文化構想学部シラバス2021
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とはまったく異なる特有の文化が成立している可能性があるからです。このような関心にもとづいて領域横断的な枠組みで展開される研究のことを、現在のドイツ語圏では一般に文化学(Kulturwissenschaft)という名で総称しています。この授業の目的は、過去の文学作品のなかに残されているそのようなさまざまな文化の痕跡を探し出し、歴史と文学のあいだをつなぐ複数の回路を開通させることにあります。文化史という視点に立って、数回ごとに文脈(テーマ)を変えながら、現代の文学研究において大きな潮流をなしている文化学の一端に触れていきましょう。*なお、この授業は全回オンデマンド授業として実施します。授業の到達目標近代ドイツ文学についての知見を深め、さまざまな歴史的な文脈のなかで文学を読み解く意義を確認するとともに、文学の側から特定の歴史的状況について考察する意義を体感することがここでの目標です。また、ふだんはいわゆる政治史として語られがちな歴史を、文学と文化という切り口からとらえ直すことで、政治的・社会的な出来事と同時代の文化的な現象とが密接に連動していることを理解してもらいたいと思います。成績評価方法試験0%なし。レポート60%学期末にレポートを提出してもらいます。詳細については授業時に指示します。平常点40%リアクションペーパーの作成を求めます。その他0%なし。備考・関連URLドイツ文学についての前提知識は必ずしも必要ではありません。むしろ、過去に書かれたテクストを手がかりに、その時代の社会や文化について(あるいは、私たちが生きる現代の社会や文化について)批判的に考察する意欲を持った方たちの受講を歓迎します。科目名ドイツ言語文化論読み応えのあるドイツ語を読む担当者名藤井明彦独文コース2単位秋学期火曜日3時限2年以上―合併科目―授業概要読んだときに充実した満足感が得られるドイツ語のテクストを選んで,読む授業。ドイツ語を綴っていく時の絶妙な呼吸を味わうことができるトーマス・マンのトニオ・クレーゲル,軽妙洒脱な筆致が楽しいのヨーゼフ・ロートの聖なる酔っ払いの伝説,雄大な情景から繊細な心情まで圧倒的な表現の振幅で展開するゲーテのファウスト,文学関係以外では,敗戦から40年の1985年にヴァイツゼッカー大統領(当時)が連邦議会で行なった余りにも有名な演説,それとは対照的だが大衆の心を掴む点ではヒトラーも演説の名手だった。このようなドイツ語テクストを,訳読するというより玩読していく。講義科目ですが,参加者にはテクストの音読と既存の日本語訳の検討を分担して担当してもらいます。授業の到達目標テクストを理解するだけではなく味わうレベルにまでドイツ語の読解力を高めることが目標です。成績評価方法試験0%行いませんレポート0%必要ありません平常点100%授業参加度を顧慮しますその他0%特になし備考・関連URL授業は基本的に対面で行います。科目名ウィーン文化論担当者名藤井明彦他/飯田道子/岩谷秋美/村井翔/山本浩司独文コース2単位春学期無フルOD1年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要魅力的でいてどこか冷たく、華やかでいて死の臭いのする街、中欧の土の匂いとカフェの甘い香り、永遠に昨日の世界であるかのような保守性とそれを鋭く切り裂く革新性。このように様々な顔を持つ都市ウィーンの文学・美術・音楽・建築・思想・映画に関して、早稲田の内外の専門家が講義を行う、【ドイツ語ドイツ文学コース主催】の総合講座的科目です。●ウィーンと言えば、まずは音楽。新年恒例の楽友協会ホールでのニューイヤーコンサートの歴代の映像からこれぞWienerMusik(ウィーンの音楽)という演奏を厳選して鑑賞します。更にウィーンで活躍した作曲家の代表的存在とも言えるモーツァルトを取り上げて,オペラフィガロの結婚に盛り込まれたモーツァルトの作曲技法を分析します。またウィーンの世紀末文化におけるユダヤ系エリートとユダヤ人楽師たちのユダヤ性について考えます。●文学の分野では,戦後のドイツ語文学のなかで唯一実験的なモダニズムの伝統を継いだエルンスト・ヤンドルの観客を笑いの渦に巻き込む話芸,戦後演劇におけるオーストリア的革新の担い手ペーター・ハントケのト書きだけの無言劇や観客罵倒劇,そして一度読んだら病みつきになる小説家トーマス・ベルンハルトの妙に晴れやかな言葉の罵倒芸などを楽しみます。●マーラーとフロイトは実際に会って、フロイトがマーラーのカウンセリングをしたこともあります。二人は四歳違いで、ハプスブルク帝国の領土であったチェコ語地域(今日のチェコ共和国)出身のドイツ語を母国語とするユダヤ人という点でも共通しています。マージナル・マン(周縁の人)であったことが彼らの巨大な創造的エネルギーを生み出したのです。思想・音楽の分野では世紀転換期のウィーン文化を代表するこの二人に焦点を当てます。●美術の分野では,まずウィーンを代表する中世から近代までの建築を考察し,建築における伝統と革新について考えます。その後,クリムトとシーレという世紀末ウィーンを代表するふたりの画家の美術史における意義を検証し,さらに工芸の分野へと探索の足を延ばして世紀末ウィーンの様式(ユーゲントシュティル)の特質について考えます。●ウィーンは繰り返し映像作品の舞台となってきました。映画の分野では,戦前の映画,1950年代の映画,現在活躍しているオーストリア出身の映像作家たちの映画におけるウィーンの表象の変遷を跡づけます。特に,皇妃エリザベートを主人公とするシシーシリーズにこめられた戦後オーストリアの願いを,エリザベートを生涯にわたって演じることとなったひとりの女優の運命も視講義―209―

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