理工学術院
21/52

21る物質が、ヒストンタンパク質の修飾を変化させることが分かったのです。同時にこの物質には、神経幹細胞からアストロサイトという神経細胞への分化を促進する効果も確認できました。アストロサイトは脳内の海馬という組織にあり、うつ状態になるとその数が減少してしまうことが知られています。そこで、この物質を与えたマウスと、与えなかったマウスに、それぞれ1週間ストレスを与えて比較してみたところ、この物質を与えたマウスで抗うつ作用が認められました。 これらの研究結果は、「毎朝、一杯の味噌汁がうつ病を防ぐかもしれない」という期待を生みました。現在は、食品メーカーと共同で商品化につなげられるか模索しているところです。 食品の機能性の解明は、国が進める予防医学の分野とも関連するため、この先の研究では医学だけでなく、スポーツ科学など関連の分野とも連携したいと考えています。また、大学院情報生産システム研究科とともに、膨大な遺伝子データの解析にAIを利用することも考えています。早稲田には多様な研究をしている教員がいるため、こうした学内のネットワークを強みとして研究に生かすことができます。 私の研究分野は食品や生物に関わるので、現場第一主義です。海洋生物の研究では、生物を採集するために自ら海に潜り、生物がどのような環境にいたのかなど、目で見た記憶も研究に生かします。食品の機能性の研究でも、味噌メーカーと連携して仕込みの現場を見るなど、目で見て肌で感じることを基本にしていくつもりです。もちろん研究はうまくいくことばかりではなく、壁にぶつかることもありますが、味噌汁を食べたり、海洋生物を飼育したりと、明るく楽しく研究を進めています。「早稲田の理工」というと、ロボットや建築といった、伝統的な理工学のイメージを持つ方も多いと思います。もちろん、伝統ある研究分野を大切に守ってゆくことは基本ですが、私は早稲田の学生の特長である遊び心や明るさを生かして、勢いのある新しい研究分野を切り拓いてゆきたいと考えています。そこから人間の健康につながる成果が生まれれば、こんなすばらしいことはありません。 私は、学生生活は「自分が何をしたいのか、何をしたら楽しいと思うのか」を見つけられる場所だと思います。これまではルールに従った勉強をしっかりと身に付けてこられた皆さんですから、大学では理工学術院の学生として、研究でも運命の出会いをしてほしいと願っています。出会いのヒントは、学内にたくさんあるはずです。大学で運命の出会いをしようさまざまな海洋生物機能性のある味噌の試作品中尾研究室では、主に海洋生物や食品からエピゲノムに影響を与える化合物を探索しています。さまざまなアプローチから化合物の探索を行っており、これらのプロジェクトは他の研究機関とも協力して共同で研究を進めています。私は化合物の活性評価法の構築に携わっており、人々の健康に役立つ化合物を見つけたいと思っています。化学の力を駆使して生命現象を解明し、人々に健康をもたらすことに興味のある方、ぜひ一緒に研究しましょう!学生が語る研究室の魅力研究室の1日15:30実験・資料作成実験の合間には研究の相談はもちろん、趣味などの他愛もない話をしたりしています。14:30ゼミ13:30昼食研究室の同期と、学食やお店が空いてきた頃に遅めの昼食をとります。はじめにその日のスケジュールを組み立てます。10:00登校先進理工学部4年田中 健太郎さん10:00実験・資料作成 ゼミ準備スケジュールに沿って実験を行い、データの整理をします。ゼミのある日はその予習もします。化学や生物に関する最新の論文や学術書の内容をまとめ、発表します。20:00帰宅研究室で飲み会に行ったりすることもあります。

元のページ 

page 21

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です