文化構想学部シラバス2021
244/620

こった社会経済史的な変革に焦点を当てて考察する。新たな大転換期を迎えた前二千年紀前半の社会を伝える代表的史料ハンムラビ法典の本質と各条項のもつ社会経済史上の意義を講義する。バビロン市の王ハンムラビ(在位前1792〜1750年)は古代メソポタミア史上3番目の統一国家を築き、新たな統治体制の指針としてハンムラビ法典(以下、法典)を編纂させた為政者として有名である。近年、彼の生きた時代は古代メソポタミア史のみならず人類史上の一大変革期であったことが明らかになり、また、最新の資料研究に基づく彼の事績に関する総括的な研究書も再び増えつつある。しかしながら、彼の事績研究において最大の史料であるはずの法典の特徴づけは未だ伝統的な法制史解釈に偏り、彼が目指した統合支配体制の実態解明には十分に活かされていないと考える。本講義は法典の内容理解を主題とするが、そのような見解に至る理由を明らかにするため、まずはその成立の背景となるウル第三王朝期から古バビロニア時代までの歴史の流れを詳述することから始めてみたい。その後、原文から邦訳したハンムラビ法典を利用して、全280条あまりの法令と前文・跋文を受講者とともに系統的に分析しながら、その特徴と内容を理解していく。目には目をあるいは身分法的特徴という漠然とした(刑法)イメージで知られるこの歴史的な史料の持つ真の意味が、果たしてそうなのかを検証するとともに、それ以外の条項(訴訟法・土地制度法・債権法・商法・家族法・契約法)の真意を、様々な副次的史料(プリント配布予定)を活用しながら検討していく。講義の回数が短いため、全てを明らかにすることは難しいと思われるが、最終的には、当時の都市社会に起った社会的・政治的そして経済的変化と法典の各条項の相関性、そしてハンムラビの統一国家運営の理念を理解してもらいたい。授業の到達目標1.古代メソポタミア文明の世界で展開された歴史の概要とその特徴を知る。2.古代世界の歴史的な展開とその特徴を具体的な史料から読み解くための思考法を修得し、古代史研究におけるより専門的な史料読解や史料批判の方法、専門研究に必須となる基礎知識や歴史用語を身につける。3.最新の研究状況を知り、歴史研究におけるテーマの立て方や分析の仕方、レポートの作製法を学習する。成績評価方法試験0%・試験は行わずレポートと平常点評価で採点します。レポート70%・第15回目の講義日前後に最終レポートを作成・提出してもらいます(事務所提出)。・レポート課題の詳細は、6月の授業中に詳細を提示します。・本講義で身につけた知識から独自のテーマを導き出し、的確に探求しレポート出来るかを評価します。・5月末締め切りで簡単な課題図書読後感想文を提出してもらいます。平常点30%・毎回出席を確認します。出席を評価の対象とします。・毎回の講義前や講義中に質問や発言時間を設けます。積極的な質問や発言を評価します。その他0%・平常の発言などを最終的な採点に加味します。備考・関連URL関連URLhttp:www.oi.uchicago.eduOIDEPTRAABZU‒REGINDX‒MESO.HTML(シカゴ大学オリエント研究所のホームアドレス・但し英文のみ)など備考講義で使用するレジュメは毎回配布する予定なので、整理用にA4版ファイルを用意してください。科目名西洋中世史1中世ヨーロッパ世界の諸相:キリスト教秩序と都市社会担当者名鈴木喜晴西史コース2単位春学期水曜日3時限2年以上―合併科目―授業概要近代ヨーロッパ、あるいは近代世界は、多かれ少なかれ変容を経つつも中世キリスト教世界から多くの遺産を受け継いでいる。この中世的なるものの諸要素は、おおよそ11世紀以降に明確な姿を現し、その後、現代の我々がヨーロッパと想定する地域全体へと広がっていった。本講義は二名の講師(鈴木・齋藤)がこうした諸要素を多角的に分析し、受講者に有機的な中世ヨーロッパ像を提示しようとする試みである。鈴木はこの時期から改革教皇庁を軸として急速に発展した教会組織について論じる。齋藤は都市社会を取り上げ、その政治的・経済的・社会的様相について検討する。講義で扱う地理的範囲はイタリアと現在のフランスやドイツに該当するアルプス以北にほぼ限られるが、時間の許す範囲で他の地域とのかかわりについても触れたい。授業の到達目標・中世ヨーロッパ社会について一般的知見(学部レベルの教養、または西洋史コースの専門講義を理解するための予備知識)を得ること。・中世ヨーロッパ社会の成立・統合過程を理解すること。・教会組織が社会に及ぼしていた影響力を理解すること。・中世社会の秩序や人々の生活について当時の性質や現代との相違を理解すること。・その他の諸問題についても、受講者自身が自主的に学習を深めていくための足掛かりをつくること。成績評価方法試験0%なしレポート70%期末に授業内容の理解度を確認するため、課題レポートを課す。平常点30%出席カードを適宜配布する。その他0%なし科目名考古学概論考古学とはどんな学問か担当者名近藤二郎考古コース2単位春学期土曜日4時限2年以上―合併科目―授業概要考古学とは、どんな学問分野であるか、その形成期からの歴史をたどりながら、考古学の全容を説明していく。特に、ダー講義―247―

元のページ  ../index.html#244

このブックを見る