文学部シラバス2021
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その他0%科目名演劇文化論2人形とホラー番外編担当者名菊地浩平表象2単位秋学期無フルOD2年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要※本講義は全回オンデマンドで実施します。一般的に人間と人形の間には、有機物と無機物という越えられない壁がそびえ立っていると考えられています。その一方で、我々は人形を見てしばしば、彼らがその一線をもしかしたら越えてくるんじゃないかという不安や喜びに駆られてしまいます。そうした話を聞くと、1988年に公開された傑作人形ホラーチャイルド・プレイのように、持ち主の少年アンディの肉体を奪おうと凶器を手に襲いかかるチャッキーを思い浮かべる人がいるかもしれません。もちろんチャッキーもとても重要(だし私も大好き)なのですが、例えばAさんにとって極めて重要な人形が存在するとして、それを知らないBさんが人形をぞんざいに扱い、Aさんはとても気分を害したとします。そのことが原因で両者の関係が悪化、するばかりかAさんから何らかのリアクションがなされた場合、Bさんは不安を覚えるでしょう(取り返しのつかない事態になることもあるかもしれません)。その場合、Bさんにとって人形は単なるモノですが、Aさんにとっては全く異なるモノ以上の存在であり、十分に一線を越えているといえます。つまりこの人形にはAさんの主観が投影されており、本来触ることも見ることもできないはずのものを垣間見ることが出来るのです。人間の主観を言語化するには一定のハードルが付きまとうものですが、それをしていくためのひとつの手がかりとして人形について考察することは一定の意義があると考えました。というわけで本講義では諸作品、諸事象をじっくり鑑賞/観察し、とりわけそこで人形がどんな役割を担い、なにを媒介しているのかを検討することで、われわれについて考察してみたいと思います。その際対象となるのは、広義の演劇文化です。演劇と聞くといわゆる劇場でいわゆる俳優たちがいわゆる演技をして、それを見た観客が泣いたり笑ったり帰りたくなったりするものを思い浮かべる方がほとんどでしょう。しかし、シェイクスピアのお気に召すままにおける世界は劇場というセリフにも象徴されていますが、演劇はいわゆる劇場という場所にだけ見出されるわけではありません。様々な時代の様々な場所におけるあらゆる人間の営みが演劇たりえます。(着ぐるみやプロレス、アイドル、Perfumeが講義予定に含まれているのはそうした事情によるものです。ほんとうです。)そこで、広義の演劇やその文化を取り上げながら、改めて人形について考えてみたいと思います。取り上げる対象となるものの一例としては、人形劇、わら人形、腹話術、蝋人形、お化け屋敷、着ぐるみ、プロレス、アイドル文化(Perfume、ジャニーズから芦田愛菜など)です。※なお受講者の反応や人形をめぐる社会情勢等によって講義内容を変更することがあり、シラバス掲載の授業計画通りに進むとは限りませんので、その点はご了承ください。授業の到達目標人形やホラーについて演劇文化論的視点からとらえるための基盤をつくること成績評価方法試験0%実施しません。レポート50%講義で扱った内容を踏まえ、期末レポートを書いていただく予定です。(文字数は受講者数によって決定します。)平常点50%3分の2以上の出席は最低条件ですが、それに加え、各講義の最後にコメントシートの提出を義務付けています。その他0%特にありません。備考・関連URL毎週月曜日にMoodleに講義動画をアップする予定です。毎回コメントシート課題が出ますので、それを翌日曜日の23時59分までに提出していただきます。このコメント提出が出席確認も兼ねています。科目名ポスト/モダニズム論精神分析のポリティクス担当者名工藤顕太表象2単位春学期水曜日3時限2年以上―合併科目―授業概要本講義は、ジークムント・フロイトが創始した神経症治療の実践である精神分析を全体のテーマとする。今日フロイトの仕事は、彼が発見した無意識の概念とともに名高いが、本講義では、とりわけフロイトが強調した精神分析の運動としての性質に着目し、その歴史を捉え直してみたい。19世紀における医学の発展を土台として、フロイト個人の実践として始まった精神分析は、ヨーロッパのなかで徐々に広がりをみせ、多様化と国際化を続けて現在に至っている。精神分析家という新たな職業が生まれ、国際精神分析協会をはじめとした大規模な組織が作られ、フロイトが暮らしたウィーンから、チューリッヒ、ベルリン、ブダペスト、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、サンパウロへと精神分析運動が伝播していくなかで、一体何が起こったのか。これを問うことは、ヨーロッパを中心とした国際社会が経験した20世紀という時代を、精神分析との関係から問い直すことでもある。本講義の出発点となるのは、そもそもフロイトにとって精神分析とは何だったのか、という基本的な問いである。したがって、無意識、転移、抑圧、欲動、幼児期のセクシュアリティ、エディプスコンプレクス、去勢コンプレクスといったフロイト独自の講義―82―

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