文化構想学部シラバス2021
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中心的テーマではありませんが、災厄(この場合はペスト)という巨大な社会的不幸が生活・生存の条件として生じた時(それは不条理とも言えます)に、人々の行動や判断にどのような影響がおよぶのかを理解することは、上に述べたような意味で、自律の問題を考えるための格好の題材であるように思います。また、倫理の問題の核心の一つは自分と他者の間に何らかの“かけ橋”を見出せるかということであると言えますが、カミュが最終的な希望としていた連帯がその倫理的解答になるのかという可能性についても、できれば考察したいと思います。テキストとしては、新潮文庫版の宮崎嶺雄訳ペストを用います(各人で用意して下さい)。授業の構成としては、予備的作業として最初の2回ほどで自律概念の一般的解釈について説明し、次の8回ほどでペストを読みながら自律的な人間自律を抑圧するものとはどのようなものなのかを考察していきます。最後の2、3回の講義では、自律に関する著名な哲学的考え方や理論を紹介します。授業の到達目標アルベール・カミュの小説ペストを読みながら、哲学・倫理学において人間理解のために重要とされる自律(autonomy)概念を考察し、受講者各人が自律概念の意義と広がりを理解する。成績評価方法・授業中の態度:携帯スマホ使用や私語は禁止。・授業中も、参加者の発言や感想を期待するが、発言はなくとも、RPに簡単なコメントを書いて提出してもらう。・採点の割合:平常点【40%】:授業態度を含む。ただし、2分の1以上の出席を最低限の義務とする(すなわち、出席が授業機会全体の半数に満たない者は不合格とします)。レポート(または試験)【60%】:テーマや問いは、講義あるいはクラスでの議論に関連するもの。備考・関連URL・受講者数にもよりますが、基本的には講義形式で行う予定です。カミュ著ペストの読むべき個所は、毎回指示します。・期末試験は、レポートか試験のどちらかを考えています(受講者人数に応じて決定します)。科目名西洋近代思想担当者名田原彰太郎人間2単位春学期無フルOD2年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要哲学を学ぶ人であれば、その学びの途上で西洋近代哲学の基礎知識が必要になります。この講義では、その基礎知識の獲得を目的とした西洋近代哲学の概説を行います。この講義で扱うのは、デカルトからドイツ観念論までの思想家です。この講義では、教科書的な知識を暗記するというよりは、それぞれの思想家のテクストの邦訳に実際に触れ、自分で考え、自分で理解するという経験ができるように各回の授業を構成する予定です。基本的には、近代西洋哲学を代表する各哲学者の思想を、一人ずつ1〜2回の授業を使い解説する予定ですが、近代哲学の流れや文脈も同時に理解できるように中間考察やまとめといった回も設け、その際に各哲学者間の関連などについても考察します。この授業で扱う予定の哲学者の詳細は、授業計画をご覧ください。授業の到達目標この講義を通じて皆さんには、西洋近代哲学の基礎知識を獲得するとともに、この講義で扱う哲学者の言葉に向き合い、自分で考え理解する能力も身に付けてほしいと思います。成績評価方法試験0%レポート80%期末レポートを課し、その点数で評価を行います。平常点20%3分の2以上の出席を単位取得の条件とし、期末レポートで評価を行います。その他0%科目名公共性の哲学思想公共性再考担当者名浜野喬士人間2単位秋学期無フルOD2年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要公共性の問題は、哲学、倫理学、社会思想等の各領域において、この数十年、非常に重要な問題として扱われてきた。それは近年各国で見られる民主主義の動揺、グローバル資本主義の圧倒的席巻、移民・難民問題の深刻化という事態を前に、深刻の度を増している。本講義ではこうした今日的現象を、広く思想的な観点から再考するために、参考となる哲学者の基礎的な文献を辿り、問題を深く問い直すための視座への足掛かりを探すものである。主要検討対象としては、アーレント、アドルノ、カント、グラムシ、サルトル、サンデル、ハーバマス、バーリン、フィヒテ、ホッブズ、ルソー、ロック、ロールズ等であるが、折に触れ関連する哲学思想も見ていくことになる。授業の到達目標公共性の問題を、たんに表層的に捉えるだけでなく、哲学的な観点から立体的に思考するための批判的思考力を養う。成績評価方法試験100%授業の理解度を確認するために、各回のコンテンツにはそれぞれ小テスト(正誤5問)が出される。レポート0%実施しない。平常点0%特になし。その他0%特になし。備考・関連URL1.各コンテンツのダウンロード可能期間終了間際は混雑することが予想される。あらかじめ余裕をもってダウンロードしておくこと。2.各コンテンツに付属する小テストは回答可能期限が定められている。期限外の受験はできない。期間終了間際は混雑することが予想されるので注意すること。講義―106―

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