文学部シラバス2021
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科目名ロシア文学と現代2ロシアにおける国民文学の創生(19世紀後期〜20世紀初期)担当者名貝澤哉露文コース2単位秋学期火曜日4時限1年以上オープン科目合併科目―授業概要これまで当然のように教えられ、私たちが自然に身につけてきたように見える近代ロシア文学史の常識は、いったいどこでどのように形成されたのだろうか?近代ロシア文学がプーシキンからはじまり、ゴーゴリ、トゥルゲーネフ、ドストエフスキイ、トルストイらの黄金時代を経て、チェーホフ、ゴーリキイにつながるという伝統や発展の図式は、いったいだれがどうやって決めたものなのか?じつは、近代を中心とするロシア文学史の常識的な知識や図式は、客観的・普遍的なものでも自然でニュートラルなものでもない。それはある特定の時代、具体的には19世紀後期から20世紀初期にかけて、ある特定のイデオロギー的な動機や目的に沿って人為的に創りあげられたものなのだ。西欧先進諸国に匹敵する国民文学をロシアにも創出すること──これこそが、近代ロシア文学史の形成を促してきた主要な動機にほかならない。そこで、この授業では、この時代のロシアにおける国民文学の創生や、文学を国民化しようとする社会の様々な動きを歴史的に検討し、近代ロシア文学史がなぜ現在のような姿をとるに至ったのかを解明していきたい。そのためには、たんに当時の文学作品そのものを読み解くだけでなく、アカデミックな文学研究の歴史や、学校における文学教育のカリキュラム政策、この時代の出版・ジャーナリズムメディアの成り立ちや読者層の変化、一般民衆への読書普及教育や図書館の活動、外国でのロシア文学の流行等、ロシア社会の幅広い領域への目配りが必要となるだろう。注意しなければならないが、私たちにとって、こうした文学や芸術の国民化はたんなる過去の問題ではない。19世紀後期は、新しいメディアやテクノロジーの出現により伝統の大量生産(ホブズボーム)が可能になった時代なのであり、文学の国民化は、そうしたメディア化・テクノロジー化された文化の大衆化によって支えられていたわけだが、そうしたメディア・テクノロジーによる文化の大衆化は、ネットメディアや通信テクノロジーのいっそうの発達によって、今日ますます全面化しようとしているからだ。19世紀後期から20世紀初期の文学・芸術の国民化の歴史を振り返ることは、いわば、現代の私たちの文化のあり方を、その起源へとさかのぼって捉え直すことでもある。授業の到達目標上記のように、近代ロシアにおける文学の国民化について様々な角度から検討しながら、文化・芸術の社会的・歴史的なあり方を学び、その生きた具体的で動態的な生成過程をとらえるための方法論を身につける。成績評価方法期末レポートにより評価する。科目名ロシア芸術の現在1担当者名八木君人他/安達紀子/梶山祐治/日向寺康雄/村山久美子露文コース2単位春学期火曜日2時限1年以上オープン科目合併科目―授業概要ロシアは文学のみならず、音楽、美術、映画、演劇などの芸術諸ジャンルにおいてもきわめて魅力的な活動を続けている国です。本講義の目的は、これら多様なロシアの芸術諸ジャンルの最前線の状況・活動について紹介していくことです。春学期に行われるこのロシア芸術の現在1では、具体的には演劇、ポップス、バレエ、映画などについて、その分野に精通した講師たちが講義を担当していきます。なお、この授業は、対面授業とオンライン授業の組み合わせたかたちで実施されます。予定されているスケジュールとしては、以下の通りになります:村山先生(46,413,420,427):対面授業日向寺先生(511,518,525,61):オンライン授業(オンデマンド授業)安達先生(68,615,622,629):対面授業梶山先生(76,713,720):オンライン授業(Zoomによるリアルタイム配信授業)授業の到達目標ソ連時代を含めた、広い意味でのロシア芸術の現在について知識を得た上で、それぞれの分野においてロシア芸術の現在についての自分なりのイメージをもてるようになることが目標です。成績評価方法試験0%レポート50%担当教員それぞれが出す課題の中から一つを選択し、2000字程度のレポートを提出してもらいます。平常点50%授業への参加態度。毎回、講義に対するレビューシートを提出してもらいます。なお、大学の規定である、授業回数の3分の2以上の出席は必須になります。その他0%備考・関連URLロシア文化に関する積極的な関心を持って受講してもらいたいと思います。科目名日露比較文化1担当者名源貴志他/上野理恵/桜井厚二/杉浦かおり/塚原孝露文コース2単位春学期水曜日6時限2年以上―合併科目―授業概要ロシアは古くから、最も日本に近いヨーロッパ国家として日本と密接な文化的関係を保ってきた。本講義はロシア革命とソ連崩壊という二つの歴史的大転換を経た現在から、新たな視点で日本とロシアの文化的交流をとらえなおそうとするものである。授業は複数教員により様々な日露交流の局面に光をあて、近くて遠い国ロシアをあたりまえの隣国として認識できるようにし、そしてまた二つの国の文化的交流がじつはいかに深く広いものであるかを認識し、そこに心血を注いだ先人たちの努力について学ぶことを目的とする。講義―210―

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