文化構想学部シラバス2021
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授業の到達目標現実に問題にぶつかったときのために、広い視野、重層的なものの見方を養い、的確な判断ができるための倫理的な視点を形成することが目的です。多岐にわたる応用倫理学の問題に触れることで、倫理学のさまざまな分野の知識、洞察へのオリエンテーションをつけます。成績評価方法試験:100パーセント期末の試験で決まります。ただし、出席が足りない場合は、試験を受けることができません。備考・関連URL出席は3分の2以上していることが基本です。現下の状況を考えて、授業は対面とオンラインでのオンデマンド講義を併用し、半分ほどはオンデマンドでの講義となる予定です。どの回がオンデマンドとなるかは、先立つ週に前もって、Moodleでお知らせしますので注意してください。細かい説明は、最初のイントロダクションの際に行います。最初のイントロダクションの授業と、最終回の理解度の確認(教場での試験)については、対面で行いますので、そのように準備してください。科目名社会倫理学ともに生きるための原理担当者名御子柴善之人間2単位秋学期木曜日2時限1年以上―合併科目―授業概要社会倫理学という学問分野は、いくつかの歴史的経緯の中では既存のものです。しかし、この講義では、個人倫理と対比されるものとして社会倫理を捉えることで、新たな社会倫理学を構想します。私たちの住む世界には、各人がどうでもよくないと思う問題が山積していますが、その中にはその解決が個人のちからではどうしようもないと思われるものも多く含まれます。たとえば、地球環境問題対策や高齢社会における介護です。そうした問題も、ともに生きる人々がそれを社会や社会制度の問題として明確に捉え、社会を改善する方向を見定めることで、解決できるかもしれません。したがって、この講義で構想する社会倫理学は社会はどうあるべきなのかという問いを立て、それに答えることを課題として引き受けるものです。この授業を通して、社会倫理学という学問の広がりを体験し、自らの研究テーマを確立するための一助としてもらいたいと思います。授業の到達目標この講義は、社会倫理の諸原理に統一的体系性を見出そうとするものでもあります。講義する側はその点を到達目標とするので、受講する方も、ともに社会のあるべき姿を構想できる構えを自分のものにできるように、そのための知識を得てください。これが授業の到達目標です。成績評価方法試験95%理解度を確認するための試験を行います。レポート0%特にレポートは課しません。平常点5%授業回数の三分の二以上、出席していることを成績評価の条件とします。その他0%特にありません。備考・関連URLこの授業では、ときに新聞記事を参照します。参加者も自分で日々の新聞報道に目を向け、どうでもよくない問題を見つけて、それがどうしてどうでもよくないのかを考えてみてください。それが授業理解の手がかりになるでしょう。毎回配布する出席カードの裏に、授業に対する質問・感想・要望を書いてください。代表的な質問に次回の授業でお答えする予定です。関連URL:特になし。この授業は教室で実施する予定です。科目名哲学的人間学カミュ著ペストで読み解く自律の問題担当者名石田安実人間2単位春学期無フルOD1年以上―合併科目フルオンデマンド授業概要この授業では自律(autonomy)の問題を扱います。自律とは、基本的には自己コントロールのことですが、どのような状況で成立するのでしょうか。自律の概念は、私たちの実社会で重要であるだけでなく、哲学・倫理学の分野でもたいへん重要視されてきました。実生活では、物事を自分のために決めたり選択したりする時に自己決定や自由選択の核となるものとして行使することが期待される能力であり、またその能力行使の度合いは精神的な成長や成熟度を示す目安とされることもあります。一方、哲学・倫理学の分野では、これまで多くの場合、ある判断や行為がなされるにあたっては、自立し冷静で自律的に判断できる理性的な成人(個人)という人間像が前提とされてきました。さらに現代の生命医療倫理の分野では、たとえば治療の場面で、患者側の自律的決定が期待され、また同時にそれを尊重することが要求されたりもします(その理念は自律性尊重の原則と呼ばれます)。それほどに自律は重要な概念ですが、しかし、ふだんの私たち自身の判断や行動のあり方、さらには成長の仕方を考えると、自律がすべての者で等しく完全な形で実現されていると言えないことは明らかであるように思います。ある程度成長した個人を前提したとしても、自律的判断・行動を行うにあたっては、自分の周りの人々や、従わなくてはいけない社会的規則や伝統的慣習、あるいは既成の権威が大きく影響することがほとんどでしょう。自律を確立させるには、外部のいわゆる“圧力”や“権威”との摩擦や衝突を経験せざるを得ないと言えます。つまり自律の問題は、外部の何ものかとの関係における服従や抑圧の文脈で考えるべきことでもあるのです。こうした問題を、この授業では、昨年度、自律を扱ったさまざまな理論を概観することで考察しましたが、今年は、不条理の哲学で知られるアルベール・カミュの小説ペストを読みながら考えていきたいと思います。自律はペストの講義―105―

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