学部入学案内
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FACULTYVOICES今もなお世界中で愛読される『源氏物語』に魅せられてGaye Rowley法学部 教授 『源氏物語』と聞くと、大学受験を控えた皆さんの多くは「勉強しなければならない教材」という印象を抱くことでしょう。しかし、『源氏物語』はさまざまな言語に翻訳され、世界中の大学で「世界文学」などの授業の題材に設定されています。まさに、世界の知識人たちに広く親しまれ、教養を育てる上でも外すことのできない、日本文学の最高峰といえるでしょう。 私が『源氏物語』を初めて読んだのは、大学2年生の頃でした。キリスト教の概念で育ってきた私にとって一夫多妻制の社会は別世界の話であり、大変な衝撃を受けるとともに、1,000年も昔に形成されていた日本の思想社会に惹きつけられました。最後のページが近づくにつれて、“源氏の世界”にもっと浸っていたいと感じたほどです。文学が私たちを別世界へと誘ってくれる学問だと感じられた瞬間でもありました。 別世界でありながら私たちに何かを語り続けている『源氏物語』が、どのように読まれてきたのか、とりわけ女性たちがこの作品から何を受容するのか、というテーマで研究に取り組んできました。しかし、未だに何度読んでも飽きることはなく、それどころか読んだ時の立場や状況に応じて同じ場面でも解釈が異なることに驚かされます。これほど永い時を経てもなお、幾千もの人に読み継がれ、現代人にも愛読されている例は他にありません。ぜひ、「受験の題材」としてだけではなく「愛読すべき作品」として、じっくり読んでみてもらいたいですね。 未知の世界を知るための手段はさまざまです。文学はあくまでその一つであり、例えば外国に留学することも同じく手段の一つです。私は初めて日本を訪れた際に、自国においては当たり前とされていた「白豪主義」が、他国においては問題視されていることを知りました。早稲田には、多彩な留学制度が整っていますから、日本という国や自身の価値観を客観視する機会として積極的に活用してください。 他にも、国際コミュニティセンター(ICC)が実施する、学部や年齢、国籍を超えて交流するイベントや、国内外のさまざまな問題に対して解決の糸口を探るボランティア活動などは、早稲田ならではの先進的な取組みです。さらにいえば、豊富なコレクションと蔵書数を誇る図書館は、知的欲求を満たすのに最高の環境といえます。ここには、あなたの“将来への可能性”が無数に存在しています。多様な人や学問との出合いに満ちたこの場所で、それを探求してみませんか。文学は私たちを別世界へと誘う学問無数にある将来への可能性を探求できる大学Pro leオーストラリア生まれ。1984年オーストラリア国立大学アジア研究学部卒業、1987年日本女子大学日本文学研究科博士課程前期課程終了、1995年英国ケンブリッジ大学東洋学部博士号取得。2001年、早稲田大学法学部助教授を経て現職。専門は日本文学、特に『源氏物語』受容史および女性史。46

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