文学部シラバス2021
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科目名日本語日本文学演習2C(近現代文学)近代文学研究のための基礎的能力の確立に向けて担当者名井上優日文コース2単位春学期火曜日4時限2年以上―――授業概要もし次のような問いかけがされたら、皆さんはどのように答えるだろうか。フィクションの言語表現とフィクションでない言語表現との違いは何か。ケーテ・ハンブルガーは正確な意味でのフィクション的な語りは三人称の文学が語る文学それのみであると言ったが、それは本当か。作品から作者の意図を読み取るのは正しいのか。そもそも作者とは何か。あるいは読者とはだれを指しているのか。読書行為の過程において私たちは何をやっているのか。そこにはどんなバイアスがかかっているのか。ヴィクトル・シクロフスキーの考え方を援用すれば、詩的言語とは日常使用する言語を《非日常化》したものであるという言い方がひとまずはできそうだが、そうだと言い切れるだろうか。見たまま体験したありのままの文章と感じさせる語りの技法の特徴とは何か。私たちの認知の仕組みと言葉や文学の読み書きとの関連性はどのようになっているのか、などなど。この授業では、こうした例はいうまでもなく、これまで文学というものに漠然と、あるいは強固に抱いてきている常識の殻を破り、人間と言語表現および文学との関わりを深く理解できるようになることを目標とする。近代の短編小説を、文学理論の初歩的な事柄にも配慮しつつ受講者各自が精緻に読み解き討論しあうことを通し、今後の文学研究を各々が展開していく上で必要な基礎的かつ専門的なスキルを確立する。なお、授業計画欄にあげてあるものの他にも、文学理論や諸テクストへの言及を随時行う。授業の到達目標(1)対象とする文学テクストを論じるために必要な先行研究論文や資料の調べ方を身につけ、それに基づいて研究史、および現在の研究状況を解説できる。(2)多様な文献や資料の操作ができる。(3)文学理論の基礎的なことがら、および種々の研究方法とその長所短所を理解し、それを踏まえて研究対象の文学テクストの性質や研究テーマに即した適切な研究方法を設定でき、理論的かつ論理的にテクストを分析することができる。(4)研究発表の構成のしかた、レジュメの作り方を理解し、効果的なプレゼンテーションや討論ができる。(5)日本近代文学に関する学術的文章を書くためのアカデミック・スキルを習得し、レポート・論文を執筆することができる。成績評価方法試験0%教場での期末試験は行はない。レポート50%期末レポートによる。レポートの評価基準は以下の通り。(1)先行研究や資料の調査、理解、批判が適切に行われているか。(2)引用テクストの選択は適切か。(3)問題設定およびそれを考察するための方法は適切か。(4)研究方法について自覚的であり、理論的な考察ができているか。(5)論理的に構築されており、明晰で、反証可能性に開かれた文章になっているか。(6)研究史を超える解釈やオリジナリティがあるか。(7)誤字脱字はないか。平常点50%研究発表の内容、発表者との質疑討論への積極性や貢献度は重要な評価対象とする。ならびに、授業の予習復習に関する提出課題の出来などを考慮する。遅刻や欠席は、大きな減点の対象となる。総授業時数の3分の1以上の欠席や遅刻のある者、出席確認時の不正行為、自分の発表日に無断で遅刻欠席をした者は不合格となる。また、私語や居眠り、スマートフォンの使用、飲食、授業で扱うテクストを読まずにきた者、体調不良などでないにもかかわらず途中退出をした者など、学習意欲・姿勢に欠ける行為や他の受講者への迷惑行為は、注意・指導を受けても改善しない場合、その時点で不合格となる。その他0%特になし。備考・関連URL本年度秋期の日語日文演習5Cの受講者はこの演習を履修することが望ましい。発表者も発表を聞く側も、毎時間かなりの課題の処理とハードワークの連続となる。テクストを読み込まずに来てただ着席しているだけでも出席扱いとなるという授業ではない。明らかに勉強不足と思われる発表者については、再論を求める。発表者の発表後、活発な討論を行う上で、発表内容について全員に見解の提示を義務づける。課題に対するフィードバックなどは、授業の中で適宜行う。成績についても、上記成績評価方法の基準に従って厳格に対応するので、甘い点数は一切つけない。厳しく鍛え上げるので、安易な姿勢での受講は開講後短期間での挫折を招くことが必至である。科目選択と登録の際には、他人の情報に惑わされることなく、このシラバスをよく理解し、授業で要求される様々なことに耐え得るかどうか熟慮したうえで慎重に行うこと。卒業年次にあたっている学生や再履修者は特に注意すること。演習という授業の性格上、いい加減なやり方は、学習効果において他の受講生に大きな迷惑をかけるということをよく認識して、強い責任感と覚悟を持って臨んでもらいたい。学術に誠実で、好奇心、探究心にあふれ、日々の地道な学習努力を怠らない、熱心で積極的な学生の受講を期待する。なお、研究発表の分担決めを行う第1回目の授業に正当な理由なく欠席することは、以降の授業スケジュールおよび他の受講者の発表準備に大きな支障が出るので、してはならない。また、受講生の人数により、15回の授業回数内で全員の発表が完結しない場合には、補講によって追加の授業を行う。科目名日本語日本文学演習2D(近現代文学)説得力ある日本近現代文学研究のためのトレーニング担当者名橋本あゆみ日文コース2単位春学期火曜日4時限2年以上―――授業概要自分の頭で考えようという言葉が、社会の様々な場所で口にされるようになって、長い年月が経ちます。もちろん大学で専門演習―442―

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