある遺跡ですが、残念ながら道路標識で場所が示されておりませんので、簡単には見つけることができません。私たちは初日にゲベル・シルシラの東岸を訪れる予定でしたが、場所が分からず、気が付いたら通り過ぎてエドフにある橋まで北上してしまっていました。

●3-1.東岸
ゲベル・シルシラの東岸では、アメンヘテプ三世時代やアマルナ時代の坑内掘りの石切り場や、ローマ時代の広大な露天掘りの石切り場、古代の港、製作途上のスフィンクス像、ステラなどを見ることができます。しかしながら、これらのモニュメントを道路側から探すことは困難です。ナイル河を船で移動したならば、西岸にあるいくつかの祠とホルエムヘブ王のスペオスがはっきりと確認されるはずですが、車で移動の場合、道路が遺跡のある岩山の背面を走っているために全く気が付きません。そこで、私たちが遺跡の目印としたのは発電所にあるような大きな鉄塔でした。これは初日に間違ってゲベル・シルシラ西岸に行ってしまった時に東岸の目標物として考えたものでした。
アスワンから北に約40kmでコム・オンボの町を過ぎ、そこから10〜15kmもしたら(時間にして10〜15分程度)、進行方向の左手に見える岩山の上に立つ大きな鉄塔を探します。鉄塔は道路から約300mくらい離れたところにあると思います。また、鉄塔が左手に見える場所では道路のすぐ右側に電車の線路が平行に走っているはずです。そして、鉄塔を見つけてしばらくすると左手に入っていくことのできる小さなあぜ道がありますので、そこを左折して岩山の方に向かいます。すぐ北にはカジュージュという村があるのですが、そこまで行ってしまったらすでにゲベル・シルシラを通り過ぎています。あぜ道は車一台分の幅しかなく、隣にナイル河から続く水路が掘られています。奥に入っていくと途中に分岐点があり、水路の右側に行くとポンプ・ステーションにたどり着いてしまいますので、水路の左側のあぜ道を進みます。そうしてしばらくすると左手にある断崖にアメンヘテプ4世のステラが目に入ってきて、遺跡の広がる岩山の北の端に到着することができます。遺跡の入口にはガード小屋が一軒建てられていましたが、チケット・オフィスはありませんでした。
ゲベル・シルシラ東岸の見学には、遺跡を端から端まで歩きまわるだけでもまる一日近くかかると思います。私たちは比較的涼しい朝8時頃から午後1時くらいまで見学しましたが、遺跡全体をおよそ回り終えるのに2日を要しました。見学には遺跡のガードさんが一緒に同行してくれました。坑内掘りの石切り場跡は特に見ごたえがあります。コウモリの住み家になっている場所もあり、手持ちライトは必需品です。南の端にあるローマ時代の広大な露天掘りの石切り場も見どころの1つですが、こちらはガードさんに門を開けてもらわないかぎり行くことができません。ガードさんもお昼ぐらいになると疲れて帰りたがるので、時間には注意が必要です。

●3-2.西岸
ゲベル・シルシラ西岸では、ホルエムヘブ王のスペオスをはじめとして、私人の祠やステラ、露天掘りの石切り場跡などを見ることができます。しかしながら、西岸にあるこれらのモニュメントも道路側から探すことが困難です。車でアスワンまで行く場合は、西岸に渡るための橋がエドフまでないため、まずエドフまで北上し、そこで橋を渡ってから南下することになります。アスワン・ダムにかかる橋を渡って西岸の道路を北上していくという方法もあるかもしれませんが、セキュリィティ上、問題がないかどうか分かりません。西岸には東岸と違って小さな道しかなく、道路標識もありませんので、自分たちがどこを走っているのか分からなくなります。私たちの場合は、村人に「ゲベル・シルシラはどこですか」と尋ねながら探しましたが、結局、ナーガ・アル=ハンマームという村で現地の人に同乗してもらい、その村から少し南下したところに遺跡の入口を見つけました。
車で入口に入っていくと、小さなチケット・オフィスがあり、ホルエムヘブ王のスペオスの直前に到着します。分かりにくい場所なので、チケット・オフィスがあるとは予想もしていませんでした。入場料金は大人15LE、学生7.5LEで、ホルエムヘブ王のスペオスがデザインされたチケットをいただけます。ゲベル・シルシラ西岸は、東岸ほど広範囲に遺跡が広がっているわけではありませんが、端から端までまわるとして少なくとも半日はかかると思われます。彩色画で飾られた祠が岸壁にいくつも設けられており、東岸とは一味違う魅力があります。中でも入場口のそばにあるホルエムヘブ王のスペオスは極めて特徴的な岩窟建築であり、これを見るだけでもゲベル・シルシラ西岸に行く価値があると思います。また、南の端にはセティ1世、ラムセス2世、メルエンプタハ王の祠があります。露天掘りの石切り場跡を至る所に見ることができますが、ほとんどがローマ時代のものです。


制作:西本真一(早稲田大学理工学部建築学科 助教授)・河崎昌之(和歌山大学システム工学部環境システム学科 助手)・遠藤孝治(日本学術振興会特別研究員)

ご意見・ご質問は、このページの保守管理者である西本真一(nishimot@mn.waseda.ac.jp)宛にお寄せください。


古代エジプトの石切り場のページへ戻る


早稲田大学エジプト学研究所ホームページへ戻る


「古代エジプト建築研究への招待」ホームページへ戻る


Made with Mac Logo