政治経済学部
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「伝統」と「革新」 政治経済学部長齋藤 純一社会がかかえる諸課題に、応えていく力を培います いま、私たちの社会は、持続的な協働なしには解決することのできない数々の問題に直面しています。コロナ・パンデミックによって新興感染症のリスクは現実のものとなりましたし、気候変動は世界各地に深刻な災害を引き起こしています。また、不平等の拡大は社会の分断を招き、新しい情報環境も人々を互いから隔てる一因となっています。こうした問題には、自集団の最適化に終始するだけでは対処することができません。空間的にも時間的にも「われわれ」だけを重視するような偏狭を超えて、いかに持続的な協働を築いていくことができるかが問われています。どうすれば、価値観の違いや一人ひとりの自由な生き方を尊重しながら、そうした協働を築いていくことができるでしょうか。 政治経済学部は、1882年の創設以来、それぞれの時代に解決を求められる諸課題に率先して取り組む若者を育て、社会に送り出してきました。創設者の大隈重信は、「学理を学理として研究すると共にこれを実際に応用するの道を講じ」、「個性を尊重し身家を発達し国家社会を利済し併せて広く世界に活動すべき人格を養成」することを早稲田大学の基本ポリシー(教旨)に掲げました。まさに、大隈は、世界が抱える諸問題の解決に向けた協働的実践に寄与することを学問の重要な役割としてとらえていました。本学部の学問理念である“Philosophy, Politics, and Economics”も、大隈が掲げた理念を自覚的に継承するものです。 本学部のカリキュラムは、私たちの生活が現実に政治経済の動向に左右されているという事実を踏まえるだけでなく、学問的にも政治学と経済学を緊密に結びつけてはじめて、社会のありようをよりよく理解できるとの認識のもとに編成されています。学科の別なく、全学部生が政治学および経済学の基礎、そして両者を架橋する公共哲学を学びます。その基礎の上に、各自の関心に沿って、専門性のある学びをしだいに深めていくことができるよう工夫されています。日英ハイブリッド教育も本学部の教育の特色です。このカリキュラムのもとで身に付けた、ものの見方や考え方、分析力や洞察力は、時が経っても陳腐化することはありません。とくに、少人数教育の場である各学年のゼミで互いから学びあった経験は、生涯にわたって、他の人々との間にさまざまな協働を築いていくための資産となるはずです。 大隈は学問を実践と結びつけましたが、その学問は、世を渡っていくためのものではなく、空間的にも時間的にも偏狭を脱して、社会がかかえる構造的な問題の解決をともに探究していくためのものでした。その探究に自覚的にコミットし、さらにはリードしていくのが私たちの役割だと思います。 政治経済学部には学問との刺激的な出会い、ともに真剣に学ぶ者たちとの出会いが確実にあります。みなさんを伝統ある学問探究の場にお迎えできるのを楽しみにしています。正面・図書館・本部等を望む(昭和10年頃)

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