文化構想学部シラバス2021
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哲学は、当たり前だと思われていることをいったん括弧に入れて、物事を原理的・根本的に考え直す営みであり、そのための概念や理論を組み立てる営みです。そして、人間はどう生きるべきか、社会はどうあるべきかについて、原理的・根本的に考える哲学の一分野が倫理学です。この科目では、私たちはどう生きるべきか、私たちの社会はどうあるべきか、という視座から、グローバル化について原理的・根本的に考えていきたいと思います。つまり、グローバル化と日常生活について哲学的・倫理学的に考えることが、この科目の全体を通したテーマです。グローバル化によって、私たちの日常生活は、一見すると私たちにとって身近とは思えない、遠くの国の政治や経済の状況、グローバル企業の活動などによって、大きく左右されるようになっています。本講義では、政治学や経済学の予備知識は必要ありませんが、必ずしも私たちが制御しきれないグローバルな政治や経済の動きが、私たちの日常生活に大きな影響を与えるようになっているという問題意識に立って、これからの政治や経済のあるべきしくみについて、哲学的に考えていきます。また、グローバル化は現在進行中の現象ですが、そうであるがゆえに、私たちはグローバル化について考察するのに必要な距離を置くことが困難です。そこで本講義は、グローバル化を近代という少し長い時間の幅の文脈に置き直しつつ、現在の私たちの社会のしくみと過去の類似のしくみとの比較検討を試みます。つまり、グローバル化について哲学的に考えるための方法の一つとして、社会のしくみの歴史的な変化を手がかりにします。社会における課題をめぐっては、相手を罵倒したり論破したりするのではなく、様々な立場や考えの人たちが知恵を出し合って、様々な議論の長所や短所を検討し、より良い妥協点を探るといった地道な作業を続ける必要があります。グローバル化は、私たちの日常生活にとって、様々なメリットやデメリットがあります。それを確認した上で、自分たちにとっての直接的なメリットやデメリットはいったんカッコに入れて、グローバル化について、原理的・理論的に検討します。本講義では、予備知識は必要ありませんが、グローバル化をめぐる、答えが簡単には見つからない問題について、考え方や価値観は人それぞれだで終わるのではなく、粘り強く、かつ柔軟に考える受講者を期待します。本講義の全15回の授業うち、前半の7回では、グローバル化とはどのような現象なのか、ということをテーマごとに概観します。後半の8回では、グローバル化が私たちの生活や社会にとってどのようなインパクトを持つのか、ということを考察します。授業の到達目標・グローバル化について多面的な視座から理解できるようになる・グローバル化という観点から、人間の生き方や社会のあり方について原理的・根本的に考察できるようになる・グローバル化をめぐる課題に関して、自分の見解とその理由や根拠を理論的・論理的に表現できるようになる成績評価方法●試験70%第15回の授業時間中に試験を実施し、理解度の確認を行います(試験の解説も同時間内に行います)。●平常点30%第4回から第13回には、WasedaMoodle上で小テストを行い、授業参加への積極性を評価します備考・関連URL・講義資料と小テストをWasedaMoodleで掲載します。・第15回の授業では、試験課題の解説も同時間内に行います。・他の受講者に迷惑をかける行為、講義を妨げる行為は厳禁です。節度を保ち、緊張感をもって、主体的に学習に取り組むことを期待します。・グローバル化と日常生活について考える上で、あなたの心を乱すような問題を扱うかもしれません。何らかの立場の方々や、何らかの経験をされている方々のことを非難したり揶揄したりするような意図はありませんので、ご理解ください。・私たちが向き合っている現実は複雑で不透明あり、安易な単純化を許しません。そのような現実にあって、単純明快な議論は警戒すべきです。不必要に難しい言葉を使わないように心がけますが、安易なわかりやすさは期待しないてください。・社会における課題について哲学的・倫理学的に考察する上では、初等数学のように一義的な正解が決まるわけではありません。他方で、それぞれの議論には、それを支持する理由や論拠のもっともらしさや確からしさに程度の違いがあります。(つまり、哲学や倫理学のレポートや答案でも、考えや価値観の違いとは異なる次元で、例えば、議論の一貫性や公平性といった観点で優劣が判別されます。)・様々な考えや議論を多角的・批判的に検討しますが、特定の価値や判断を強要したり、否定したりする意図はありません。事実として、考えや価値観は人それぞれかと思いますし、各人の思考や判断は尊重されるべきかと思います。他方で、社会における課題を考える上では、考えや価値観は人それぞれだで済ませるわけにいかない場合があります。グローバル化をめぐる、答えが簡単には見つからない問題について、考え方や価値観は人それぞれだで終わるのではなく、粘り強くかつ柔軟に思考することが重要です。・私たちの日常生活に影響を与えているグローバルな政治や経済のしくみについて、歴史的な視野も踏まえて原理的に分析し、その上でこれからの私たちの人生や私たちの社会はどうあるべきかということについて、哲学・倫理学的な観点から理論的に構想する、といった手間のかかる作業に労力を割く気概のある履修者を期待します。科目名コミュニケーション論個人化する社会における人間関係担当者名石田光規人間2単位秋学期月曜日2時限1年以上―合併科目―授業概要現在の社会はとりわけ個人を重視する。個人を重視する傾向は、円滑な人間関係と時に鋭く対立する。この講義では、人びとの人間関係およびコミュニケーションがどのように変わりつつあるのか、具体的事例を用いながら解説してゆく。そのさい、学術的な理論を基礎に、現在公開されている統計データおよび映像から日本社会の人間関係の実情を学んでゆく。授業の到達目標対人的なコミュニケーションといったミクロな視点ではなく、マクロな視点から私たちの人間関係および生活空間を捉えなおす。成績評価方法試験0%とくに実施する予定はないレポート60%期末レポート平常点40%授業内課題、出席状況講義―108―

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