文学部シラバス2021
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なお、授業回数の3分の2以上の出席を単位認定の必須条件とする。備考・関連URL初めの授業で、古事記についての丁寧な解説を行うので、初めて本格的に古事記を読む学生も安心して受講してほしい。授業の性格上、続けて欠席すると内容がつかみづらくなるので、努めて出席して欲しい。科目名日本語日本文学研究2(中古文学)空海の文学担当者名河野貴美子日文コース2単位秋学期火曜日2時限2年以上―合併科目―授業概要空海の三教指帰を読む。遣唐使に随って唐に渡った空海は、当時最先端の中国の学問・思想・文化を学び伝えた、奈良末・平安初期における一流の知識人である。この授業では、漢文による著述に熟達した空海の作品の講読を通して、日本文学史・文化史における空海の著作の意義を考えるとともに、古代日本において中国の学術と文化の受容がいかに行われ、日本の漢文作品がいかにして生み出されたのか、古代の知の世界を見ていきたい。授業では、空海の人と時代などについて概観した後、三教指帰を読み進める。三教指帰は、登場人物の言葉をかりて、空海が儒教、道教、仏教の何たるかを説き、またそれら三教に対する自らの考えを述べていくものである。まずは序文から始め、巻上・亀毛先生論(儒教の立場)、巻中・虚亡隠士論(道教の立場)、巻下・仮名乞児論(仏教の立場)の中から幾つかの場面、段落を選び読んでいく。対象が漢文であるため、日本のみならず中国の文献にもしばしば触れることになろうが、漢文を扱う際の基本的な工具書なども適宜紹介しながら進めていきたい。授業の到達目標日本古代の漢文学への理解を深め、漢文の読解に必要な基本的知識を身につけることを目指す。成績評価方法試験50%理解度の確認レポート0%行わない平常点50%授業への参加状況その他0%なし科目名日本語日本文学研究3(中世文学)中世私家集への展開担当者名兼築信行日文コース2単位秋学期月曜日4時限3年以上―合併科目―授業概要中世への和歌の展開を、私家集の歴史から考究する。和歌を集めて編集したテクストが歌集だが、それは、さまざま歌人の作を編した撰集(天皇または上皇の命で作られた勅撰集と、それ以外の私撰集に分かつ)と、原則として個人の単位で詠作を編した家集(私家集)に分類される。私家集は、すでに万葉時代からその存在が知られるが、平安期以降さまざまな形態の集が編まれた。これを巨視的に検討することで、それぞれの時代の和歌的状況を把握することが可能となる。本講義では、特に12世紀以降の、中世前期の私家集への展開に焦点を当てながら、そうした問題を考察する。ハンドアウトは毎回、事前にCourseN@viにアップする。これを事前に読んでおくこと。また専門性が高い講義なので、相応の復習を要する。事前、事後の学習に90〜120分を要するか。授業の到達目標和歌ならびに私家集の歴史と展開について知識を獲得し、その意義について理解する。成績評価方法試験80%第15回に理解度の確認のquizを実施する。レポート0%平常点20%レビューシートの内容など。その他0%科目名日本語日本文学研究4(近世文学)題画文学を中心とする近世近代の書画研究担当者名池澤一郎日文コース2単位春学期水曜日1時限3年以上―合併科目―授業概要題画文学とは、絵画に書き付けられた詩詞文章のことである。もともと中国の唐宋に淵源があり、明清に盛行し、日本では中国の影響下、中世五山文学や近世近代の山水画に盛んに書き付けられた。絵巻物や俳画に書き付けられた詩歌文章、浮世絵の狂歌などはそのバリエーションであり、日本化したものである。本講義では、これらの中から近世と近代に亘る時代のものを、適宜選んで紹介し、漢詩文を中心とする題画文学を綿密に解読し、絵画の世界との関係を開示したい。また近世近代の日本人は、現在のように文字をパソコンスマホで綴るのではなくして、筆を執って墨に浸してから、和紙や絹布に書き綴り、布字の速度を保つために、ほとんどの文字はくずし字か草書である。現在は明朝活字を基礎とする楷書で漢字を書き綴るが、当時は草書が一般であった。現在のわれわれはほとんど草書を書かないし、読まないので、題画文学の常態である草書の漢詩文は欧米語以上に縁遠いものとなっているが、近世近代の日本人は草書やくずし字で日本語を書き綴るのが常態なので、楷書を忘れてしまう場合すらあったのである。この現代と近世近代との常態の変化は、われわれを古典どころか、祖父母の時代に毛筆で書き綴られた文字すら読めなくしていて、歴史や古典との断絶という非人間的状況を現出している。この反省に立って、講義の中ではゆっくりと丁寧に草書やくずし字の、題画文学を読解する。受講者はほぼ全員初学の段階にあると思われるので読解方法については基本から伝授したいと考えている。授業の到達目標従来、美術史や中国文学の領域とされていた書画、題画文学について、日本文学史に組み込むことを志す。受講者には近代以降の西欧中心に形成されたジャンル意識がどれほど題画文学のような総合藝術の実態を破壊してしまっているかについての認識講義―171―

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