学部入学案内
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形ある作品と接しながら研究できる喜び美術史とは、過去に作られた美術作品をもとに研究を行う歴史学の一分野です。同時に、美学的な批評を行ったり作品の背後にある思想を探求するという意味では、哲学的な側面もそなえていると言えます。物や形は、時として言葉以上に雄弁です。作品に表現されたモチーフや、描き方、技法などを丹念に見ていくことで、制作された年代や画家の特定が可能になるだけでなく、各時代の人々の営みや宗教観、世界観、さらには美の理念についても理解を深めることができます。つまり美術史は物や形を核としながら、そこに宗教や思想、文学、歴史などが関係する幅の広い学問なのです。また研究対象も広く、絵画や彫刻、建築をはじめ、広告、デザイン、ファッション、漫画や落書きにいたるまで、あらゆる造形物が射程に入ります。イタリア美術史を専門とする私自身が、美術史の一番の面白さだと感じるのは、実体のある作品と接しながら研究ができる点です。たとえ行き詰まっても、常に立ち返る先として形とその美しさが存在することは、研究をする上での支えにもなります。加えて過去をたどることで、その延長上にある未来を考察できることも、美術史を学ぶ醍醐味と言えるでしょう。実物からこそ伝わる作品の真の力美術史の研究では、実物の作品を見ることと文献資料を読むことの両方が欠かせません。インターネットを通して世界中の傑作を手元で眺められる時代ですが、画面で見る作品と、実物とはまったく違います。実際の作品を肉眼で見ることで、全体の配置やスケール、ありのままの色や質感を捉えることができ、作品が持つ真の力を実感することでしょう。美術史コースの伝統行事である3年次の奈良研修旅行や、年に数回実施される美術館見学など、実物の作品を前に教員の解説を聞きながら学びを深められる機会をぜひ活用してください。伝統ある早稲田の美術史コースの良さは、日本、東洋、西洋の各美術史の基礎知識や方法論を体得し、視野を広げた上で、各自が選んだ研究テーマに沿って専門を深められることです。特に学芸員を志す人にとって、3分野を網羅的に学べることは強みとなるでしょう。物や形を自分の目で見て理解し、言語化する力は、どのような職業に就いても役立ちます。美術史を足掛かりに、自分なりの世界の見方を確立していってほしいですね。言葉以上に雄弁な「形」から各時代の人々の営みや美の理念について考察するMESSAGE FROM PROFESSOR基礎を知り、専門を磨く1・3制カリキュラム1年次の基礎教育を経て、2年次からコースへ進級する「1・3制カリキュラム」を導入。1年次では論理的思考能力・表現能力の基礎を養う演習や講義、充実した外国語学習のための基礎外国語・必修英語などを重点的に履修します。2年次以降は18のコースに分かれ、1つのコアテーマを目指して専門性を磨きます。各コースの教育体系に沿って、徹底した少人数教育による専門演習が設置されており、卒業論文につなげていきます。他に類を見ない多種多様な「ブリッジ科目」文学部と文化構想学部は、外国語科目と講義科目を「ブリッジ科目」として共有しています。両学部を合わせたスケールメリットを最大限に活かして約1,000科目を設置。人文科学、社会科学等の古典から先端領域分野まで幅広く自由に履修でき、多種多様な学びを実現します。進級後も、所属コースを越えて多彩な学問分野へアクセス可能なことから、卒業論文で取り組むテーマも多角的な視点で考察できます。児嶋 由枝Kojima Yoshie文学部 美術史コース 教授文学部School of Humanities and Social Sciences■ カリキュラムの特色学習段階春秋4年次3年次2年次1年次基礎学習コース進級・専門演習春秋春秋春秋ブリッジ科目(講義)、全学オープン科目等必修基礎演習必修科目選択科目選択基礎演習ブリッジ科目(講義)、全学オープン科目等基礎講義基礎外国語選択外国語・選択英語卒業論文専門演習部コース選択必修英語※カリキュラムは変更になる可能性があります。※カリキュラムは変更になる可能性があります。67

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