img_3.jpg

2016年度共同研究プロジェクト

1.情報の非対称性の有無がバブル生成過程に与える影響

研究内容
 近年の理論研究では、情報の非対称性の存在がバブル生成には不可欠であることが指摘されている。本研究では実験を通じて、バブル生成・崩壊過程に対し情報の非対称性の存在が与える影響を分析する。実験参加者の間で、資産価格の真の価値に関する情報の非対称性が存在する場合としない場合を比較し、理論的予測に反して情報の非対称性が存在しない方がバブルの存続期間が長引く可能性があることを示す。

共同研究者
浅古泰史、上田晃三、船木由喜彦(以上拠点メンバー)、宇都伸之(早稲田大学政治経済学術院助手)

2.内生的成長下での最適な金融政策

研究内容
 本研究では、金融緩和が経済成長に与える影響を考慮に入れた上で、最適な金融 政策のあり方を分析する。長期的な経済停滞は、先進各国の中でも日本において特に顕著であり、足元の景気対策と、長期的な経済成長の促進が同時に求められ ている現状がある。しかしながら、その両者の間の関連性、特に金融緩和がもたらす経済成長への影響は十分に議論されているとは言い難い。具体的には、メ ニュー・コストの形をとった価格硬直性を内生的成長のモデルに取り入れることで、貨幣量やインフレ率が企業の利潤、ひいてはイノベーションのインセンティ ブに影響する経路を理論化し、カリブレートしたモデルを用いて金融緩和の短期・長期の影響の推定とその経済厚生上の評価、およびターゲットとして設定す べきインフレ率の水準などを定量的に分析する。

共同研究者
上田晃三(以上拠点メンバー)、及川浩希(社会科学総合学術院准教授)

3.Laboratory experiments on decision-making in unstructured interaction

研究内容
The main goal of this research project is to design and implement experiments for a) problems that typically would be considered and solved by following the axiomatic approach and b) for theories that have traditionally developed without feedback from empirical evidence. We believe that, just like Microeconomics and Non-cooperative Game Theory have been substantially transformed by incorporating and accommodating empirical
findings from the experimental laboratory, Cooperative Game Theory and other related axiomatic and normative fields would also benefit from experimental testing. Taking the development of Behavioral Microeconomics (Bowles, 2004) and Behavioral Game Theory (Camerer, 2003) as an example, this project aims at contributing to the creation of Behavioral Cooperative Game Theory. By doing so, we would not only study important, but for-practical-reasons neglected, fundamental questions like (unstructured) bargaining and coalition formation, but we would also engage in discussion with neighboring fields as Political Science and Philosophy, for example.

In other words, this project is planning to take the experimental method as used by Psychologists and mainly by Economists to study human decision-making into unexplored territories of Economics. The potential
contributions are twofold. On the one hand, the project is going to gather empirical data with direct relevance to the above-mentioned fields, while on the other hand it is going to contribute to the discussion on experimental methodology with novel experimental tools and designs.

As a first step, we are going to look at two-person unstructured bargaining problems in order to check the empirical relevance of the solution concepts offered by theory (e.g., Nash bargaining solution, Kalai-Smorodinsky solution, egalitarian solution, deal-me-out solution, etc.) and the underlying axioms (efficiency, scale covariance, independence of irrelevant alternatives, monotonicity, etc.).

共同研究者
Robert Veszteg(以上拠点メンバー), Noemi Navarro (Université de Bordeaux)

4.体制変動の規定要因に関する統計的研究

研究内容
 体制変動(権威主義体制の崩壊、民主化、クーデタの発生)の規定要因について、統計的手法を用いた分析を
行う。とくに、近年整備が進んでいるビッグデータを用いて新たなデータセットを構築し、これまで統計分析にあまり含まれてこなかった、社会運動・抗議行動が従属変数に与える影響を明らかにすることを目指す。

共同研究者
久保慶一(以上拠点メンバー)、長辻貴之(早稲田大学大学院政治学研究科)、谷口友季子(早稲田大学大学院政治学研究科)、喜多宗則(早稲田大学大学院政治学研究科)、門屋寿(早稲田大学大学院政治学研究科)

