文学部シラバス2021
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の学びにも、自ら問題を発見し、考え、探求する力は欠かせません。しかし現実には、自分の頭で考えていると強く自負する人が、主観的な印象や思いつきに頼りすぎたり、自分の先入観を肯定するようなとっつきやすい情報ばかりに飛びついて、的外れな方向に突き進んでしまったり、という問題がしばしば起きていることを、皆さんも知っているでしょう。この演習では、そのような迷い道に陥ることを避け、説得力をもって文学研究を進めるための基盤となる着実な調査分析力を、いくつかの日本近現代小説を読解し発表することを通じて身につけていきます。新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、図書館利用等の研究環境に不便が生じる可能性があることを考慮し、まずは6篇の短編小説の本文と研究の手引きを収録した書籍を教科書として指定します。初出と単行本等を比較する本文校異掲載雑誌の特徴や挿絵に着目した考察発表時の歴史背景を踏まえての分析各種の文学理論の参照など、主な日本近現代文学研究の視点・手法を、演習での議論と教科書から確実に学び取ってください。取り上げる予定の小説は、授業計画欄を参照してください。発表希望の人数配分その他、やむを得ない事情がある場合は、授業計画を一部変更することがありますので、予めご了承ください。発表担当者には、教科書で解説されている内容を十分に踏まえた上で必ずプラスアルファの調査を行い、自分が最も重要と判断した発展的論点を、根拠となる資料を明らかにして提示することを求めます。レジュメ作成にあたっては、剽窃を疑われない適切な引用や参考文献の明記ができているかといった、形式面についても十分に留意しながら、研究ルールを自分のものにしていってください。発表者以外の受講者は、扱う小説を前もって精読した上で発表を聞き、積極的に質問や意見を出してください。授業の到達目標・文学テクストを、細部の言葉選びに至るまで丁寧に読み、分析できる。・複数の手段を用いて、先行研究や参考資料を調査することができる。・先行研究の論旨を適切に読み取った上で、優れた点・目が届いていない点を考え、自分自身で考察すべき課題を見つけることができる。・ルールを守った授業資料の用意とプレゼンテーションができる。・他の受講者の発表を問題意識を持って聞き、質疑応答で充実した議論ができる。成績評価方法試験0%行いません。レポート50%演習発表・議論を踏まえた内容の発展・充実の度合い、文献引用が適切な形式でなされているか等の観点から、総合的に評価します。平常点50%演習発表の内容・形式、議論(質疑応答)で建設的な指摘ができたか、問題意識を持って積極的に演習に参加できたかを、総合的に評価します。その他0%特になし。備考・関連URLWasedaMoodleを用いて、演習に関する連絡の配信や、参考資料の公開を行う可能性があります。Webサイトへのアクセスや、配信メールの閲覧が問題なく行えるよう、環境を整えておいてください。科目名日本語日本文学演習3A(日本語学)明治期日本語の研究担当者名木村義之日文コース2単位春学期金曜日5時限2年以上―――授業概要坪内逍遙一読三嘆当世書生気質を対象として、当期の表記、語彙および語法について調査し、考察を加える。明治前期に出現した書生という新しい知識階層を主人公とする本作品をていねいに読み、現代語との違いを理解しながら日本語学的な手法によって読み解いていくこととする。授業の到達目標(1)当世書生気質には、いくつかのテキストが存在する。初出本文と後に出版された本文とを注意深く観察し、その異同を確認する。(2)明治以降、日本語の漢語は激増し、漢語が日本語の中で果たす役割、位置は大きくなる。漢語の中には、中国語で使われた意味を保持するもの以外に、明治以降に出現し、使用される漢語は新漢語と呼ばれ、近代日本語の中で、日本語としての意味を獲得したものや、日本で造語したものなどがある。そのような漢語の意味や用法は現代語と異なる様相を呈している。また、書生たちが用いる外来語・外国語も多い。このような語彙の調査にあたって、必要となる文献・辞書の取り扱いを学ぶ。(3)本作品はほぼ総ルビであるが、漢字表記とルビがどのような関係で対応しているのかを理解する。(4)本作品の会話部分に注目し、否定・推量・条件などといった文法的カテゴリーからの観察、対人配慮表現の観点から見た指示命令・感謝・謝罪などの表現の観察を、現代語と比較しながら行う。これらのことを通じて、日本語学的な文字テキストの扱いを習得し、言語実態をさぐる方法論を身につけることができる。成績評価方法平常授業への参加態度:出席日数が三分の二に達しているか、調査、発表を通じて、資料の性質をどの程度理解しているかを評価する(20%を目安とする)。授業内での分担発表:調査の広さ深さを評価する(40%を目安とする)。期末レポート:発表を通じて、指摘された修正点がどの程度反映されているか、また発表時よりもどの程度発展しているかを評価する(40%を目安とする)。専門演習―443―

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