文化構想学部シラバス2021
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科目名イギリスの神話と伝説英語文学に見られる神話と伝説の物語性担当者名宮城徳也英文コース2単位秋学期無フルOD1年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要本授業は全回オンデマンド授業として実施します.イギリス(イングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドなど連合王国領,また便宜的にこの場合に限ってアイルランド共和国も視野に入れる)における神話,伝説という場合に,ギリシャ・ローマ神話,北欧神話に代表されるゲルマン民族(アングロ・サクソンはゲルマン民族)の神話,伝説,ケルト民族(スコットランド,ウェールズ,アイルランド,コーンウォール地方)の神話,伝説と,それらが混在し,影響し合っての伝承が考えられますので,複雑な様相を呈しており,わからないことも多く存在しますが,文学と伝承童謡に現れた,これらの要素を整理,分析,紹介して,全体としてのイギリスの神話と伝説について考察します.イギリスという存在は,先住民族たちの基層の上にケルト人であるブリトン人,ゲルマン人でアングロ・サクソン,さらにゲルマン人なのにフランス語話者であるノルマン人の征服があり,言語にも大きな影響を及ぼしました.さらにそれ以前から浸透していたキリスト教にも,神話,伝説の要素があり,政治との葛藤や宗教改革を経て,イギリスのキリスト教文化も変容していきます.こうした文化,言語,宗教を背景としてイギリス文学が形成されて行くので,イギリス文学自体が多様ですが,その重要な構成要素の一端を担う神話,伝説も多様で独自の要素を持っています.授業では必要に応じて,英語の原文を示しますが,基本的に翻訳を用いて授業を進めます.授業の到達目標授業概要で言及しているイギリス文学の多様性を理解して,それを楽しむために,構成要素の一つに過ぎないとは言え,重要な意味を持つ神話と伝説の面から,イギリス文学を考察し,少しでも理解を深めることを目標とします.成績評価方法試験0%オンデマンドなので,教室での試験は行ないません.レポート40%学期末に,授業で学んだことをもとにしてレポート(2000字程度)を作成してもらい,WasedaMoodleで提出してもらいます.平常点60%毎回,授業の要約と見解(200字程度)を課題として提出してもらい,あわせて小テストを実施して(課題20%,小テスト40%),平常点として評価します.その他0%その他は特にありません.備考・関連URL授業で紹介します.科目名イギリス小説の愉しみジェイムズ・ジョイス(JamesJoyce)のユリシーズ(Ulysses)を通読する担当者名小林広直英文コース2単位秋学期火曜日2時限1年以上―合併科目4授業概要20世紀で最も優れた小説(のひとつ)と称される、ジェイムズ・ジョイスのユリシーズ(1922)は、来年2022年に出版100周年を迎えます。この機会に、独力ではなかかな読み通すことの難しい本作品を、ぜひ一度紐解いてみましょう。本講義では、毎週各挿話(各章)のあらすじと読みどころを解説しますので、これで読んだフリ(?)もできますし、もしあなたが関心を持たれたならば、翻訳を入手して、原文と共に通読してみてください。まず、この小説を簡単に紹介します。ジョイスが後に妻となる女性、ノーラ・バーナクルと初めてのデートをした、1904年6月16日アイルランドのダブリン――このたった1日の出来事をジョイスは、ホメロスのオデュッセイアに擬えつつ(神話的平行関係)、意識の流れやモンタージュ、パスティーシュやカタログ化といった文学的技法を駆使して、実に事細かに描き尽くします。カトリック教会による宗教的支配と大英帝国による政治的支配、(ポスト)コロニアルな問題系を含みこむユリシーズは、まず2人の男性主人公――1904年当時の作者の分身(alterego)であるカトリック・アイリッシュのスティーヴン・デダラス(22歳)と、ユダヤ系アイルランド人レオポルド・ブルーム(38歳)――の朝8時から始まります。朝食を食べ、家を出た彼らの彷徨(街歩き)は、臨時講師としての授業、ミサへの参加、浜辺での思索、葬儀への参列、新聞社での仕事、幸福な過去を回顧しながらの昼食、図書館でのシェイクスピア談議、食後の散策、ホテルのバーでの音楽鑑賞、ナショナリズムを巡る酒場での政治的議論、浜辺での手淫(!)、産院での酒宴と馬鹿騒ぎ、幻覚の渦巻く夜の街での乱痴気騒ぎ、改めての互いの自己紹介へと続き、ブルームは自宅にスティーヴンを招き入れ、歓待したのち、別れ、やがて妻、モリー(33歳)が眠るベッドへと帰還します。そして深夜、彼女はこの日に起きた愛人との情事を思い出しながら、過去と今と未来と、様々なことに想いを馳せ、眠りに就きます。難解と名高いユリシーズは、しばしば百科事典に擬えられますが、そのこころは、人間に関するありとあらゆることが描かれているということに尽きます。ですから、テクストを読みながら私たちの日常生活(everydaylife)を常に参照することで、ジョイスを読む難しさは愉しみへと変換されることでしょう。そして、ユリシーズを読むことはできない。できるのは再読することだけだというジョゼフ・フランク(JesephFrank)の言葉にあるように、私たち文学部の学生が日常的に行っている読むという行為を再考してみましょう――読むとはどのような営みか、何故に読むことができ、読むことができないのか。私自身、ジョイスの専門家ということに一応(?)なっていますが、言うまでもなく、まだまだたくさん学ぶことが多いと自覚しています("Ihavemuch,muchtolearn")。決して汲みつくすことのできないユリシーズの魅力を、皆さんと一緒に学んでいきたい、と思います。本授業は全回リアルタイム配信型授業(zoom)として実施します。ただし、欠席者、あるいは復習を希望する学生のために、録画した動画を後日Moodleから視聴することも可能です。授業の到達目標1.英語で書かれた文学作品の精読の方法を習得する講義―199―

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