文学部シラバス2021
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科目名日本語日本文学演習7A(古典文学)蜻蛉日記上巻を読む担当者名庄司敏子日文コース2単位春学期木曜日3時限3年以上―――授業概要この演習では、まず平安時代の作品を調べ、読み解くための基礎知識(史料や調べ方などを含む)を確認していく。その際、変体仮名の読み方も練習する。その後、蜻蛉日記上巻を精読する。諸注釈・先行研究の説を鵜呑みにせず、自分なりの根拠をもって本文を解釈することが目標となる。蜻蛉日記は十世紀後半に書かれた作品である。作者である藤原道綱母が蜻蛉日記を執筆するにあたって、権力に近い場にいた夫・兼家の存在は大きかったと考えられる。こうした周辺の事情にも注意しつつ読んでいきたい。なお、この演習では発表あるいはレポート提出のいずれかを選択してもらう予定である。詳細は第1回のオリエンテーションにて説明する。授業の到達目標平安時代のかな作品を読むための基礎知識を身につける。注釈や先行研究を批判的に検討する力を養う。成績評価方法試験50%最終回の理解度の確認によって評価する。レポート0%平常点50%出欠と発表(またはレポート課題)によって評価する。その他0%科目名日本語日本文学演習7B(近代文学)明治文学の新しさを発見する担当者名宗像和重日文コース2単位春学期木曜日3時限3年以上―――授業概要二昔も前に聞いた話だが、現代文学の授業を担当したある教授が、新学期の開口一番、現代文学を理解するためには明治文学を知らなければならないから、この授業は明治文学を対象とすると宣言して、受講生を唖然とさせたという。今のように詳しいシラバスを提示する時代にはできないことだが、私はこのエピソードが好きで、現代文学を理解するためには明治文学を知らなければならないという主張は、まったく正しいと思っている。とにかく、語りとか人称とか描写とか、現在の文学研究に欠かせない視点は、すべて明治の作家たちの試行錯誤から生れてきたのだから。のみならず、明治文学そのものが、若々しい現代文学として出発したのだから。この授業では、明治期の小説を材料として、2年次の演習での実践を踏まえ、作品にどのような問題点があるのか、どのようにアプローチしていけばよいか、文献はどう利用するのかなどについてさらに深く検討しながら、明治文学の新しさを発見する契機としたい。また、卒業論文も視野に入れながら、研究論文を読む・書くということも意識していきたい。授業の到達目標どちらかというと古色蒼然とした印象のある明治文学を、新しく読みかえていく面白さを発見することを、この演習の到達目標とする。と同時に、卒業論文を視野に入れて、作品を分析するための研究方法を習得する。成績評価方法試験0%レポート70%自分が担当した小説についての作品論をまとめる。平常点30%担当作品の発表や質疑への参加の積極性などを、平常点として評価する。その他0%科目名日本語日本文学演習7C(現代文学)戦後文学の流れをたどりつつ、画期的な作品を詳細に読む試み担当者名高橋敏夫日文コース2単位春学期木曜日3時限3年以上―――授業概要現代文学のはじまりにいるのは誰でしょうか?川端康成、林芙美子、三島由紀夫、埴谷雄高、中上健次、村上龍、村上春樹、ヤンソギル、吉本ばなな、江國香織、桜庭一樹、川上未映子、舞城王太郎、急逝した伊藤計劃、文学もやる又吉直樹に押切もえ、コンビニから出現した村田沙耶香……。むずかしい、ですね。その作家がはっきりしている人よりはむしろ、はっきりせず、問いのまえで困惑してしまう人こそ、この演習に参加してほしい。既成のどのようなたしかさより、現在という未知にかかわるあいまいさをたいせつにする人を、歓迎します。ここで試みるのは、現代文学をあらかじめ自明の対象とせず、さまざまな作品を検討するなかから、現代文学なるものの姿(それはわたしたちじしんの姿でもある)をうかびあがらせる作業です。この試みには現代とは?文学とは?そのかかわりとは?という問いあるいは問い直しも、同時にもとめられます。たとえば、ライトノベル、ファンタジー、ケータイ小説(とうに死滅か?)と従来の小説とのちがいはなにか。グローバルな新しい戦争や地政学的リスクによる新たな戦前到来、さらには欧米における反グローバリズム=排他的なポピュリズムの席巻は、現代文学といったいどうかかわるのか。人類史上最悪の原発事故である3・11フクシマ原発破局は、神様2011や想像ラジオやボラード病の次に、どんな文学的応答をもたらすのか。2020年からはじまった新型コロナ禍はいかなる文学を出現させるのか、あるいは……。はっきりとした答えなどどこにもありません。だからこそ、みなさんの試みは、多方向にひらかれ雑音にみちた、生きいきとしたものになる、ならざるをえないのです。教科書のないいとなみの辛さと楽しさと。秋学期の8C演習につながるこの7C演習では、戦後文学がスタートする1945年から、中上健次、村上龍、村上春樹らが登場する1970年代末までをあつかいます。主なテーマと作家は以下のとおりです。専門演習―450―

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