文化構想学部シラバス2021
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科目名ポスト/モダニズム論精神分析のポリティクス担当者名工藤顕太表象2単位春学期水曜日3時限2年以上―合併科目―授業概要本講義は、ジークムント・フロイトが創始した神経症治療の実践である精神分析を全体のテーマとする。今日フロイトの仕事は、彼が発見した無意識の概念とともに名高いが、本講義では、とりわけフロイトが強調した精神分析の運動としての性質に着目し、その歴史を捉え直してみたい。19世紀における医学の発展を土台として、フロイト個人の実践として始まった精神分析は、ヨーロッパのなかで徐々に広がりをみせ、多様化と国際化を続けて現在に至っている。精神分析家という新たな職業が生まれ、国際精神分析協会をはじめとした大規模な組織が作られ、フロイトが暮らしたウィーンから、チューリッヒ、ベルリン、ブダペスト、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、サンパウロへと精神分析運動が伝播していくなかで、一体何が起こったのか。これを問うことは、ヨーロッパを中心とした国際社会が経験した20世紀という時代を、精神分析との関係から問い直すことでもある。本講義の出発点となるのは、そもそもフロイトにとって精神分析とは何だったのか、という基本的な問いである。したがって、無意識、転移、抑圧、欲動、幼児期のセクシュアリティ、エディプスコンプレクス、去勢コンプレクスといったフロイト独自の理論や概念を、それが生み出された歴史的コンテクストに立ち返りながら理解することから始めよう。もちろん、こうした作業においても、精神分析運動のなかで何が起こっていたのかという視点が重要な意味を持つ。なかでも、フロイトがユダヤ人だったという事実は、この運動が国際化するなかでその重みを徐々に増してゆくことになる。精神分析を純然たる科学として確立し、それを自身のユダヤ的アイデンティティから切り離すというフロイトの目論見とは裏腹に、初期の運動の担った分析家たちの多くはユダヤ人だった。1920年には分析家養成と外来診療を担う世界初の総合的な精神分析施設がベルリンに誕生するが、ナチスの台頭とともにフロイトの著作が焚書とされるのはそのわずか10年あまり後のことである。第二次対戦後、精神分析運動の中心地はアメリカに移ることになるが、フロイト亡き後、この再出発を担ったのは、ファシズムの惨禍に覆われたヨーロッパから亡命することを余儀なくされた分析家たちだった。このように、精神分析の歴史は、心の病とその治療をめぐる実践と思想の歴史であると同時に、それを陰に陽に方向づけている政治的問題、宗教と科学の緊張関係、人種差別、国家による学問統制といった問題がたどってきた歴史でもある。この歴史を紐解くことでみえてくるのは、患者が自身の無意識と向き合うという本来きわめて個人的な営みである精神分析を伝達し、共有することの困難と可能性である。授業の到達目標精神分析の基本的な考え方とその歴史的位置づけについて理解する成績評価方法試験0%なしレポート80%学期末レポートで授業の理解度をもとに評価する。平常点20%副次的な要素として出席率を加味する。その他0%なし科目名マンガ文化論作品としてのマンガ担当者名石岡良治表象2単位春学期無フルOD2年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要※本授業は全回オンデマンド授業として実施します。コミックスバンドデシネグラフィックノベルなどの総称としてのマンガは、文字と画像が組み合わされコマを読解の単位とした連続的芸術(sequentialart)(ウィル・アイズナー)とみなされる。現代日本のマンガでは視線誘導など可読性を重視したエンタメ作品が多く、マンガの読解コードに慣れ親しんだ者は素早く読むことができるが、時代や地域など慣習の異なるマンガ表現に接するとき、読解コードの自明性は揺らぎ、ときには難解に思えるかもしれない。本講義は総称としてのマンガ表現の広がりをその歴史とともに概観しつつ、古典的マンガ作品の魅力をひもといていく導入となることを目指す。受講者には、以下に挙げたリストを参考に、慣れ親しんでいないマンガ作品に触れ、中間レポートを提出することが求められる。そのうえで、学期末レポートでは別の作品(こちらでは現代マンガも可とする)を分析することで、これまで自明視していたマンガの読解コードを意識した上で、多種多様なマンガ表現の魅力にふれてもらいたい。古典作品リスト(例)手塚治虫火の鳥白土三平カムイ伝高森朝雄&ちばてつやあしたのジョー永井豪デビルマン諸星大二郎暗黒神話荒木飛呂彦バオー来訪者楳図かずおわたしは真悟松本大洋ピンポン萩尾望都ポーの一族竹宮恵子風と木の詩大島弓子バナナブレッドのプディング山岸凉子日出処の天子紡木たくホットロード岩館真理子キララのキ講義―87―

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