
小胞体は親水部と疎水部を持つ両親媒性分子の自発的な分子集合により形成されます。化学的性質の異なる両親媒性分子を混合して集合させることにより、分子集合体としての構造と物性(機能)を調整できます。これまでに各種の両親媒性化合物を合成し、分子集合成分として利用して、集合体の構造、安定性、安全性、体内動態などがどのように変化するのかを検討してきました。Hb小胞体の膜成分組成は、このような詳細検討を経て最適化されています。
静脈管内に投与すると特定の方向への集積が指摘される「指向性小胞体」は、この研究開発の過程で見つかりました。ラジオアイソトープ利用の全身動態イメージングでは、この指向性小胞体が骨髄に選択的に分布することがわかります(図1A)(テキサス大学サンアントニオ校との共同)。小胞体には脂質二層膜中に脂溶性物質、内水相に水溶性物質を内包させることができ、図1Bのように内水相に水溶性蛍光分子(赤)、脂質二層膜中に脂溶性蛍光分子(緑)を配置すれば、蛍光顕微鏡下で観測できます。この観測から、指向性小胞体が内包物を保持したまま移動する骨髄指向性輸送体として機能することが示されました。骨髄(造血器)に積極的に集積する指向性小胞体は、造血機能の調節や造血器腫瘍の治療に有効な薬剤を骨髄に集中輸送する新技術としての利用が期待されます。