5.民主主義とメディアの自由の内在性に関する実証分析

研究内容
 民主主義理論ではメディアの自由は民主主義に内在するとされている。しかし、実証研究においては、民主主義の測定の際にメディアの自由よりも選挙の自由が強調される傾向にある。
 また近年の比較政治学では、独裁者は部分的に自由なメディアを容認する動因を持ち、一方で民主的選挙により選ばれた指導者はメディアの自由と独立を抑制する動因を持つ、と議論されている。
 これらの研究を踏まえ、本研究では、研究者やメディア監視機関によるメディアの自由度評定と複数の民主主義指標との関係を実証的に分析する。具体的には、1996 年から2016 までのデータセットを作成・分析する。
 独裁国家に対し民主主義国家におけるメディアの自由度の変動、また民主主義国家内でのメディアの自由度の低下が、民主主義はメディアの自由と独立を含意するという広く抱かれた前提に疑問を投げかけるのかどうか、またどの程度疑問を投げかけるのかを分析する。

共同研究者
久保慶一教授(以上拠点メンバー)、ケラム・マリサ准教授(政治経済学術院准教授)、エリザベス・ステイン(インディアナ大学 助教 博士研究員(School of Global & International Studies; Global Media, Development, and Democracy プログラム))

6.学年内の相対的年齢と自殺リスク

研究内容
 早生まれの生徒は同学年の他の生徒に比較して身体的・精神的発達が相対的に遅いため、学業やスポーツの分野で不利な立場に置かれることはこれまで経済学者などによって報告されてきた。さらに、Matsubayashi and Uedaによる最近の研究 (2015, PLOS ONE)は、学年内の相対的年齢が若者の健康状態をも左右することを指摘している。同論文によると、学年内で相対的に年齢が低い、いわゆる「早生まれ」の若者は、学年内で比較的年齢が高い若者に比べて約30%自殺リスクが高い。同論文の政策的インプリケーションは大きく、教育現場において早生まれの生徒のケアが積極的に行われるべきであることを示唆している。
 しかし、早生まれであることがどのように自殺リスクにつながるのかというメカニズムは明らかになっていない。例えば、早生まれの生徒が学業面で遅れを取る傾向がリスクにつながっているのか、あるいはいじめ経験がリスク要因となっているのかによって対策の取り方も変わってくるであろう。そこで、本研究は生徒・学生を対象とした既存のサーベイデータを分析し、早生まれの学生・生徒がそれ以外の学生・生徒に比べてどのような自殺リスク要因を抱えているかを明らかにする。最終的には、調査結果をもって若者の自殺予防に役立てることを目的とする。

共同研究者
野口晴子(以上拠点メンバー)、上田路子(政治経済学術院准教授)

7.企業の異質性及び国の非対称性を考慮した経済成長モデルの開発

研究内容
 企業の異質性を取り入れた独占的競争貿易モデルであるメリッツ・モデルは,現代の国際貿易理論を代表するモデルの1つであり,それをR&D に基づく内生成長モデルに導入した研究も行われてきた.しかしながら,そのような内生成長モデルの全ては,国の対称性の仮定に依存している.本研究の目的は,企業の異質性及び国の非対称性を考慮した経済成長モデルを開発することである.

研究者
内藤 巧(以上拠点メンバー)

8.ハイブリッド・メディアにおける科学的議論の意味を追う

研究内容
 冷戦以降続く宇宙探査の正当性を巡る議論から、東日本大震災とそれを巡る原発問題まで、社会における科学的議論の種は尽きない。一方、その議論の舞台は、旧来のマスメディアから現在はソーシャルメディアを含めたICTを加えたハイブリッド・メディアの中で展開されるようになっている。現代の科学的議論における専門家の役割は、広報、そしてジャーナリズムの役割はどのようになっているのだろうか。質的・量的研究の混合研究法を用いて、現代における科学的議論の有り様について探求する。

共同研究者
田中幹人(以上拠点メンバー)、吉永大祐(政治学研究科ジャーナリズムコース博士課程)

9.金融市場における投資家の期待形成と金融危機抑制政策

研究内容
 本研究では市場参加者の期待形成の特徴およびそれに基づく投資行動を考察し、危機を最小限に抑えるための金融機関破綻防止の規制のあり方・流動性の確保のための中央銀行の役割を考察する。
 具体的には、実験経済学の手法を用いて資産市場に中央銀行が介入する際の被験者の期待形成に関する実験を行う。そのデータから市場参加者の期待形成に関する行動モデルを構築し、銀行部門を含む資産取引の理論モデルを提示する。
 また理論分析では、近年研究が盛んな銀行業のミクロ経済学(Microeconomics of Banking)の枠組みに上述の実験結果に基づく行動モデルを適用する。これによりデータと整合的でかつ主体の多様性を描写する行動モデルと、合理的期待を前提とした理論モデルとの橋渡しとなる新しい枠組みの提示を試みる。

共同研究者
船木由喜彦(以上拠点メンバー)、石川竜一郎(国際学術院准教授)