文学部シラバス2021
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に終わりはいつかは来るのだけれど、そうした中で人生の、社会の悲劇をどう考えるのか、またその中での喜びは、という問題はシェイクスピアの劇を通しても見えてくるものがあると思われる。というのも、シェイクスピアの劇は遠く古いものではあるが、現代社会を写し得る人生の疑似体験でもあるからだ。シェイクスピアの劇には、歴史劇、喜劇、悲劇の他に、問題劇やロマンス劇と呼ばれるものもあるが、シェイクスピアの時代の観客は恐らく、楽しい劇か悲しい劇か、というくらいの感覚しかなかったと考えられている。また実際のところ、シェイクスピアの悲劇と喜劇は紙一重の違いでどちらかになるものが多い。例えば、夏の夜の夢の妖精がいなければ、恐らくこの劇はロミオとジュリエットになってしまったであろう。ハムレットだけでなく、喜劇十二夜にもアイデンティティの揺らぎが見られる。ヴェニスの商人も、アル・パチーノがシャイロックを演じた映画を見る限りでは、とても喜劇とは言えない。この講義では、シェイクスピアの喜劇と悲劇の違いと同一性、そしてとりわけその中間である悲喜劇に注目して、舞台・映画の映像も使いながら、いくつかの劇をじっくり見てみたい。さらに、ジャンルの異なった劇が、舞台・映画になった時に、どのように変容されるのか、実例を舞台・映画の映像も少しずつお見せして検証してみようと思う。授業の到達目標・シェイクスピアの劇について、主に悲喜劇という概念を考察することを通して、その劇作法を知る。・シェイクスピアの劇のいくつかを悲劇と喜劇の両面から考え、作品解釈ではない視点から鋭く切り込めるような読み方・考え方をできるようにする。成績評価方法試験0%なしレポート80%授業最後の時まで(締め切りは後日連絡)に、指定の題目で書いて提出するレポートの内容(論理性や独自性)による。平常点20%講義(オンデマンド録画)の中で数回、Moodle上で課題としてコメントを求めます。それを出席の代わりとしたいと思います。その他0%特になし備考・関連URL・シェイクスピアのみならず、演劇という、ある種文字化できない部分の大きい世界に興味のある人歓迎。・授業のやり方は、1回目の授業前にお知らせをメールで配信します。また、すべてオンデマンドの講義録画を毎週事前にMoodleに載せておき、資料もそこに入れておきますので、それぞれ時間のある時に見ていただければと思います。なお、講義中にお見せできる映像が限られてしまいますが、可能な限りのものを講義の録画に入れ込みたいと思いますし、追加の見られる場所など(Web上のURL)を記載するようにしたいと思います。科目名英文学特殊講義4英語で世界の名詩をこつこつと読む担当者名栩木伸明英文コース2単位秋学期金曜日1時限2年以上―合併科目―授業概要この講義では、英語で世界の名詩をこつこつと読んでいく。サッポー、ホメロス、李白、旧約聖書の詩篇、オウィディウスからはじめて、ダンテ、シェイクスピア、マーヴェル、ワーズワス、コールリッジ、ポー、ボードレール、エリオットなど、誰でも知っている(はずの)詩を(長編詩のばあいは一部分をつまみぐいするように)(英語詩以外は英訳で)読んでいきたい。どうしても英語圏の詩が中心にはなるけれど、国で括ることはなるべくしないで、英語で詩を読むコツを一緒に学んでいきたい。テクストの手強さや詩の長さに応じて進度は流動的になるので、授業計画はあくまで予定である、と理解していただきたい。ハーバード大学の比較文学者デヴィッド・ダムロシュいわく、世界文学とは翻訳を通して豊かになるものである。このことばをモットーとしてひとつひとつの詩から多様な魅力を引き出していけたら、と思っている。なお、詩のテクストはLesliePockell,ed.,The100BestPoemsofAllTime(NewYork:WarnerBooks,2001)などから抜粋して教室でプリントを配布する。授業の到達目標英語で詩を読むには、テクストを流し読みしない忍耐を身につけ、臨機応変に感性を発動させる機敏なセンスが必要である。この講義では、詩をあつかう〈建築家〉となるための準備段階として、まずはマテリアルを熟知した〈大工〉になれるよう、みなさんに必要なスキルを身につけてもらうことを目的とする。成績評価方法試験0%なしレポート70%オリジナルなリサーチペーパーとして内容、形式ともに整っているかどうかを評価する。平常点30%出席回数(3分の2以上を必須とする)を評価する。その他0%なし備考・関連URLこの授業はオンライン授業でおこなう。授業の実施方式は資料提示(PDF、文書ファイル。音声ファイルを使うかどうか検討中)。科目名イギリス文学史1イギリス文学とは何か担当者名栩木伸明他/桑子利男/冬木ひろみ/皆本智美/吉田雅之英文コース2単位春学期火曜日3時限2年以上―合併科目―授業概要イギリス文学と一口に言っても対象とする作品はきわめて多く、また連綿と今に続く長い伝統がある。この授業ではその中から代表的な、またこれをぜひ知ってほしいという作品・作家を取り上げ、イギリス文学を概観する。まずチョーサーの時代から始めて、シェイクスピア、ミルトン、コールリッジ等を経て、18世紀、19世紀の小説へと至る大きな流れを、各専門分野の教員がリレー方式で講義してゆく。それぞれの講義日程(予定)と内容は以下の授業計画を参照のこと。授業の到達目標イギリス文学を広く、深く理解することが最終目標である。本目標を達成するために、時代別、ジャンル別に各講義を配し、全体としてイギリス文学とはどのような特徴を持つものなのかを理解できるようにしてゆく。講義―190―

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